ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

IRON MAIDEN 『The Number Of The Beast』

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  • IRON MAIDENサウンド完成型!
  • ストレートな曲で構成された絶妙な聴きやすさ
  • 幻想的なエピック大作に陶酔できる圧巻のラスト

 

一つ前の記事にて、当ブログが6周年であることを書きました。

 

そしてヘヴィメタルファンにとって「6」という数字は獣の数字、そう、『The Number Of The Beast』を想起させるものなのです。そうでしょ?そうだよね?

 

イギリス出身のヘヴィメタルバンド・IRON MAIDENが、その後世界トップクラスのメタルフロントマンとなる逸材、ブルース・ディッキンソンをヴォーカルに迎えて製作した3rdフルアルバム。「ヘヴィメタルの名盤は?」という問いを投げ掛ければ、必ずや名前が上がるであろう歴史的作品です。

 

本作がリリースされたのはWikipedia情報で1982年3月29日とのことで、ちょうどリリースされて40年の年月が経っていることになります。当時からリアルタイムでメタル漬けだったっていう人は、もう「高齢者」に足を踏み入れている年齢なのでは...

 

何より特筆するべきことは、40年前の時点でIRON MAIDENというバンドの個性、強み、魅力といったものが、完成型にまで到達している点(僕が持っているのはリマスター盤なので、音質がクリアになっていることからよりそういう感想を抱きがちなのかもしれない)

 

流れ出るそのサウンドをほんの少し聴いただけで「あ、メイデンの音だ!」とわかるこの特別感。決して派手さやヘヴィさはないけれど、軽妙に、かつ仰々しく、目立ちまくるベースラインがリードしながら駆け抜けて、やや癖の強いブルースの歌いまわしが印象的なメロディーを紡いでいく。このIRON MAIDEN節のHR/HM

 

アルバム全体通して、やや曲調が似通いがちな印象はあるものの、躍動感ある演奏とドラマチックな旋律でダレることなく、50分以内に収まっていることもあって、基本的にテンション高めの時間が続くのに聴き疲れも誘発しません。この辺のバランス感覚も素晴らしいですね(現在の彼らももうちょっとこれを意識してほしいな〜...)

 

まずは景気づけと言わんばかりにM1「Invaders」の問答無用な疾走でかっ飛ばし、続くM2「Children Of The Damned」の神秘的なイントロでズブズブ世界観へと浸らせたあと、徐々に徐々にスピードを増して煽ってくる後半の展開、ポップとも言えるくらいに開けたスケールを打ち出すM3「The Prisoner」というオープニングから、もう聴かせる聴かせる。この時点で作品の魔力に取り憑かれたも同然。高まりに高まったテンションを、雄大なサビのメロディーでうまく浄化させてくれるM4「22 Acacia Avenue」の存在も良いアクセント。

 

タイトルトラックのM5「The Number Of The Beast」と、シングルとなったM6「Run To The Hills」が連続する箇所なんかは、間違いなく本作のハイライトとなる場面ですが、個人的に結構好きなのが、その次にくるM7「Gangland」。メイデンの名曲という話題で出てくることはほぼ無いように思うのですが、この曲におけるサビの絶妙な哀愁加減がかなり魅力的なんですよねぇ。中盤からの滑らかに導入されるギターソロも好き。

 

その後のM8「Total Eclipse」はちょっと地味な印象が強いですが(笑)、まあその前が名曲続きだったから、これはさすがにしょうがないか。軽やかなポップさで聴きやすく、決して悪くはないのですが、いかんせんインパクトという点では前述の名曲群にはおよばない感じ。

 

そしてラストを飾るM9「Hallowed Be Thy Name」。「Fear Of The Dark」と並ぶメイデン流大作エピックメタル。中盤の幻想的な情景が浮かぶようなツインリードギターに、鬼気迫るブルースのヴォーカル表現、劇的極まるギターソロ経てから、どこまでも続いてくかのように感じられるギターの旋律。基本的に僕は「熱く盛り上がれるメタル」が好きなんですが、この曲の意識を侵食していくような、陶酔できる魅力もまた素晴らしい。最後の最後でこんな美しい大作ですよ。ズルいよ。

