ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

CODE AXE 『Sick Of It』

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AIってすごい。

 

YouTubeを開くと、「あなたへのおすすめ」と題して、僕が好みそうな動画を表示してくれる。今でこそ当たり前に実装されてるこの機能だけど、冷静に考えればすごい話。話したこともない無機物が、「これ、お前好きそうだよ」と勧めてくるんですもん。

 

今回取り上げるバンド・CODE AXEも、その機能のおかげで知ることができたバンド。タワーレコードのサイトで検索かけても、コンピ1枚しか出てこないインディーズバンドを、特にライヴハウスに通い詰める事もなく見つけられるとは(味気ないという感覚が無いわけじゃないが)

 

さて、このCODE AXEというバンド、2016年に長崎で結成された若手バンドで、音楽性はまさしく正しきメロディックハードコア。青春パンクとかポップパンクとか、そういう呼び名ではなく、キチンと「メロディックハードコア」と呼びたくなる音を鳴らしている。

 

つまりは硬派寄りの音楽性なんですね。ポップさを持ち合わせていながらほんのり哀愁がかったメロディー、ガッチリとタイトにまとまった硬質な演奏、甘さの無いヴォーカルの声質で、ヘロヘロ女々しい印象は皆無。

 

一番近いと思ったのはSTRUNG OUTかな。どこか翳りある歌メロが、時としてメタリックと形容できそうなサウンドに乗っかり疾走する。速弾きやツインリードも一部で使われなかなか熱い!

 

今の日本の音楽シーンはかつてのバンドブームなどどこ吹く風、ロックバンドが大衆の注目を集めるなんてよっぽどのことがない限り起こらず、ちょっとロキノン系シーンで注目を浴びるバンドが現れても、ハードなサウンドで勝負をかけるようなバンドではまずないでしょう(CDショップのバイトを辞めてから、日本のメジャー音楽シーンの流れにはだいぶ疎くなってしまったのですが、多分この感覚に間違いはないはず)

 

しかし翻ってこのバンド、まさにキッズを熱狂させるメロディックハードコア!こんな音が2021年の今になって生まれてくるとは、かつてこの手の音楽を欲しまくった身からするととても感慨深い。

 

今から10年くらい前の高校時代、部活が終わっては自転車かっ飛ばして大通りまで行き、タワーレコード札幌PIVOT店のJ-PUNKコーナー(当時はもっとコーナーが大きくて枚数も充実してた)に入り浸っては、気になる新譜をガンガン試聴していた頃。その頃にもし本作と出会っていたら、神速でレジまですっ飛んでいっただろうな。

 

そんな僕は今27。すでにアラサーの域に足を踏み入れているという事実に目を逸らし続ける毎日を送っていますが、そんな僕でもまだこの手のサウンドでここまで熱くなれるとは。心の中の17歳の自分が飛び跳ねてやがる。

 

M1「Tresure Trove」からのM2「Sick Of It」の流れなんて、まさに"THE・メロコア"って感じなんですよね。オープニングナンバーが1分ほどで終わる爆速ショートチューンで、間髪入れずにどこか明るくなりきれない憂いを帯びたドストレートな疾走メロコアへってパターン。「ああ〜〜!コレコレ!そうだよ!メロコアのアルバムってこうだよね〜〜!!」と思いまくりですよ。嬉しくなっちまうな(笑)

 

特に気に入ったのは、爽やかさと哀愁を両立した歌メロがエモ的で実に気持ちいいM4「No Reason」、本作中最もハード寄りのリフ、STRUNG OUTやSUM 41にも通じるメタルばりの速弾きでキッズの熱狂を呼ぶこと間違いなしの激アツ疾走ナンバーM5「Answer(相変わらずこういう曲大好きだな俺)、そしてYouTubeでMVを偶然見かけ、一気に僕の心を捉えたハード&キャッチーなM7「Ship」の3曲。その他の曲も出来が良く、捨て曲は無し。

 

いや〜〜、久々にガツンと来るメロコアバンドに出会えた気がします。マッシュルームカットのヴォーカルが歪みの薄いギターロックに乗せて歌うタイプのバンドが大量に出てきたシーンの流れにどうしても馴染めなかった僕にとって(笑)、この音はまさに日本のロック/パンクバンドに求めている理想系の一つ。

