ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

THE CROWN 『Royal Destroyer』

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  • 相も変わらず爆走デス&ロール!
  • ブラックメタル並みな突進力とほのかな北欧情緒
  • 問答無用でノセられるリフの潮流

 

一時期活動を停止していたり、主要メンバーが脱退していた時期もあったようですが、90年代から今なおアグレッシヴなサウンドで活動を続ける、スウェーデン出身の極悪爆走集団THE CROWNの、前作『Cobra Speed Venom』以来3年振りとなる最新作。

 

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歴史的名盤『Deathrace King』を生み出した功績はもちろんのことながら、これだけ長い活動期間を経ても、なお殺傷能力バツグンのデスラッシュを繰り出し、そこにアグレッションを邪魔しない程度のメロディアスさや、ロックンロール由来のノリの良さをブレンドした「デス&ロール」のスタイルを崩さない、この潔い姿勢も素晴らしいものがあります。

 

本作においてももちろんサウンドイメージが損なわれることはない。それどころか斧を掲げるドクロの騎士がジャケットに描かれ、アルバムタイトルは『Royal Destroyer』!さらに曲名も「Motordeath」だの「Full Metal Justice」だの、良い意味でバカっぽいタイトル!ベテランらしい落ち着きなんぞガン無視のスタンスが頼もしい限りです。

 

ハードコアパンクもかくや、というほどの爆速ショートナンバーM1「Baptized In Violence」で、期待通りの獰猛っぷりを短い中で見せつけてくれたあとは、M5「Glorious Hades」やM9「We Drift On」といったスロー曲でクールダウンさせる瞬間がありつつも(こういう曲でも切れ味鋭いリフとヨハン・リンドストランドによる極悪ヴォーカルのおかげで、必要以上にテンションが下がることはない)、基本的には爆走に次ぐ爆走。

 

前のめりなブラストビートと、北欧情緒を感じさせるメロディアスな高速リフが頻繁に顔を出し、さながらブラックメタルのような過激さを演出するも、ヨハンのリスナーの喉笛に噛みつかんとするデスヴォイスと、低音部もしっかりと強調された迫力ある音作りにより、あくまで基本はデスメタル/デスラッシュであると主張してくれる。

 

そんな超速サウンドにおいても、やはりどこかノリの良さというか、単なる暴虐な突進力ではなく(それはそれで悪くないけど)、ロック/メタルとしての普遍的なカッコよさがにじみ出ているところがデス&ロールたるところでしょうね。勢いだけにならないメタルリフとしての聴きごたえがあるというか。

 

欲を言えば前作収録の(と言っても国内盤ボートラですが)「Ride The Fire」のように、わかりやすすぎるリードギターで爆走する曲が欲しかったですが、そんな小さな不満はこの轟音の前にかき消されてしまいますね。

 

うねる高速リフとミシンのようなドラムの連打が初っ端から炸裂し、焦燥感を抱かせる冷徹な哀愁も忍ばせるM2「Let The Hammering Begin!」、そのままカッコよすぎるリフの嵐と"イ゙ヤ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!"の咆哮が膝から崩れ落ちるほど大迫力なM3「Motordeath」へと続く。M6「Full Metal Justice」の勢いMAX繰り出される速弾きソロと、サビに当たるメロウなフレーズの応酬は震えるほどカッコいいし、ホントこのバンドの疾走曲はハズレないな。

 

相変わらずの極悪疾走っぷりに嬉しくなりつつ、ギターリフの練り込みや、北欧のアイデンティティーを活かしたメロディーにも唸らされました。決して一本調子に走ってばっかの内容にはならない曲作りの巧みさも感じ取れる強力盤ですね。

 

個人的に本作は

"超凶悪かつ微メロディアス、本分のデス&ロールスタイルに迷いなし。疾走曲の殺傷能力は天井知らず"

という感じです。

 


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Orden Ogan 『Final Days』

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  • サイバネティック・ヘヴィメタル(でも曲自体は割と普通)
  • 手堅い安定感が嬉しくもちょっと物足りない
  • メロパワ的疾走感はほとんどナシ

 

1996年結成という何気に長めのキャリアを誇り、Evoken Fest 2018で準トリを務めた(ベーシストの怪我によりベースレスという不完全な状態ではありましたが)、ドイツ出身のパワーメタルバンドの最新作。

 