 

40年も前に、しかもフロントマンの交代という人事を終えたばっかりのタイミングで、ここまで完成しつくされたアルバムを生み出せるとは、いかに80年代の彼らが凄いバンドであったのかが伺い知れますね...。ポール・ディアノ在籍時のパンクっぽい荒さのあるサウンドも悪かないんですけど、やはりメイデンといえばこれ。

 

 

個人的に本作は

"劇的極まる演奏・メロディー・ヴォーカルが揃え、メイデンサウンドを完成させた歴史的名盤"

という感じです。

 


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6周年

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2016年4月1日よりFC2ブログからスタートした当ブログ、本日で6周年を迎えました。

 

6年か......

小学校に入学したピッカピカの1年生が、学校で一番のお兄さんお姉さんになる年月。あっという間だったような、結構長かったような。

 

社会人になってからはかなり時間の流れが速くなったような感覚なので(ついこないだまでテレビでももクロが「スズキの初売りへ!」とか言ってたと思っていたのに、もう2022年の1/4が終わってしまっている!)、やっぱりあっという間の印象の方が強いかな。はてなブログになってまださほど経っていないような気がしますけど、それだってもう丸2年以上前からですからね。

 

CD感想を重ねてもう400枚以上にまでなりましたが、まだまだブログへの熱が完全に冷めるまでは、好き勝手にひとりごとという名の感想をバリバリ書いていこうかと思っています。

 

仕事でちょっとペースが落ちそうですが、今まで見てきていただいた方々、よろしければ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

......しかし僕も今年で28か。まさか自分がアラサーと呼ばれる年代になるなんて、学生時代にはまったくなかった実感だな~。気持ちだけはまだまだ若くいたいのですが。

HIBRIA 『Me7amorphosis』

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  • 大幅なメンバーチェンジで生まれ変わった新作
  • 後期HIBRIAのプログレ&パワーメタルを踏襲
  • 疾走曲の変わらぬ熱さこそが最大の魅力

 

正統派メタルとしてのダイナミズムを完璧に表現したサウンド、耳に馴染みやすいキャッチーなメロディー、そして圧倒的熱量を放つ超人的鋼鉄ハイトーンヴォーカルで、日本のメタルシーンに鮮烈なインパクトを与えたブラジリアンメタルバンド・HIBRIA。

 

名曲「Steel Lord On Wheels」「Tiger Punch」をはじめ、メタル魂を熱く鼓舞する楽曲を聴かせてくれた彼らでしたが、3rdアルバム『Blind Ride』あたりから少しずつモダンヘヴィ寄りだったり、テクニカルだったりする音作りが目立ちはじめ、わかりやすさと熱量が減退(あくまで相対的なもので、それでも充分魅力的な正統派ではあったんですけど)

 

注目度が少しずつ落ちはじめていき、最終的にはギタリストのアベル・カマルゴを除くメンバー全員が、他の道へと進むために脱退。その後しばらくは動きらしい動きが無かったので(僕が見てなかっただけかもしれませんが)、正直なところこのまま自然消滅するのかな...?なんて思ったものです。

 

しかし不屈の精神でメンバーを再び集めたアベルは、新生HIBRIAとしてバンドを再び立ち上げることに成功し、活動のスタートがコロナ禍とほぼ重なってしまうという不運に見舞われつつも、こうして新作を作ってくれました。まずは彼のバンドを諦めない心に拍手したいです。

 

「変身・変態」というアルバム名の通りメンバーがほぼ総とっかえされているので、もはや別バンドになったんじゃないか、HIBRIAと呼べるのか、なんて聴く前は思ったんですけど、本作の方向性は後期HIBRIAをしかと継承するもの。

 

パワーメタルとしては異常なほどに目立ちまくるベースラインをはじめとして、プログレメタルかと言わんばかりにテクニカルにうねり回るバンドアンサンブルに、熱唱型のヴォーカルがキャッチーな旋律を歌う。モダンなヘヴィさを強調させたリフが絡み、やや無機質ながらもガッチリまとまった硬質なサウンドで勝負をかけるメロディックメタル。同じバンドだから当たり前っちゃ当たり前なんですけど、過去作からのギャップはそれほど感じません。

