前回の感想文は「クサメロが失われてしまった」というネガティヴなものになってしまいました。この内容のものをブログトップに堂々と鎮座させるのもアレなので、激メロ満載のアルバム感想を早いとこ書き記したいと思います。
日本のメロディックハードコアバンドは、西海岸系の能天気な明るさ以上に、どこか切なく憂いを帯びたメロディーを武器とするバンドが多く、その中でも頭一つ抜きん出た哀愁を強く奏でるバンドこそHawaiian6。
作り込まれた整合性や丁寧さとは無縁の、衝動性に満ちた荒い演奏に、英語の発音もクッチャクチャなヴォーカル。以前ライヴを観たときは、後輩格であるNorthern19よりも遥かに荒いパフォーマンスを披露していたのが印象強いです(笑)
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しかしその荒さを帳消しにしてしまうほど......いや、むしろ衝動性抜群の荒さを持つバンドだからこそ際立つのが、昭和歌謡にも影響を受けたと思しき激泣きのメロディー。明るい曲から暗い曲まで、どこを切っても切なく胸打つ叙情性が満載。この激情に満ちたメロディーこそがHawaiian6の最大の特徴であり、魅力であるという意見に反対する人はいないでしょう。
そんな彼らの作品において、最もメロディーの哀愁が強いと思われるのが2005年発表の本作。総合的な完成度では次作の『BONDS』の方が上ですが、激メロの嵐を堪能したいなら本作が一番かと。
前作フルの『SOULS』はまだ普通の明るめなメロコアナンバーも目立ってはいましたが、本作においては全曲に哀愁のメロディーが息づく。バラードの類も存在せず、ひたすらにガムシャラに、熱く、荒く、泣きながら疾走していくドラマチックメロコアのオンパレード。
そういった意味では、本作でこのバンドは自身のスタイルを完全に確立させたと言っていいでしょう。まさにタイトル通りバンドの始まりというべき作品。
ポップな印象が強い楽曲はM4「WORLD」、M8「RAINBOW, RAINBOW」、M12「I BELIEVE」くらいですが、こういった曲においても切ない叙情性に満ちているのが素晴らしい。M8はHi-STANDARDの「Mosh Under The Rainbow」を元にして作成されたみたいな話を聞きましたが、ハイスタに特に強い思い入れの無い僕からすれば、こっちのほうが遥かに良い出来な気がする(笑)
そしてそれ以外の楽曲では、終始マイナーキーで彩られた悲しみのキラーチューン乱打。M1「THE LIGHTNING」から早速Hawaiian6節のメロディーに塗れ、"Run away, run away, run away, run away Yeahhhhh〜〜〜〜！"の叫びで絶頂。
歌謡曲的な哀愁がサビにて全開になるM3「GOODBYE YESTERDAY」、絶望感すら感じさせるイントロのギターリフから爆走し、TORUさんの泣き叫ぶコーラスが鳥肌モノのM6「NO FANTASY」、悲しくも美しく、儚い印象を与えるサビやクリーンギター、ラスサビ後に感情を爆発させるヴォーカルパートがたまらないM11「CRIME AND PUNISHMENT」と、最初に上がったテンションを一切下げずに、泣きに泣いたメロディーが矢継ぎ早に繰り出される様は圧巻。
中でも最高峰の哀愁を聴かせてくれるのがM5「A CROSS OF SADNESS」。最初のクリーンギターとヴォーカルから、悲しく、寂しい。そのままメロコアらしく疾走するものの、メロコア/ポップパンクのような爽快感は無い。ひたすらに陰鬱で、狂おしいほどの悲しさを放ち続ける。戦争の無意味さ、残酷さ、虚しさを歌い上げる歌詞と相まって、一際エモーショナルな名曲に仕上がっています。
メロコアなんて軽くてポップだから聴かん！と思っている人ほど驚かされるであろうドラマチックパンクです。哀愁のクサメロを求めている人は食わず嫌いせず是非。ただ何度も言うように、音作りとヴォーカルはかなり荒いため、整合性を愛するリスナーはふるいにかけられるかもね。
個人的に本作は
"歌詞もメロディーもヴォーカルもコーラスも、すべての面でリスナーの胸の奥をかきむしる激情メロコアの名盤"
という感じです。
Hawaiian6-A CROSS OF SADNESS(OFFICIAL VIDEO)
