ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

11/20 Limp Bizkit / LIVE IN TOKYO 2023 at 東京ガーデンシアター

90年代後半から00年代前半にかけて隆盛した、ニューメタルというジャンルの顔とも言える存在である、Limp Bizkitの来日公演を観に行きました。

 

日本のメタルファンの間では、ニューメタルというジャンル自体に拒否感のある人が多く、中でもリンプは「嫌われ者の代表格」みたいなイメージがあります。

 

しかし、メタルやヘヴィミュージックに対して思いっきり後追いの僕としては、特段このバンドに対して嫌いになる要素などなく(メロディアスでキャッチーなものが好きなので、ツボにハマる音とは言い難いですが)、社会人になる直前の時期にWARPED TOURでライヴも観たことがあります。あれからもう6年以上も経ったのか...

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

今回は初の単独公演。週始まりの月曜日というキツいスケジュールながらも、有明の東京ガーデンシアターへ足を運びました。

 

月曜日が嫌なら、翌日の豊洲PITでの追加公演を狙うという手もあったんですけどね。豊洲PITは以前にも何度か行ったことあるし、せっかくなら初めての会場に行ってみたかったのです。

 

しかし、平日のライヴというのはとにかく時間との戦いになります。職場から会場最寄り駅まで、アクセスがあまり良くないので、定時ギリギリに会社を出たとしても、さほど時間の余裕はない。何とか仕事を切り上げて(明日の自分に押し付けて)、電車へと駆け込むことに成功。肌寒い気候だというのに汗ばんじゃったよ。

 

会場となる東京ガーデンシアターは2020年に営業開始された、かなり新しいホールであり、非常に内装が綺麗。最大収容数8000人という大規模会場ですが、離れた位置からであっても、なかなかステージが観やすく設計されているような感じ。当日券組の僕でも普通にステージが一望できる。

 

 

周りのお客さんを見回してみると、僕のようないかにも仕事上がりですってナリのスーツ姿は全然見かけない。やはりニューメタルを好むような層は「ライヴの日に仕事なんか入れられるかってんだ!」といった気合いが入るのだろうか。

 

そして眼下に広がるスタンディングアリーナを見てみると、やはり赤キャップが多いですね!今でこそ宣教者かはたまた浮浪者か、というような見た目になったフレッド・ダーストですが、やはり皆の中では未だに赤キャップ姿のイメージなんでしょうね

 

 

花冷え。

開演時間ちょうどくらいになって会場が暗転する。この日のオープニングアクトは、こないだのNEX_FESTでも観たガールズヘヴィロックバンド・花冷え。NEX_FESTでは後方から見切れるステージを眺めるような感じでしたが、今回はしっかりステージ全体を視界を邪魔されることなく観ることができる。距離は遠いが。

 

まず演奏が始まって思ったことが、とにかく音が良い。さすが新しくできたばかりの会場だけあり、音響の良さはピカイチでした。

 

海外フェスにも出るようになった存在とはいえ、この会場ではアウェイであるので、アリーナは小さなモッシュピットが中央にできるのみ。とはいえ、曲が終わるごとに歓声が上がり、後ろの方からもフィストハングがあったりと、場内の反応自体は悪くない。

 

演奏もヴォーカルも、荒々しさは残しつつ非常にタイトで締まっており、派手な衣装が映えるヘッドバンギングも頻発するので、ステージ上のパフォーマンスを観る楽しさはかなりのものがあります。次のリンプのステージセットを黒い布で隠している状態は地味の極みながら、メンバー自身の華やかさがそれをカバーしている印象。

 

今回のオファーが来た理由が「MVを見て日本に面白いバンドがいる」ということをリンプ側が知ったから、という事をMCで話していて、それで日本の若手バンドが世界屈指の有名バンドと同じステージに立てるというのだから、これはなかなか夢のある話だなあと思いましたね。まだまだバンドドリームは捨てたもんじゃない。「音楽は国境も性別も超える!」という言葉に、一層の説得力を持たせていました。

 

後半に披露された「TOUSOU」では、曲前の煽りに感化されたかのように、目に見えてサークルピットが大きくなっていて、少しずつながら確実に空気を自分たちの物に変えていったことがわかりました。そういえばNEX_FESTでもこの曲キッカケで、大人見状態だったフロアにデカいサークルが形成されていたので、ライヴのハイライトを生み出せる曲があるというのは、かなり大きな武器になりますね。