 

新たなバンドの看板となったヴォーカリストのヴィクター・エメカ。ルックスはSuspended 4thのデニスさんみたいな感じですが、そこからはなかなか想像しにくい、パワーメタルらしい野太いハイトーンを披露してくれます。

 

単純な歌唱力について言えばヴォーカル面において不足はないですが、やはりHIBRIAサウンドには、ユーリ・サンソンのヴォーカルの貢献度が非常に大きかっただけに、その点個性はやや減退したかな?

 

曲については特に疾走曲の仕上がりが良く、オープニングにしてはちょっと地味めなM1「War Cry」から続くM2「Shine」は、大きなスケールを描く明朗なサビが熱く歌い上げられるナンバーで、「あ、こりゃ確かにHIBRIAだ!」と思わせてくれること請け合い。

 

もはやギター以上にベースが目立っているといっても過言ではないM4「Fearless Will」は、特にサビにおける哀愁が際立ったメロディーが魅力。怒涛のドラムの連打からメロディックかつテクニカルなツインギターで幕を開け、一段とクールなサビが展開するM6「Raging Machine」に、そのままの勢いで駆け抜けるM7「Skyline Of The Soul」と、テクニックとパッションを兼ね備えた魅力的な楽曲が聴ける(M7はもうちょっとギターソロに迫力が欲しいが)

 

そしてM9「Tribal Mark」は、本作の一番のポイントとなる楽曲。ユーリ・サンソンら、HIBRIAの元メンバーがレコーディングに参加した楽曲で、昔からのファンであれば嬉しいところでしょう。ただ曲としてはズッシリしたヘヴィさ重視の曲で、疾走曲ほどの爽快感が無いのはちょっと厳しい。もっとシンプルで直情的なパワーメタルで良かったのよ。

 

生まれ変わってから初のフルアルバムとなった本作、ヴォーカル面による個性の減退や、純粋なパワーメタルとは毛色の異なるプログレ的演奏により、やっぱり初期HIBRIAほどのインパクトは足りないと言わざるを得ないのは事実。

 

しかし疾走曲に迸るパッションや、パワーメタルとしての馬力溢れるサウンドはきちんと用意されているので、従来作に親しんできた人には、メンバーが変わったとしても安心して聴ける作品になっていると思います。とりあえず復活は果たすことができたので、今後の動きに期待をかけてもいいかもですね!

 

 

個人的に本作は

"後期HIBRIA直系のプログレ的演奏力と、熱さが滾るメロディーセンスが噛み合ったテクニカルパワーメタル。疾走感ある曲はどれもキラーチューン"

という感じです。

 


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NEW HORIZON 『Gate Of The Gods』

  • かつてのバンドメイトでタッグを組んだ
  • H.E.A.Tのようなハードロックとは異なるパワーメタル路線
  • スピードチューンを中心に完成度は極めて高水準!

 

スウェーデンのハードロックバンド・H.E.A.Tのキーボーディストであるヨナ・ティーと、2020年にそのH.E.A.Tを自身の夢の実現のために脱退した、エリック・グロンウォールがタッグを組んだプロジェクトの1stアルバム。

 

エリックは「南アフリカでタレントを発掘するための事業を行う」という名目で脱退したそうですが、そこから程なくして急性リンパ性白血病(細胞ががん化して、正常な血球が少なくなることにより、免疫力の低下や疲れ、体のだるさなどが顕著になるのだとか)を発症してしまうという、非情な現実を突きつけられてしまうことになります。

 

闘病の結果、エリックの症状はなんとか回復したそうで、2021年の11月、ヨナが発起人となってNEW HORIZONを結成。病魔に侵されたかつてのバンドメンバーと、新たな形で音楽活動をスタートさせるという、なんとも胸を打つ結成秘話ですね......