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4年前に発表された前作『Gunmen』は、ジャケットの雰囲気や、ライヴでのステージセットなどから西部劇風の世界観を感じ取れたわけですが、本作においてバンドイメージを一新。アンドロイドに改造されたIRON MAIDENのエディのようなジャケットに、SFチックな出で立ちになったアー写と、だいぶ大きめな方向性の変化が見て取れます。前作が『カスカベボーイズ』なら、さしずめ本作は『仮面ライダーゼロワン』...?ほとんど見たこと無いけど。

 

実際に楽曲を聴いてみても、ところどころにSF的な電子音が使用されていて、どことなくGLORYHAMMERっぽいなと思う瞬間がありました。

 

しかし電子音といっても、トランスやダンスミュージックのようなものではなく、あくまでアルバムのコンセプトを表現するためのSEとして、一部の曲のみで使用しているというだけで、決して多用されているわけではありません。「言われてみればなんとなく」の域は出ず、楽曲の骨組み自体は非常にオーソドックスな正統派パワーメタル。

 

骨太なギターリフに、力強くもマイルドな味わいも感じさせるヴォーカルが織りなすメタルサウンドは安定感抜群で、正統派好きのリスナーの欲求にしっかりと応えてくれるもの。

 

ただその安定感が全編に渡ってありすぎるのはちょっと不満な点かも。ほぼミドル〜アップテンポに終始し、いわゆるツービートの疾走感はほとんど無く、ギターソロもグッと耳を引くような瞬間は多くない(まったく無いとは言いませんが)  安心して聴けるのは嬉しいのですが、ひと際エキサイトさせるキラーも欲しかった。

 

後半になってアグレッシヴな疾走を見せるM2「In The Dawn Of The AI」、テンポ良く繰り出されるフックあるサビメロが魅力のM5「Interstellar」、クワイアを盛り込み、バスドラ連打と共に劇的な盛り上がりを演出するM9「Hollow」あたりが、抜きん出ているというほどではないけど、特に光っている楽曲だと思います。

 

ちょっと手堅すぎるというか、強烈なキラーチューンを持ってきてほしい気分になってしまう作風で、やや地味な印象は拭えないですね。ただ、充分に良質な楽曲で構成されていて、これといった隙なしのクオリティーを提示してくれているアルバムであることは間違いなく、その点は心強いです。

 

 

個人的に本作は

"ほんのりサイバー感を意識した正統的なヘヴィメタル。良くも悪くも安定・無難"

という感じです。

 


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連休中に模様替え

GW5連休もあったにも関わらず、すっかりブログ更新が滞ってしまっていました。

 

理由としては、ここ最近ちょっとメタル・パンクの気分ではなく、THE PINBALLSとかa flood of circleみたいな日本のロックンロールばっかり聴いていたこと。ちょっとヘヴィな音からは遠ざかっていて、感想を書くネタが無かったのです。

 

そしてもう一つ、これがメインの理由なのですが、この連休を利用して部屋の片づけ兼模様替えをしており、それで思いのほか時間を喰ってしまっていました。

 

いかんせんズボラなもんで、自室の片付けをかなり長期間サボっていたのです。死ぬほどジャマなデカいソファーベッド(壊れてる)が鎮座していて、大きいラックも完全に持て余している状態。このままじゃ良くないとは思いつつも、腰が重すぎて行動に移せないままでした。

 

しかしこのGWは5連休という長期間。このご時世もありどこかへ遠出するという予定もないので、ここが最大のチャンス(結果論ですが、この連休は雨が多かったので外に出るのが億劫になりやすかったのも逆に良かった)

 

部屋に転がるいらん物はすべて処分、着なくなった洋服やら古い書類やらをまとめてゴミ出し。コンポやレコードプレイヤーを載せた台を大移動。

 

ホコリっぽさにも負けずに、ところどころ『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と溜めてたテレビの録画で休憩をはさみつつ、ほぼ家具の移動は完了!

 

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この棚以外のところはまだ小物がゴロゴロしてたり、掃除機かけたりしてないので、とりあえずメインのラックだけ写真に映しています。察せ。

 

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左端にはテレビとHDDレコーダー。PS4とSwitchをつないでいますが、最近はSwitchオンリー。PS4がただのインテリアになってしまっています。ゴーストオブツシマが完全に停止してしまっているんだけどなぁ~...

 

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テレビ裏には丸い間接照明。この写真からは伝わりづらいですが暖色系の明かり。夜にはこの明かりだけつけて音楽流したい。裏の壁紙がかなり汚れているな...