 

30分ほどの短い時間ではありましたが、場の空気を掌握せんとする勢い、アグレッシヴながら巧みなパフォーマンスと、見どころの多いアクトだったと思います。

 

 

Limp Bizkit

花冷え。のライヴ中に黒い布が被さっていたステージセット(といってもアンプの山に、DJリーサルのターンテーブルの設置台くらいですが)が顕になる。取り付けられた照明がチカチカしてはいるものの、いずれにしてもやや簡素な印象は拭えなかったです。割と前半の方で最新作『Still Sucks』のジャケットに描かれている、掃除のオバちゃん(?)を模したバルーンが膨らむ仕掛けはありましたが。

 

しばらく待っていると場内が暗転して、メンバーがステージ袖から登場してくる......のですが、やはり衝撃的なのがギタリストのウェス・ボーランドの風貌。真っ黒な衣装とマスクの印象が強い彼ですが、今回は真逆の全身真っ白仕様。アゴにはこれまた白い髭のようなものが大量にたくわえられ、遠目から見たらスターウォーズの兵士のようでした。

 

スターウォーズの兵士

 

そしてフレッド・ダーストは......白髪のアフロにグラサン、そんなナリでフラフラと現れるもんだから、およそニューメタルバンドのフロントマンとは思えない。本当に今ステージに立っているのは、Limp Bizkitなのか?と思ってしまうほどに(僕の後ろに座っているヤンチャなオジサングループも「誰!?」と笑いながら突っ込んでいた)

 

「どーも。もしもし」など日本語を交えておどけてみせた後、「Out Of Style」「Dirty Rotten Bizkit」を披露。最新作からの曲ですが、リンプらしいアッパーなラップメタルナンバーなので、フロアの反応はすこぶる良い。アリーナ前方はさっそくモッシュが発生してグシャグシャと蠢く。LOUD PARKの時も思いましたが、高い位置からモッシュピットを見下ろすのって結構楽しい。

 

先ほどの花冷え。でも音の良さに驚いたものですが、リンプのステージではさらに優れた音響の凄みが味わえました。ヘヴィで鋭いギターが終始鳴っていながらも、一切埋もれる事なくぶっといラインが走っているベース、スクラッチもドラムもしっかりと聴き取れる。特にスネアドラムの音がメッチャクチャ気持ちいい。今後観るライヴの音響、全部これになってくれねえかなと思うほどに優れたサウンドでした。

 

もちろんヴォーカルもしっかり通り、それによってよくわかったのが、フレッドのヴォーカルの巧みさですね。デビューしてからかなり年数が経っているはずなのですが、ラップの勢いは音源と比べてさして劣化しているようには思えず、小気味よく言葉を紡いでいき、ステージを跳ねるように動くパフォーマンスもかっこいい。座席に座りながらとはいえ、縦ノリのご機嫌なリズムにより、首を振りたくなる衝動にどんどん駆られていきました。

 

メンバー中最もメタルっぽいヘッドバンギングで躍動するベースのサムもカッコよかったですが、やはり楽器陣で一番目を引くのはウェス・ボーランドでしたね。演奏のタイトさももちろんですが、エフェクターを駆使してギターを唸らせ、キレのあるアクションでオーディエンスを扇動する様には、フロントマンではないながらも、確かなカリスマ性を感じさせるもの。

 

"Ladies and gentlemen!"の掛け声から始まった「Hot Dog」は、大人気作のオープニングチューンということもあり、フロアの熱が一気に上昇。サビにおけるフレッドの獰猛な叫びも加わり、どんどん興奮状態が増していく。

 

一応今回のライヴは『Still Sucks』のツアーの一環という形式のはずですが、その最新作からの楽曲は序盤でちょっとやっただけで、後は過去曲のグレイテスト・ヒッツライヴ......というか、ほとんどが『Chocolate Starfish And The Hot Dog Flavored Water』からの楽曲という、だいぶ偏ったセットリストでした。

 