 

エリックが在籍していた頃のH.E.A.Tの最新作『H.E.A.T Ⅱ』は、エリックのダイナミックなヴォーカルと、躍動するバンドサウンド、メジャー級のキャッチーなメロディーが合わさったハードロックの快作として記憶に新しいです(「Dangerous Ground」は超名曲!)

 

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そんなハードロック一直線の名作を生み出したバンドの人物による本プロジェクトのアルバム。意外にもH.E.A.T的なハードロックのスタンスではない。H.E.A.Tよりもグッとメタルの比重が増していて、広義のメロディックメタルに分類される音だと思います。

 

ライナーノーツによるとヨナは、IRON MAIDEN、HELLOWEEN、HAMMERFALL、MANOWAR、EDGUYといったメタルバンドを聴いてきており、そういったタイプのメタルサウンドを作りたいと思っていたらしい。エリックとタッグを組むにあたり、かねてからの自分が作りたがっていた、H.E.A.Tでは実現出来なさそうな楽曲を生み出せるチャンスだと思ったのでしょう。

 

楽曲のクオリティーは、どれもこれもメロディックメタルとして非常に高いクオリティーで安定しています。DYNAZTYを彷彿させるような普遍性を持った楽曲を主軸とし、曲によってはメロパワ/メロスピというワードが当てはまりそうな疾走曲も収録されていますからね。やっぱ優れたクリエイターって、多少畑違いな分野であろうと出来ちゃうもんなんですかね。

 

特に僕が気に入ったM6「Stardust」は、バッキングのキャッチーなキーボードに、整合感と突進力を見事に両立したドラム、パワーメタルを歌うに充分なハイトーンを響かせるヴォーカル、スケール大のサビを通過した後のギターソロに至るまで、何もかもがカッコ良く磨かれた名曲!ソロ後の儚ないキーボードから、神聖なコーラスを挟みつつ大仰に盛り上がるサビへと至る過程も実にドラマチックで良いですね!

 

M4「Cry For Freedom」、M9「Fearless(ハイトーンシャウトがアツすぎる!)のような勢いに満ちた楽曲のカッコ良さは文句のつけようがない。M3「Stronger Than Steel」、M7「Event Horizon」はパワーあふれるアップテンポメロディックメタルとしての魅力が煌めく。つまらない曲は存在せず、聴きどころに満ちた力作に仕上がっています。

 

しかしH.E.A.Tを聴いたときも思いましたが、やはりエリックのヴォーカリストとしての実力は非凡なものがありますよね。ロックとしての躍動感、毒々しさ、華やかさを完璧に表現できている歌声は、あのまま眠らせてしまうのは非常にもったいないことですから、(夢を中断させざるを得なかったのは気の毒ではあるものの)こうしてまた新たな歌を歌ってくれるようになったことは喜ばしいことです。

 

同じバンドを経験して培われた絆をもとに、新たに生まれた要注目のメタル・プロジェクト。今後も引き続きハイクオリティーなメタル・アンセムを期待しています。

 

...と思っていた矢先、そのエリックがなんとSKID ROWのヴォーカルに大抜擢されるという大ニュースが。彼の新たな挑戦が始まるというのは良いことですけど、ヨナとの友情の証である本プロジェクトの立場はどうなんの?SKID ROWもいいけど、こっちもちゃんと続けてよ。

 

 

個人的に本作は

"ダイナミックなヴォーカルで描かれる、ハイクオリティーなメロディックメタルアンセム集。劇的メロパワチューンは最高にカッコいい"

という感じです。

 


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HAMMERFALL 『Hammer Of Dawn』

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  • 旧作と何も変わらぬHAMMERサウンド
  • 北欧的哀愁が支配的なヴォーカルメロディー
  • ラストにかけてパワーが一段上がる構成

 

METAL WEEKENDでの好演も記憶に新しいスウェーデン出身の5人組正統派ヘヴィメタルバンド・HAMMERFALLの、前作から約2年半ぶりに放つニューアルバム。90年代という正統派メタルが非常に厳しい時期にデビューして、そこから12作ものアルバムを重ねたんですね。地力のあるバンドです。

 