 

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その右横にレコードプレイヤーをドンと置いてます。最近針を落としてなかったな。たまにアナログの音聴きたくなるからなんか聴こう。映画『ロード・オブ・カオス』のユーロニモスが経営していたレコードショップの場面で、ひと際目立っていたのに影響されまして、最近METALLICAの1stをLPで買いました。それをかけるのが最初になるな。

 

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メインのCDコンポ。ここにセッティングして初めて聴いたのはBRAHMANの『A MAN OF THE WORLD』。デスクの椅子にダイレクトに音が伝わる位置に陣取っています。

 

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ギターアンプレスポール。買ったはいいものの練習のモチベーションになかなか火がつかず、ほぼほぼ置物と化してしまっています。とりあえず弾かないとな~とは思うけど、眺めているだけで割と楽しめてしまうんですよね楽器って。下段にはヘドバンを始め音楽誌を置いてます。

 

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壁にはVIRGOの梵唄ジャケットと、ZOZOで買ったライダースをかけてます。これから温かくなってくると着る機会はなくなってきますが。壁にレコードのジャケットを飾るのもやってみたい。

 

以前と比べてかなりスッキリとしたので、これからの家での時間の過ごし方がだいぶ気持ちよくなりそうです。インドア趣味が重宝される昨今、快適に過ごす準備はおおかた整ったので、これから積んでいたCDをガンガン消化していこうかな。

Witherfall 『Curse Of Autumn』

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  • 暗い!でも意外なほどサウンドのパワーはある
  • キャッチーさの強い曲とバラードが魅力
  • 全体的にとっつきにくくプログレ色強め

 

アメリカ出身プログレッシヴ・パワーメタルバンドの、今年発表された最新フルアルバム。

 

2013年結成という、そこまで長いキャリアを持たないバンドですが、同じアメリカのバンドであるKAMELOTのサポートアクトとして来日公演も実施しており、僕も名前くらいなら聞き覚えのある存在でした。

 

過去作は聴いてきていないのですが、タワーレコードの店頭に並んでいるのを見て、思わず手に取ってしまいました。帯には"ダーク・メロディック・メタル"と形容され、さらにやたらめったら哀愁を強調した宣伝文句が書いてあったもんですから......

 

『Curse Of Autumn』というアルバム・タイトルといい、薄暗く鬱屈としたジャケットといい、とてもうららかな陽気に満ちた春先にリリースされたとは思えん!(笑) さぞかし物哀しい叙情美旋律を垂れ流しているアルバムなのだろうと期待。

 

アルバム全体としては、確かに最初にイメージしたとおりの哀愁に満ちたサウンド

ド暗い

 

鬱屈としたメロディーラインに、どこか不気味なバックの高音コーラス。メインストリームの音楽にある快活さや、聴いていてワクワクするような高揚感は全くと言っていいほど無い。パラメーターのほとんどを喜怒哀楽の「哀」に振っている。

 

ただ元ICED EARTHのメンバーが在籍しているというのもあるのか(サウンドプロデューサーとして、先日バカなことやらかしてパクられたICED EARTHのジョン・シェイファーの名前が普通にブックレットに記載してある)、意外といっていいほどバンドサウンドがパワフルで驚きました。もっと内に内にとこもっていくような音を想像していたので。

 

イントロのM1「Deliver Us Into The Arms Of Eternal Silence」は、出だしこそアコギによる調べと、地下深くにズンズン埋もれていくような低音のサウンドでかな〜りド暗いものの、そこからノンストップで続くM2「The Last Scar」に差し掛かると、キレのあるリフで一気に疾走。気合いの入った速弾きのギターソロも飛び出し、思いの外エネルギッシュに突き進む。暗いけど。

 

その後のM3「As I Lie Awake」は、本作中でも特にわかりやすく、かつ哀愁のあるエモーショナルなメロディーが武器となるアップテンポ曲。決してポップにはならないのですが、かなりキャッチーでとっつきやすい。後半にはこれまた哀愁を演出するアコギと泣きのギターソロが待ち受ける。これはイイね。

 

ただこのM3以上にわかりやすいメロディーはこのあとは出てこず、ダーク・メロディックメタルの名に相応しい哀愁のオンパレードではありますが、ちょっととっつきづらい楽曲が続いてしまうな...。アコギによるメランコリックな旋律や、焦燥感を演出するヴォーカルなど良いんですが、やっぱりもうちょっとくらい明朗な方が僕の琴線には合うのかも。要所要所でつかみどころの見つけにくいプログレッシヴな展開が出てくるのも、とっつきづらさに拍車をかけているし。

 

ラストで哀し~い余韻を引きずるコーラスが印象的なM4「Another Face」、オモクソにプログレッシヴなインストから、勢いよく表打ちで疾走し、本作中特にパワーの漲っているリフとグロウルが聴ける(でもやっぱりプログレ全開の展開もあり)M8「The Other Side Of Fear」、彼らの哀愁のメロディーのセンスがバッチリと発揮された、儚いバラードのM9「The River」といった曲など、少なからず惹かれる瞬間はあるんですけどね。バラードが特に良い感じ!

