ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

SUM 41 『Heaven :X: Hell』

  • パンク・メタルの代表格、最後の作品
  • ポップパンクとヘヴィメタルで分けられた2枚組
  • 全体通した作風は、近年の作風と共通した重厚なもの

 

先日のPUNKSPRINGにてヘッドライナーとして熱演した、カナダのパンク・メタルバンドSUM 41の8thフルアルバムであり、彼らの歴史の最後を彩る作品。

 

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もう皆さんご存知だろうとは思いますが、SUM 41は本作のリリースに伴うワールドツアーをもって解散、30年近いキャリアに終止符を打つことが決まっています。

 

なお、本作の制作中はまだバンドの解散が決まっていたわけではないらしく、ラストアルバムであるという気負いなく、フラットに制作に専念できたらしいです。

 

日本において、海外パンク勢の中で特に高い人気を誇るバンドで、「このバンドが青春だった!」という人はかなり多いと思います(僕の会社の先輩も「大学の頃すげえ流行ってたよ。解散すんの!?」と驚いていました)

 

PUNKSPRINGでも何度もヘッドライナーを務め、日本のパンクスにとって大きな存在だった彼ら。解散は大きな損失で残念極まりないのですが、彼らの決意を尊重しつつ、ラストアルバムとなる本作を、心して聴かせてもらいました。

 

本作は2枚組となっており、それぞれのディスクはHeavenサイド、Hellサイドと名付けられています。Heavenは彼らのポップパンクの側面を映した楽曲を中心に構成され、Hellはヘヴィメタルの要素にフォーカスした1枚。聴いてみるとわかりますが、コントラストは結構ハッキリしてます。

 

これまでもパンク・メロコアと、ヘヴィロック・メタルの要素の混合具合が特徴のバンドでしたが、アルバム単体で一緒くたになっていたそれらの要素を、完全にとまではいかないまでも、おおまかにディスク単位で分断した形ですね。

 

Heavenサイドは、ポップパンクの要素が濃いため、全体的に明るくおおらかな雰囲気を保っている......と言いたいところですが、やはり流石にキャリアを重ねたベテランだからか、初期の『All Killer No Filler』のように、突き抜けるようなおバカさ、能天気っぷりは強く出ていない。重厚な近作の方向性を踏襲しつつ、かつてのポップパンク精神を注ぎ込んだような印象を受けます。

 

M1「Waiting On A Twist Of Fate」〜M2「Landmines」〜M3「I Can't Wait」という冒頭の流れに勢いがあって、出だしの印象を決定づけているのが強いですね。M3なんかは特にポップパンク風味が強くて、懐かしい気持ちになる人もいそう。

 

M5「Future Primative」のような、Hellサイドにあってもおかしくないような疾走感とギターソロを完備した曲に、M8「Bad Mistake」のような。ポップになりすぎないキャッチーさに、これまたメタリックなギターソロを配した曲の存在も大きく、単にカラッとしたポップなムードだけではないことも主張しています。

 

メタルファンとして注目したいのはやはりHellサイドですが、こちらは徹底的にヘヴィなギターサウンドを武器とし、モダンでヘヴィメタリックな音と、マイナー調の歌メロで突き進んでいく。全体通して非常に重くシリアス。

 

「The Bitter End」のようにガチでメタルな音にしたり、「Pain For Pleasure」のような完全に正統派メタルになったりといったことはなく、パンクらしい疾走に、デイヴ・バクジュの本領発揮となる、モダンヘヴィなリフとソロを取り入れた作風でほぼ一本化されています。印象としては3rdアルバム『Chuck』、および前作『Order In Decline』に近い感じか。

 

そこいらのメタルバンドにも負けないほど重厚なギターが、低音部の迫力を支えていて音圧はかなりのもの。M3「Stranger In These Times」、M7「You Wanted War」のリフの破壊力なんて、ポップパンクの文脈では語りきれないほどゴリゴリですよ。

 

M5「Over The Edge」、M9「It's All Me」のようなヘヴィ&ファストな疾走ナンバーは、文句なしのキラーチューンですね!これぞSUM 41の名に求めているパンク・メタル!

 

前作、前々作はキラーチューンとそうでない曲の差が少々大きく感じたのですが、本作はHeavenもHellも、それぞれまとまりが非常に良くて、どの曲にも聴きごたえがありながら、1枚あたり30分未満という時間のため聴きやすさもある。

 

今のバンドが持っている特徴・美点を、2枚組というフォーマットを使ってうまくまとめあげた力作と言えるでしょう。これが最後になってしまうのはなんとも惜しい話ではありますが、ラストアルバムに相応しいクオリティーを誇る仕上がりになっているのは間違いないです。

 

しかし、これで青春を彩ったバンドの1組が姿を消してしまうのか...。HER NAME IN BLOODの解散もそうでしたが、なかなか心にクるものがありますねぇ...

 

 

個人的に本作は

"ポップパンクとヘヴィメタルの側面を、2枚のディスクにまとめ上げた作品。それぞれのカラーが色濃く、かつ高品質にまとまった力作"

という感じです。

 


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