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前作『Dominion』は、HAMMERFALLというバンドの個性(それほど個性的ってバンドではないものの)と強みが従来作通りに順当に発揮された充実作でしたが、本作もまたそれに倣った作品。新鮮味は皆無ながら、安定感とクオリティーの高さは折り紙付き。正直、前作と方向性はほぼ変わんないので「前作が好きなら買って損しないよ」の一言で、この文章を終わらせてしまってもいいレベル(笑)

 

ヨアキム・カンスによるヴォーカルと、それほどゴリゴリしたヘヴィさを主張しないバンドサウンド、北欧由来のメロディーセンスが作用することによって、紛れもない正統派メタルのスタンスでありながら、どこか清涼感すら感じさせる造りはHAMMERFALL節ですね。ドイツとかのパワーメタルバンドと比べると、馬力は一歩劣る印象ですが、クドさを感じさせずにサッと聴き通すことができる。

 

本作は全体的にヴォーカルメロディーの哀愁という点がやや目立っていて、この辺は叙情的メタルを愛するリスナーの心に引っかかり安いと思われます。M4「Venerate Me」のリードギターとウォーウォー言うコーラス、M7「Not Today」の演歌ばりに泣きの旋律を生み出すバラードなどに顕著に現れています。

 

その一方でメロスピ的疾走感は控えめな印象で、いかにも疾走パワーメタルチューンだ!と思わせるイントロのM6「Too Old To Die Young」も、歌が入ってからはややテンポダウンしてしまったり(雄大なサビとツインリードは素晴らしい)と、この辺はややもどかしい思いをさせられてしまうかも。必ずしも疾走を売りにしたバンドではないんですけど。

 

ただバラードのM7が終わってからの残り3曲は、本作の中でもパワフルさが強調された楽曲が立て続いて、勢いよくアルバムを締めてくれる構成は好き。正統派リフがズンズン進みゆく様が聴いていて実に気持ちいいですね。

 

全体を通して「さすがHAMMERFALL!何も変わっちゃいないぜ!」と言いたくなる、高品質な正統派メタルを本作も貫いてくれました。充分に熱量はあるけれども聴きやすい。意外性は無いけど外されることも無い、この安定感がパワーメタルファンにはありがたいですね。

 

 

個人的に本作は

"HAMMERFALLらしい、馬力控えめで聴きやすさ重視の正統派パワーメタル。哀愁寄りのヴォーカルメロディーが充実"

という感じです。

 


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3/21 THE冠 / 超頭振狂想曲TOUR 2022 at 吉祥寺CLUB SEATA

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三連休の最後の日、日本のヘビーメタルをとことん堪能してきました。

 

日本が誇る愛すべきヘビメタバカ・THE冠が主催する「超頭振狂想曲TOUR」の二日目。本当はワンマンツアーを経てからの本公演だったようですが、コロナ蔓延のために6月に延期となり、このツアーからのスタートとなったようです。

 

今回の対バン相手はモダンメタルコアバンド・NOCTURNAL BLOODLUST。THE冠とノクブラの組み合わせといえば......そう、あの忌々しき台風のせいでおじゃんになってしまった大冠祭2018の共演以来です。

 

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あの時のショックは、流石に4年も経っただけに回復してはいますけど、当時は本当にやるせなかった...。まああれがあったからこそ、翌年の大冠祭2019の満員御礼っぷりは嬉しかったのですが。

 

とまあ、曰く付きの組み合わせとなりましたが、本日の天候は特に問題なし。家からかなり遠い(乗り換えは少ないのが救い)吉祥寺まで出向いて、彼らのライヴを存分に味わおうではないですか。

 

開演少し前に吉祥寺へ降り立ち街ブラ敢行。その辺のカフェにでも入ってのんびり過ごそうかと思っていましたが、目ぼしい場所はすでに満席で列ができている。東京のスタバとかって終始満席ですけど、あれはみんなどうやって入っているのか...謎です。

 