 

クライマックスに鎮座するM10「...And They All Blew Away」は10分超えの大作。バンドとしては勝負をかけるハイライトとなる一曲としたかったのかもしれませんが、プログレメタルが苦手な僕が、彼らの大作を聴くのはだいぶダレを覚えてしまうのが本音。

 

あとM11~M12の2連チャンで「Long Time」という同曲のバージョン違いがあるのですが、途中までほぼ同じようなアレンジの曲を、2曲続けて聴くというアルバム構成もどうかと...

 

ネガティヴに感じる瞬間もありましたが、これは僕がメタルにキャッチーさ、ストレートさ、わかりやすさを求めているが故。とにかく陰鬱に彩られた哀メロで泣きたいという人、プログレッシヴな展開に没入したい人などには響きやすいかもしれません。一部の歌メロが強化された曲や、バラードの出来はかなり良かった。

 

 

個人的に本作は

"ダークなメランコリックメロディーと、プログレッシヴな展開を多用したパワーメタル。わかりやすさや即効性はちょっと弱め..."

という感じです。

 


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4/18 OAU / TOUR 2021 -Re:New Acoustic Life-FINAL at 日比谷野外大音楽堂

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2021年に入って初のライヴです!(正確に言えば3月27日にCRAFTROCK BREWPUB & LIVEでやった『Mt. Burritos』で、弾き語りを少し観たのですが、あれは正規のライヴとは言い難いので)

 

BRAHMANのメンバーが中心となって結成されたアコースティックバンド・OAUの、昨年発売されたベストアルバム『Re:New Acoustic Life』のレコ発ツアー。この日がツアーファイナルです。

 

会場となる日比谷野外音楽堂は、数々のバンドがライヴを行った有名な会場ですが、なにげに僕は今回が初。野外でOAUのサウンドに聴き浸れるとは、なんて贅沢なんでしょう...

 

この日の前日は土砂降りっていうくらいに雨が降っており、天気予報を見ても「晴れのち雨(降水確率60%)」というなんとも不安な結果が。雨が降ったら降ったでいいロケーションになるのかもしれませんが、やはり野外ライヴというのは晴れやかな日差しのもと観たいものです。

 

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しかし結局その心配は杞憂に終わり、当日はドッピーカン!OAUのパーカーを着ていたのですが、その格好じゃ歩いているうちに汗ばんでしまうくらいの陽気でした。風は少しひんやり気味なので、クソ暑い訳ではないのも良し!野外のライヴにこれほど相応しい気候はないのでは。

 

開演は17時と夕方なので、お昼は御茶ノ水ディスクユニオンを物色し、そのまま徒歩で日比谷まで歩く。皇居周辺のだだっ広い道路を気持ちよく歩きつつ、オモコロチャンネルのミスドダービーに触発されて、ミスドで開場まで時間を潰す。

 

そして開場時間ちょうどくらいに日比谷野外大音楽堂へ到着。客層はいかにも20年くらい前からBRAHMAN聴いてるぜ!ってナリの気合いの入ったオッサンから、ライヴハウスとは縁遠そうなオシャレな女性客、小さい子供を連れた家族もそこそこ見かけました。当然っちゃ当然ですが、いわゆるライヴキッズみたいな人はほぼ皆無だったと思います。

 

日比谷野外大音楽堂、思っていたよりはそれほど大きくはなかったですね。早い段階でチケット取ったのにC列なのか…と思ったものの、それでも人が豆粒のようにしか見えないという事態にはならない距離。

 

BRAHMANではライヴの開幕時間が押しがちな印象がありましたが、今回は数分過ぎたあたりでメンバーが下手から登場。ツアーファイナルだというのに、SEも何もなくスルッと入ってくるあたりマイペースさがよくわかります(笑)

 

大きな拍手を巻き起こしながら、軽やかに6人の演奏がスタート。TOSHI-LOWさんのギターの音がやや埋もれて聴こえる感じでしたが、リズム隊3人の低音が心地よく、全体的な音響は悪くない。TOSHI-LOWさんとMartinさんはしきりに体を揺らしながら、他の4人は比較的演奏に徹しながら、まとまりのあるグルーヴを生み出す。