まあキャリアの長いバンドだと、どうしても新曲よりも昔からの名曲を期待されるものなので、それを理解したうえでの選曲なんでしょうね。実際僕が一番聴いてるのも『Chocolate〜』なので、そこからのチョイスが多いのは嬉しい限り。WARPED TOURの感想でも全く同じこと書いてたな。

 

「Rollin' (Air Raid Vehicle)」や「Nookie」といった有名曲ももちろんアガりますが、なんといってもハイライトは「My Generation」!緑の照明が光り続け、残響が止まない中、フレッドがしばらくの間屈んだような体勢で顔を伏せる。しばし静かな時間が流れた後、唐突に"If only we could fly"のフレーズを歌い出すと、破裂したように会場中が弾ける。

 

Limp Bizkitを代表する...いや、ニューメタル/ラップメタルというジャンルを代表する超名曲で、もちろん僕も一番好きな楽曲だけにテンションも一層上昇。"My generation!"というシンガロングも大音量で鳴り響き、アリーナのモッシュピットも凄まじい勢い。スーツで椅子に座っているだけという状況がなんとも歯がゆい...!

 

いや、この曲は遠目から座ってみているだけでも、もちろん最高にカッコいいんですけどね。あの瞬間一番楽しんでいたのは、間違いなくアリーナで暴れ回っていた人たちでしょう。羨ましい限りです。

 

僕の最大の目的は、この曲を生で聴くことだったので、それが達成された後は少〜し肩の力を落として観ることに。とはいえライヴのテンション自体は落ちる事なく、ヘヴィかつリズミカルな楽曲の畳みかけで、フロアをずっと揺らし続ける。

 

後半には、フレッドが本日のオープニングアクトを務めた花冷え。のメンバーをステージ上に呼び込む。「お、これは何かコラボ的なやつがあるのか!?」と、ちょっと期待をしたのですが、特に何かをするでもなく紹介が終わった後、メンバー4人はスタスタとステージを去っていったので、「何もないのかよ」とちょっと拍子抜け。まあ改めて皆の前で感謝を伝えたかったのかもしれない。

 

最後にフレッドが「会場中の電気をつけてくれ」とスタッフに頼み、暗転していた会場がパッと明るくなる。「全員のことがよく見えるぞ!」と呼びかけて、2階席のオーディエンスに対しても手を振ってくれました。

 

花冷え。の呼び込みといい、最後の照明の点灯といい、結構フレッドのMCがフレンドリーだったのがちょっと意外でした。なんかもっと、オーディエンスに対して挑発的に煽るタイプなのかな〜と勝手に思ってたので。しきりに感謝の言葉を述べていたし、普段からこんな感じなのか、それとも年齢を重ねて多少丸くなったのか。

 

すっかり明るくなった会場で、ラストに演奏されたのは「Break Stuff」。サビ前の溜めの部分では、これまでで最大と言えるほどのサークルが出来上がり、オーディエンスはまさに狂喜乱舞。中には上裸の屈強な外国人も複数おり、ラストスパートに相応しい熱量を持って、ライヴの締めくくりを演出してくれました。

 

 

フェスで1回観たっきりのバンドだったので、単独がどの程度楽しめるかは未知数だったのですが、自分でも意外なほどにテンションが上がりましたね。さすがニューメタル全盛を支えた代表格、エネルギッシュかつ非常に安定感あるサウンドの心地良さもあって、気持ちよくノることができました。

 

充足感を覚えながら、会場の外に出て駅へ向かっていると、後ろから「いや〜20年前はああいうバンドばっかりだったんだよな〜」という声が聞こえてくる。僕が座っていた席の後ろのオッチャングループも「息子にはレッチリだけでも好きになってほしい」とか、「前座の子達は、今の若い子らに人気があるんだよね」という会話をしていたので、メインの客層はやはりニューメタル全盛期に青春を過ごした人たちなんだなと実感。

 

ヘヴィメタルのライヴは、若い人が全然いなくてオッサンばかり...という話題は嫌というほど聞くけど、モダンなニューメタルにもその兆しが来ているのか...と、時代の流れというものを少し感じてしまう瞬間でした。あんまり感じたくなかったが...

 

そんな中でも、The BONEZとかCROSSFAITHのマーチを着ている若い人とかも混じっていて、まだまだ懐古的な音楽になっている訳でもないと思いましたけどね。