 

まあ、この手のバンドも掃いて捨てるほどいるじゃんと言われればそれまでなんですが、熱狂的な音であることは間違いないので、熱く激しいバンドが足りん!という人はぜひ視聴だけでもしてみてはいかがでしょうか。00年代にSUM 41辺りで青春を謳歌していた元キッズも懐かしく感じるかもしれません。

 

 

個人的に本作は

"ハード&ファストなサウンドで硬派に突っ走る、男のメロディックハードコア。キッズの心を熱く燃やすための音"

という感じです。

 


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OUTRAGE 『The Final Day』

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  • メタル大革命に埋もれないパワー
  • 陰鬱なヘヴィさを取り込みつつ超アグレッシヴ
  • スラッシャー歓喜のスピード感にも不足なし

 

先日発売されたばかりの『ヘドバン vol.32』にて、METALLICANIRVANASOUNDGARDENと並んで、本作が大特集されていたので、改めてガッツリ聴きなおしてみました。

 

本作が発表された1991年は、NIRVANAが中心となってグランジ/オルタナティヴロックのムーブメントが勃発した年であり、世界のロックシーンの流れが激変して、ヘヴィメタルという音楽が死滅しかかってしまった時期。ヘドバンの言葉を借りるなら、まさに「メタル大革命」というべき年。

 

このムーブメントにより、メインストリームのロックは退廃的で暗いもの中心となり、今までチャートを賑わせていたセックス・ドラッグ・ロックンロール的HR/HMバンドの人気は急降下、80年代後半から過激に盛り上がっていたスラッシュメタルもガツンとスローダウンするなど、メタルバンドにとっては大変苦しい時代だったんだろうと思います。

 

まあその時には僕は生まれてすらいなかったので、「そういうことがあったんだなぁ〜」くらいにしか捉えられないのですが(笑)、ともかくヘヴィメタルという存在そのものが端っこに追いやられ、一気にダサいものと化してしまったらしい。

 

そんな中時代の最先端を行ったメタルバンドがMETALLICAで、グランジからの影響を強く受けたと思しきブラックアルバムを、メタル大革命の1991年にリリースしてメガヒット。そんな歴史的名作と同年に発表されたのが、日本のスラッシュメタルの代表格・OUTRAGEの4thフルアルバム。

 

ヘドバンのインタビューでも、盛んにNIRVANASOUNDGARDENの影響を語っており、METALLICAのブラックアルバムを聴いた時に自分らと同じルーツを感じ取ったのだとか。

 

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当人たちは住んでいる国すら違うけれど、それぞれが共通したルーツとなる作品に感化され、似たようなコンセプトを持つ作品をほぼ同時期に制作・発表したわけで、それがこの時代の最先端の音楽となったということですね。それをMETALLICAのようなビッグバンドと一緒に成し遂げたのが、日本のバンドだったと......そう考えるとすごいアルバムだなコレ。

 

前述の通り、内容的にはグランジに強く影響を受けた陰鬱なヘヴィさが支配的で、スラッシュメタルというジャンルから想起されるリフのザクザク感はさほどでもない。

 

しかし、いかにヘヴィさを強調しようとも、決してメタル的攻撃性と鋭さを失わない演奏、ハードコアパンクの素養も飲み込んだ荒々しい突進力、メロディーらしいメロディーをあまり感じさせなくともキャッチーに響かせてしまう歌やシンガロングの組み立て方など、全ての要素が高度な次元で構築されていて、決してオルタナ化を狙って己の本分を見失ってしまったような事になっていない。

 

M1「My Final Day」と、それに続くM2「Madness」の素晴らしさは今更言うまでも無いですよね。一緒に叫ばずにはいられないシンガロングを主軸に据え置いた爆速チューンM1に、聴き手の鼓膜を叩き潰すかの如く振り落とされるリフでスピードアップし、ラスサビへとつながるM2。このオープニングでアドレナリンはあっという間に沸点へ。

 

引きずるようなスローテンポ、低音部を強調したバキバキのベースで負の空気を形作り、どこかアジアンテイストなメロディーも盛り込んだM3「Follow」で、当時の時代背景に合ったヘヴィチューンを演出し、かと思えばハードコアの香りを如実に感じさせるスラッシーなM4「Wings」、M5「Sad Survivor」という強烈な二連打で、疾走好きリスナーの欲求を満たし尽くす。ドッシリしたベースを下敷きに、暴れ狂うギターソロが閉口するほどカッコいい。