 

「別に黙って大人しく観てろって訳じゃない。踊りたかったら自由に踊って。次の曲はみんなが"歌って"くれると思います」と呼びかけ、「こころの花」をプレイ。イントロのパーカッションから切なくあったかいアコギが切り込む瞬間の心地よさ、歌メロの美しさが身に染み渡る。

 

「Martinさん、KAKUEIさん、ありがとう。あなた達がいない4人じゃ100%雨降ってたから。フジロック台風来たからね」と、MCでは軽い調子で笑いをとる。開放的な会場の雰囲気と相まって、かなりリラックスした空間になっていました。とてもあの暗い地下のライヴハウスで、張りつめた緊張感を演出してきたバンドと同じメンバーとは思えない。

 

以前僕が観たOAUのライヴは渋公とビルボードライヴの2回で、前者はコンサートホール、後者はライヴレストランと、OAUのサウンドに充分に合ったムーディーな環境で、それはそれでとても良かったのですが、この日は野外ということもあり、以前とはまた楽曲から受ける印象が全く違う。

 

通常のコンサート会場である以前のライヴと比べて、辺りに空間を遮る壁が無いため解放感はもちろん段違いだし、時折風が吹き抜け、視界には真緑に染まった木々(どうしても背の高いビルが見えてしまうけどそれはまあ仕方ない)、そして空は雲のほとんどない晴天で、頭上にうっすら三日月が見える。この空間に彼らの素朴で優しい音がブワーッと広がっていく。この音と空間の理想的なマリアージュは野外だからこそ。屋内の会場であればこの音を全身に浴び、包まれる感覚は味わえなかったと思います。ニューアコとかはこんな感じなのかな。

 

こんな環境で小気味良いギターの応酬が楽しめる「Follow The Dream」、エモーショナルな歌メロがサビ終わりを彩る「all the way」に、牧歌的でのどかなムードを描き、一層快い空間を作る「朝焼けの歌」をゆったり座りながら聴けるとは、なんという贅沢な環境なんだろうか。黙っていても自然と身体が揺れ出してしまい、ずっとこの空間に身を預けていたくなる。

 

特にTOSHI-LOWさんの繊細な歌声の魅力が際立つ「夢の跡」は素晴らしかった。特に好きな曲だからというのももちろんありますが、少し薄暗くなってきたこの時間帯に、この感傷的な歌声と、ゆったりと流れるヴァイオリンが本当に美しく聴こえました。

 

「次の曲はある映画の主題歌になった曲です。この曲をこんな霞が関のド真ん中で歌うとよく伝わるんじゃないかと」とチクリとしたMCのあとに「俺達だけじゃ伝えきれないと思うから」と、下手の方から細美武士さんが登壇。その瞬間歓声が上がり、僕のすぐ前の女性客なんかは「キャーッ!」という黄色い声まで挙げるほど。細美人気恐るべし...!

 

もちろんそこでプレイされるのは映画『新聞記者』(現代社会の闇に深く切り込んだ反権力的評価がされている作品らしく、邦画はほとんど観ない僕でも結構興味あります)の主題歌である「Where have you gone」。細美さんのハリのある高音コーラスが、この空間を貫くように木霊しました。

 

野音で今度the LOW-ATUSやろうよ。好き好きロンちゃんの前座で」と少しだけMCに参加したあと細美さんは退場。その後のMCで「次にやる曲は普段は最後の方にやる曲だけど、ホントは今くらいの時間にやってみたかった。少し空が紫色になった夜になる手前の、ちょうど帰る時間。この曲聴いたからって帰らないでね」と語りだし、ここ最近のOAUの活動が活発化する大きな要因になったと思われる「帰り道」が演奏される。

 

この曲のどこか感傷的になれる郷愁が本当に好きなんですが、たしかにこの夕方あたりの時間に聴くと、それが一層色濃く感じられる気がしますね。

 

「帰り道」が終わる頃にはあたりもだいぶ暗くなり、ステージバックの証明がつく。この日中帯から夜に変わるくらいの時間を味わえるのも、野外ステージの醍醐味だよな...と思いつつ観ていると、次に披露されたのは新曲。

 