開場時間を少しすぎたあたりで向かうと、ちょうど自分の整理番号のあたりを呼ばれている最中で、めちゃくちゃタイミングが良かった。ワンドリンクのオレンジジュースを飲み干してフロアへ行くと、今回は椅子席になっていました。当日券が出ていたようですが、見渡した感じ座席はほぼほぼ埋まっていたようです。ただ、かつてと様変わりしたとはいえ、赤坂BLITZ新木場STUDIO COASTでワンマンをやったバンドを迎えて、この会場が祝日でソールドしないというのはやや口惜しいかも。

 

 

NOCTURNAL BLOODLUST

ステージ上の幕からひょっこり出てきたのは冠さん。NOCTURNAL BLOODLUSTが持ち時間を大幅に削らざるを得なかった大冠祭の件に触れたあと、「座っている場合ちゃうやろ!!」と煽り立ててからSEが流れ出す。

 

メンバーが後光に照らされながらやってくるのですが、まずどうしても目についてしまうのが、ヴォーカルの尋さんの両腕。信じられねえくらいに上腕筋がムッキムキで、本当に自分と同じ体の構造をした人物なのか疑わしくなる(笑) あのインパクトは生で見ないと伝わるめえ。

 

前回観た渋谷CYCLONEの時と同じく、オープニングは「Malice against」。疾走感とヘヴィさ、キャッチーさを兼ね備えた楽曲で、勢いよくスタートを飾るのにピッタリ。バンギャと思しき女性客を中心に、髪の毛をバッサバッサと振り乱すヘドバンの嵐が巻き起こる。

 

もちろん僕も大好きな曲なので、最初からエンジン全開でメロイックサインを突き上げてヘドバンで応える。中盤の大きな聴きどころであるギターソロは、原曲とはだいぶ違うアレンジになっていたようですが、タッピングを交えた高速ソロは鮮やかでカッコいい。

 

今回ヴォーカルの尋さん以外だと、上手側ギタリストのValtzさんがかなり目立っており、積極的にステージ前方へと立ち、ギターのヘッドを縦に構えて速弾きやリードを弾き倒しまくる。ちょっと音響のバランスが極端で、いやにリードギターの音量が大きくなってやかましく感じなくもなかったのですが(笑)、まあ埋もれて聴こえないよりは良いということで。

 

前編成で観たLOUD PARK 16の頃のド派手なパフォーマンスは消え、良くも悪くもモダンなメタルコアらしいまっとうなステージアクションが支配的。個人的にはメタルバンドとして本格派になったと好意的に受け止められるんですが、やはり昔からのバンギャの人は物足りないのかしら。

 

Punch me if you can」の重心の低いヘヴィリフで引き続きヘッドバンギングを巻き起こし、「ONLY HUMAN」では耳を擘くという表現がふさわしい(マジでちょっと痛いくらいでした)ホイッスルヴォイスを披露。

 

MCでは大冠祭で15分ほどしか出演できなかった件について触れていましたが、その日のことをドラムのNatsuさんに指摘されるまで8年前だと言い間違えていました。ここから今年出る8年ぶりのフルアルバムの告知につなげていましたが、それが意図的なものなのかは不明(様子からして多分本気で勘違いしていたと思われます)

 

そのフルアルバムについては「かなり激しいアルバム。だけど激しいだけじゃなくて、悲しさとか、切なさとかも入った、かなり良い作品」と言及しており、哀愁の効いたメタルが好物な自分としては期待せざるを得ませんね。

 

REM」をはじめ、ちょっとチャラ目な瞬間も多かったですが(途中にChoo Choo Trainのダンスを真似てみたりといったノリとか)全体的には非常にタイトかつヘヴィに引き締まったパフォーマンスで、現ラインナップのレベルの高さを改めて感じさせるアクトだったと思います。アルバムも楽しみ。

 

 

THE冠

続いてはお待ちかねのTHE冠。お馴染みのゆる〜いSEに導かれて、バンドメンバーと勇ましく登場してきた冠さんが大きな拍手を浴びて集結。「帰ってきたヘビーメタル」から勢いよく疾走スタート。

 

彼らのライヴが非常に熱く、かつエンタメ性に溢れた極上のものであることは、もう今更言うまでもないでしょう。ギター一本であるのに、先ほどのNOCTURNAL BLOODLUSTに引けを取らないほどの音圧でオーディエンスを圧倒する。

 

冠さんのヴォーカルは絶好調と言ってしまってよく(調子が悪い時を観たことが無い)、凄まじいキレッキレのシャウトを連発し、そこから淀みなく堂々とした太い声の歌唱へと移行させる技術は「凄い」としか言えん。なんであんな凄まじすぎるヴォーカルパフォーマンスができるのか...