「今会社が決済の時期なんだけど、当然ながら大赤字。だけど今俺は本当に幸せです。強がりで言ってるんじゃないよ。今この状況で俺たちはステージに立つことを決意して、あなた達もここへ来ると決断して今ここにいる。そんな時間を噛みしめることができて本当に幸せです」と、まっすぐオーディエンスに語り掛けたTOSHI-LOWさんがギターを下ろして歌い出す。

 

世界は変わる」と名付けられた曲は、「BRAHMANとして発表される権威に中指を立てるパンクな曲も、OAUを通せば愛の歌に変わる」という言葉通り、全編日本語詞、かつOAUらしい実に温かなメロディーに彩られた楽曲。ハンドマイクで自由に歌うTOSHI-LOWさんと、アンサンブルを奏でるメンバーの姿がステージライトに照らされて、どことなく幻想的な輝いて見えました。

 

そして圧巻だったのはラスト。インストパートを挟んでからの「Again」「Midnight Sun」「Making Time」のアップテンポ曲の3連打でした。この曲の高揚感に釣られたオーディエンスが一斉に立ち上がり、思い思いに手を上げ体を揺らす。ダンサーが登場し、バックのOAUのオブジェが様々な色に発光し、すっかり日が暮れた中、輝きを増すばかりのステージから目が離せなくなる。

 

この「煌めくステージを眼前にした、あたり一面に広がるオーディエンス」という光景を、優雅に跳ね回るアコースティックサウンドに包まれながら見渡したときの多幸感は筆舌に尽くしがたかったです。ライヴが始まる前は「結構後ろのほうか...。A列の人は目の前がステージで羨ましいな...」なんて思ったりもしたのですが、この時点でそれは間違いだったと悟りました。この光景は、全体を見渡せる後ろの方でしか観られなかった訳ですからね(もちろん前の方は前の方ですごく良かったんだろうけど)

 

もうこれだけで充分以上満足、もう思い残すことは無い、とすら感じられる瞬間でしたが、ここでは終わらずアンコール。先程の「Making Time」のクライマックス感が最高だったのですが、それでも蛇足にはならずにしっかりと空気を切り替えて、井上陽水さんのカバー「最後のニュース」を披露。

 

語りかけるような出だしから振り絞るヴォーカルにいたる展開に固唾を飲んで見守り、「Change」のどこまでも伸びていくコーラスで余韻を残しながらの幕引きとなりました。

 

彼らの楽曲が元々持つ魅力に加え、OAU特有のオーガニックなサウンドと野外という環境の親和性の高さ、さらには徐々に日が暮れていく感傷的な時間帯などが重なって、本当に心の奥底まで染み渡るような2時間。音楽のライヴとはここまで感情が動かされるものだと、改めて気づかされたような気がします。

 

規制やら不要不急やらが叫ばれている今のご時世において、やっぱり僕の人生に音楽は、ライヴは必要なんだと確信しましたね。これほどまでに他の事を忘れて、身も心も洗われる瞬間は生のライヴ以外にありえません。掛け値なしに素晴らしい時間を過ごせました。

 

あと新曲がメッチャ良かったので、早いとこ音源化よろしくです。

 

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STRUNG OUT 『Transmission.Alpha.Delta』

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  • STRUNG OUTらしさは微塵もブレない安定っぷり
  • 頭3曲のカッコよさに完全ノックアウト
  • 概してシリアス、たま〜にポップ(両方良い)

 

ここ最近またパンク・メタルの熱が上がってきて、彼らの音源をよく聴いているので、本作の感想を書いてみます。

 

メタリックな要素を取り入れたパンクをプレイするバンドとして、SUM41と並んで高クオリティーの楽曲を量産する、カリフォルニア州出身のメロディックハードコアバンド・STRUNG OUT。本作は2015年に発表された8枚目のフルアルバム。

 

これまでメタリックな音色感を取り入れた高速メロディックという軸を揺るがすことなく、良く言えば安定、悪く言えば代わり映えのしないスタンスを貫いてきた彼ら。本作ももちろん彼ららしさ満載のパンクロックが取り揃っていて、期待を決して裏切ることがない。

 

本作を語る上で絶対に欠かせないのが、なんと行っても頭3曲の超強力スピードナンバーの嵐!M1「Rats In The Walls」〜M2「Rebellion Of The Snakes」〜M3「The Animal And The Machine」というこの流れ。これがとにかく最高なんですよ。

 

高速ビートに鋭いリードギターが乗り、非常にキャッチー&クールなメロディーで駆け抜け、ラスサビ前のギターソロでテンションが爆発するM1がド頭に来る。これだけでもうキマったも同然。

 

より重厚なリフで疾走し、気合いの入ったシンガロングが盛り上がりまくるM2に、最大のスケールで迎え撃つサビが最高にカッコいいM3と、彼らに期待される「カッコいいメロコア」をド真ん中ストレートで投げ込んできているかのような曲の連打。

 

この3曲の存在感が強すぎるがために、どうしてもそれ以降の楽曲のパンチが弱く感じてしまうという側面はあるかもしれません。疾走感もやや落ちる瞬間が多いし。実際他の曲で、この3曲と同程度の興奮を味わえる曲は無いかなというのが本音です。

 

しかしもちろんその他の曲が捨て曲になるかと言われれば、それはNOです。ポップパンクのような底抜けに陽気で明るい雰囲気は極力廃し、憂いを帯びたシリアスなムードを主軸に、ジェイソン・クルーズによる男臭い硬派なヴォーカルと、メタリックなツインギターのリフでガシガシ進み行く、良質なメロディックナンバー目白押し。

 

基本はアップテンポで進んでいくのですが、時折見せる疾走感に、十八番であるハードなギターソロが彼ららしい魅力をガッツリと主張。シリアスさと同時にハイスピードのギターソロとシンガロングで熱さを演出するM5「Black Maps」、サビの"マグノーリーアーーッ!!"の情熱的な叫びに、キレのあるギターフレーズがいちいちカッコいい疾走ナンバーM9「Magnolia」はハイライトになり得る楽曲。

 

やや明るめの楽曲として、M8「Nowheresville」とM11「No Apologies」があります。こういった曲調でも、決して明るくなりず、魅力的なものに仕上げられるバンドのセンスが活きています。特に後者は青臭くも切ないギターとヴォーカルが素晴らしく、ポップさと哀愁の同居具合がメチャクチャに気持ちいい。

 

STRUNG OUTらしくハードでメタリック、さらに哀愁のメロディーにパンクライクなシンガロングもバッチリと、彼らに求められるものが非常に高いクオリティーで揃った良作。メロコアというものを青春パンクのような脳天気な明るさのイメージで敬遠している人こそ聴くべき、硬派一徹のメタリックメロコアです。とりあえず頭3曲だけでも試聴してみてください。

 

 

個人的に本作は

"メタリックサウンドとシリアスなメロディーラインで突き進む、ストレートな硬質メロコア。強烈なキラーチューンの存在感がハンパない"

という感じです。

 


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SIGNIFICANT POINT 『Into The Storm』

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  • この上なく熱くガムシャラな正統派
  • ツインギターによる超強力なメロディー
  • 武骨な漢メタルの美学がここにある

 

以前このブログのコメント欄で教えていただいた(情報提供ありがとうございますm(__)m)、日本のヘヴィメタルバンドのフルアルバム。

 

Spotifyで軽く聴いただけで、僕が正統派メタルやパワーメタルに求める、熱さとキャッチーさが高次元に融合しているバンドだということがわかり、彦一ばりに要チェックやと思ったわけです。

 

しかし国内バンドとはいえ、マイナーなバンドのCDの流通は充分ではないのでしょう。新譜購入の際に利用するタワーレコードには、そもそも情報すらない。頼みの綱であるディスクユニオン御茶ノ水、新宿のヘヴィメタル館にも、発売日をとっくに過ぎた段階で一向に入荷する気配なし。

 

ユニオンのオンラインショップにも「ご注文できません」の文字が堂々と提示され、取り扱いのありそうなショップの通販ページを見ても容赦なくSOLD OUT。

 

「NWOTHM Full Albums」というYouTubeチャンネルにて、フル音源を聴くことはできるものの、このブログはカテゴリで「CD感想」と明記している以上、ちゃんとCDやレコードという、フィジカルで持っている音源を取り扱うというマイルールを課している。せっかくブログがキッカケで知れたバンドなのだから、このブログで取り扱いたいし、CDとして手元に残しておきたい。

 

そうして僕が講じた手段は、Bandcamp経由でCDを購入すること。このバンドはDying Victims Productionsという、聞いたこともないドイツのマイナーレーベルからCDをリリースしてるようで、そのBandcampから本作のCDを購入することができる。

 

Amazonのようなネットショッピングサイトを使わず、直接海外からCD取り寄せというのは、純然たるジャパニーズの僕にはいかんせんハードルが高いもの。しかし重い腰を上げ、Paypalのアカウントもこのために作成し、いざ購入!送料だけで900円かかるのは痛いですが、それ含めてもCD1枚分の値段としては充分許容できる範囲なのが大変ありがたかったです。