 

SLANGのタンクトップが眩しすぎるドラムのYOUTH-Kさんと、いつの間にかウェーブのかかった金髪になりシャレオツな見た目になってた春輝さんによる、リズム隊の低音の迫力が素晴らしく、そこへかぶさるワウを効かせたK-A-Zさんのギターも破壊力抜群。ノクブラと同様にちょっとギターソロの時、音が大きくなりすぎた感はありましたが、彼らの強靭なアンサンブルを味わうのにふさわしい音響でした。この丁寧になりすぎない攻撃的な音がヘドバン欲を煽るんですよ。

 

今までライヴでは聴く機会に恵まれなかったのに、今日はいきなり2曲目にきた「ヘッドバンギン謝罪行脚」、哀愁疾走が魅力の「メタリックロマンス」にはメチャクチャアガったし、ロウソク(火は使えないので電球仕様)を頭につけて丑の刻参りのごとき様相で「花占い」もプレイ。定番をつまみつつ、フェスなどではなかなか聴けないレア目な曲も嬉しいセットリスト。

 

 

そして曲の完成度だけでなく、相変わらずMCも達者の一言。先日行われた宇治市の祭りについて言及したトークにて、8歳の男の子に「後でグッズあげるね!」と声をかけたら「いらん!」と一蹴されたり、子供の頃茶団子を人差し指にくっつけて「鼻くそ!」とかふざけていたというエピソードを話した瞬間、後ろの方で見ていた偉い大人たちの空気が変わったりした話をして会場は大ウケ。

 

そこからの故郷である宇治を思う「帰郷」に、「傷だらけのヘビーメタル」「哀罠メタル」では、ライヴでお馴染みのマイクを振り乱すパフォーマンスから、マイクを股間に打ち付ける仕草でこれまた笑いを誘う。どこまでいってもオーディエンスを楽しませるコミカルさを取り入れるのを忘れない。

 

そんな和やかな雰囲気が少し変わったのが後半のMC。「こういうことを言うのは難しいけど」と前置きをした上で、コロナや地震、そして今も確実に起きている戦争について触れ「偉い人間の判断によって、罪の無い人たちや子供たちが殺されるなんていうのは絶対に間違っている」と、いつになく真剣な口調で語る。

 

そこから"水に流すことの出来ぬ 罪の所在はどこなんだ"と歌う「糞野郎」へと繋がる。普段のライヴでは問答無用にテンションがブチ上がる超キラーチューンであり、それはこの日も同じではあったのですが、やはり前述のMCから来ると、どこか感じ方が異なってきますね。

 

戦国武将のごとき甲冑を着こなす「日本のヘビーメタル」で、オーディエンスと共に万歳三唱を巻き起こし、冠徹弥という男の生き様を示す「初志冠徹」で締め括る。最後の最後までメタリックなシャウトの切れ味は損なわれず、圧巻のラストを飾りました。本当に改めて思うんですが、どんな喉をしているのだろう...

 

 

大冠祭のシコリを吹き飛ばす充実の対バンでしたが、やはり「超頭振狂想曲」という名が示す通り、実にヘッドバンギングのしがいのあるライヴでした。ヘヴィな楽曲の良さはもちろん、モッシュピットが作れない分、ヘドバンが一番やりやすいアクションになりますからね。

 

ライヴ中冠さんが「皆さん首のケアを忘れずにね!この歳になると二日後くらいに痛みが来るんだよ」と漏らしていましたが、僕の方は翌日速攻で首筋を痛めたので、まだまだ自分は若いのだと自信を持てましたよ。