 

注文してすぐにメールに「オーダーありがとう。住所英語で送ってくれる?」とメールの返信があり、英語変換サイトを使用した住所を送ると、「ありがとう!すぐ送るね!」と。

 

以前僕がよく見ていたメタルレビューサイト(現在は消滅)で「BandcampでCDを注文してもなかなか届かず、催促メールでつっついてようやく届いた」みたいなエピソードを見たことがあるので、同じようなことが起きたら面倒だな...とも思っていましたが、幸いなことに予想よりはるかに早く家に到着。

 

そして聴いてみて「わざわざ買った甲斐があった!」と思いましたね。こりゃあ暑苦しくて、疾走感も抜群で、文句なしにカッコいいジャパニーズメタル。

 

国内メタルシーンの第一線で活躍しているバンドと比べると、さすがに演奏や音質に関してはB級っぽさが色濃いのは確か。しかしそのちょっと垢抜けていないサウンドの印象が、熱気ムンムン、不器用で一直線で、ガムシャラな勢いMAXのパワーメタルによく合っており、極上の快感へと変わっていく。

 

音楽性が似ている訳ではありませんが、言うなれば「ANTHEMの熱いメタルサウンドを良くも悪くも荒々しく、不器用なものにし、疾走感を大幅増量した」とも呼べそうな音。速く、やかましく、むさ苦しいまでに武骨で男らしい、そしてカッコいい。そんな音。

 

疾走感があるといっても、ギターリフはスラッシュメタル的なザクザク感は無く、ゴツゴツと乾いた音色感のベースも相まって、やはりスタイルとしては80年代型の正統派メタルです。

 

特筆すべきはツインギターのプレイの素晴らしさですね。いわゆる「クサい」とは趣が違う、キャッチーなメロディーをかき鳴らすリードの数々。このメロディーのクールさが何よりも耳を引くポイント。疾走するリズムに合わせて、速弾きソロをうまく織り交ぜながら、メロディアスなツインリードでグイグイ引っ張っていく展開が大きな聴きどころとなっています。

 

そのギターと並んで、メタルサウンドのキモであるヴォーカルは、終始上ずり気味というか、もう少しで裏返ってしまうんじゃ?と思わせるハイトーン型。個人的にはひたむきな熱さを表現する要素として悪くないと思いますが、これに苦手意識を持っちゃう人も多いかも。

 

なお、このGEORGE ITOHなるヴォーカリスト、裏ジャケのメンバーショットではいかにもフロントマンって感じで映ってますが、ブックレットには「Guest Vocals」と記載されており、スペシャルサンクス欄にも名前があるので、正式なメンバーではないようです。どうやらRisingfallというバンドでヴォーカルを担当している人らしい。

 

まあとりあえず、ムサいまでの熱量を持った漢メタルを聴きたい人は、かなりオススメですよこのバンド。80年代型のスタイルを踏襲しつつも、アグレッシヴ極まりない直情的な演奏で、古色を帯びた音にはなっていないのが頼もしいです。

 

M1「Attacker」のような激烈疾走曲はもちろんのこと、M3「You've Got The Power」、M6「Run For Your Life」といったJudas PriestやIRON MAIDENからの影響を感じさせる王道HR/HMチューン、唯一の日本語詞であり、ひと際ジャパメタらしさを強く打ち出したM7「Into The Storm」まで、どこを切っても漢のド硬派メタルが目白押し。

 

中でも強烈なのがM8「Deathrider」。イントロのキレのあるリフから早速カッコいいのですが、これは序の口。どこへ行ってもキャッチーさを失わないヴォーカルメロディーで爆走し、中盤の跳ね回るようなリズミカルなパートで緩急をつけた後、凄まじい勢いで劇的なギターソロを投下!そしてラストの大サビへと繋がる、本作最高峰のキラーチューン!

 

こいつは国産メタルのかなりの掘り出し物でしたね。これだけ強い楽曲を生み出せるバンドなだけに、このCDの流通の悪さは解せん!一人でも多くの漢メタラーに届くべき音なのに。気になった人は今すぐYouTube、もしくはサブスクで聴いてみよう!フィジカルで欲しい人はBandcampもあるよ!2021年イチオシの1枚になりそうな予感。

 

 

個人的に本作は

"圧倒的熱量と疾走感、キャッチーなギターを武器に、武骨に暴れまわる極上正統派ジャパメタ"

という感じです。

 


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