KoЯn 『Requiem』

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  • キング・オブ・ニューメタル史上最もコンパクトな作品
  • KoЯnらしい鬱屈とした世界観とヘヴィリフ
  • 歌メロの比重が高く聴きやすいナンバー中心

 

キング・オブ・ニューメタルの名にふさわしい存在感と人気で、90年代後半以降のヘヴィミュージックシーンをSlipknotらと共にひた走る、ニューメタル界の大御所による14thフルアルバム。

 

28年もの間活動しており、もはやベテランと言えるキャリアを築き上げているのにも関わらず、ベテランにありがちな寡作化とは一切無縁。ここまでコンスタントにアルバムを作り続けられる創作意欲はさすがとしか言えませんね。多作であればいいというわけではありませんが、他のバンドももうちょっと見習ってほしいとか思ってしまいます(笑)

 

本作は国内盤ボーナストラックを加えても全10曲、トータルで36分ほどの収録ボリュームであり、ヘヴィさは健在なものの、ジョナサン・デイヴィスによるメロウな歌がかなりフィーチャーされている方向性。聴き辛さはほとんど感じません。

 

嗚咽するかのようなヒステリックな叫び、シャウトスタイルは極力抑え、メロディアスに彩られた旋律をしっかりと歌い上げるジョナサンの声は、彼が普通に優れたヴォーカリストであることを改めて感じさせてくれる。やはりジョナサンといえばどうしても「Daddy」とかで聴かれる悲痛な叫びの印象が強いのですが、本作で聴けるのは、至極真っ当にメランコリックな旋律をなぞる歌。

 

もちろん彼らの作品らしい鬱屈としたダークな世界観、ヘヴィさを際立たせたリフ運びなどは何もブレちゃいない。M1「Forgotten」のイントロのノイジーなギターから、ガッツリとヘヴィなサウンドへ進んでいく様、落ち着いたAメロでクリーンなバッキングへと変貌していくところなどはいかにもニューメタル的で、持ち味を失うことなくメロディアスに聴かせる手腕が光った作品であると思います。

 

ただ聴きやすいといっても、わかりやすい疾走パートとか、ギターソロのようなメタルらしいと感じさせる要素は当然ながら(?)無いので、そういった要素を好む層(僕もですが)には相変わらずウケは良くなさそうではあります。まあそれをやっちゃうとニューメタルとしての矜持に関わると思うのでこれで良いのでしょう。KoЯnらしいとも思えませんし。

 

ミドル〜アップテンポで展開し、哀愁寄りのメロウさ(あまりキャッチーとは言い難い)が目立つ歌を主軸としたヘヴィチューンで締められる。大体どの曲も似たような感じで、通常であれば聴いているうちにダレてしまいがちなんですけど、前述したように本作はかなりコンパクトなので、飽きずに楽しめるのは良い感じです。

 

特に気に入ったのは、サビで一際美しく哀しげな雰囲気を醸し出すメロディーが聴けるM2「Let The Dark Do The Rest」ですね。この曲が歌モノヘヴィチューンとして一番わかりやすく、メロディーもドラマチックだと思います。やったら特徴的な歌い回しが光るM9「Worst Is On Its Way」も好き。

サンデカデカデコンダデコンッ!!

 

ただ、M9のゆっくりと不気味にフェードアウトしていく終わり方がクライマックスとして味わい深いのに、国内盤だとそこからすぐにボートラのM10「I Can't Feel」が始まってしまうので、アルバム単一の出来としてなら輸入盤の方が良いかも...?(それほど抜きん出た楽曲とも思えないだけに余計に...)

 

なお「ヘドバン Vol.33」では、本作についてヴォーカルのジョナサンのインタビュー記事が載っているのですが、そこでの語り口は非常に紳士的かつ、良い人感に溢れていて、ホントにかつてゲロ食ったりしている人だったのか疑わしくなってしまいます(笑)

 

 

個人的に本作は

"ダークでヘヴィなKoЯnらしさを貫きつつ、最大限コンパクトかつメロディアスに聴きやすく仕上げた一作"

という感じです。

 


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