 

そんな暗くスローなパートと、シリアスでアグレッシヴなパート双方を見事に交錯させたM7「Veiled Sky」も面白く、アルバムのラストを締め括るのが、超ストレート、小細工なしのスラッシュチューンM9「Fangs」だというのも痛快。

 

90年代を代表するメタルアルバムはもちろんブラックアルバムですが、僕の中では本作の方が輝いて聴こえます。

 

個人的に本作は

"時流に流される事なく自身の音楽を貫きつつも、90年代メインストリームになり得る音楽の要素を取り込む事に成功した、奇跡のバランスを体現した名盤"

という感じです。

 


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僕が持ってるのは旧規格のCDで音が小っせ〜んですよね。

30周年記念盤新たに買うべきか...?

TRIVIUM 『In The Court Of The Dragon』

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  • シリアスさとエクストリームさ重視
  • 直近作と同系統だがわかりやすさは多少減退
  • 後半からラストにかけてのクライマックスが劇的

 

新世代メタルの旗手として活躍し、今やすっかりベテランと言ってもいいほどのキャリアを誇るまでになったメタルコア/正統派ヘヴィメタルバンド・TRIVIUMの、前作『What The Dead Men Say』からわずか1年半ほどのスパンで発表された10作目のフルアルバム。

 

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リリースペースがこれだけ早いのは、当然ながら新型コロナウイルスの影響でライヴ活動が停止してしまったからで、通常であれば楽曲制作の時間をツアーの合間に捻出しなければならないところを、うまく現状を利用してアルバム作りに取り掛かることができたようです。

 

ここ二作のTRIVIUMのアルバムは、彼らに求められる正統派のメロディックメタルに、メタルコアを出自とするエクストリームな要素がバランスよく配合された、極めて安定感あるもの。そして最新作である本作も、その路線の延長上にあるもので、ヘヴィでタイトなリフと疾走感、マシュー・キイチ・ヒーフィーによる血の気の多いスクリームが至る所に顔を出し、概してアグレッシヴな作風。

 

もちろん徹頭徹尾エクストリームになることはなく、サビではテンポを落としてメロディックに決める箇所が頻出。直近の作品を気に入っていた人であれば裏切られることはほぼ無いであろうアルバムです。

 

ただ前作にあったキラーチューン「The Defiant」「The Ones We Leave Behind」ほどキャッチーな(と僕が感じる)楽曲は無く、大体の曲がシャウトを織り交ぜヘヴィかつアグレッシヴに突き進み、サビではキイチの男らしいヴォーカルで彩る、と言うスタンスが共通しているためか(これは本作に限った話では無いかもですが)、アルバム全体の起伏、各楽曲の印象に残る度は前作ほどではない。

 

やっぱりライヴ活動が思ったようにできず、フラストレーションを溜めがちだったのか、全体的に「陰」の印象が強い感じですね。メロディアスではあるんだけれど、わかりやすく明朗な感はあまり無い。これまでと比べるとちょいととっつきやすさは減退したのかも。

 

とはいえ、これほどの完成度の楽曲を1年ちょいくらいの期間でここまで仕上げ、取り揃えることができるバンドの地力の高さは、充分以上というくらいに感じることができる充実作でしょう。捨て曲らしい捨て曲は当然ながら皆無。

 

特に後半、M7「No Way Back Just Through」〜M10「The Phalanx」の流れはかなり強烈。甘さのない強靭なシャウトのオンパレードでありながら、土臭い哀愁の効いたシリアスなサビで熱くなるメタルチューンの4連打です。

 

M7、M8「Fall Into Your Hands」はともにサビの哀愁が一際に強く、M9「From Dawn To Decadence」は出だしからかなりアグレッシヴな爆走を見せ、シャウトの気合の入りっぷりも見事。ラストのM10は最後にふさわしく大仰で神聖なムードをイントロの時点で醸し出し、最後の最後で一気に不穏なギターフレーズでスローになり、シンフォニックなサウンドとともにラストを美しく締め括る。

 

制作期間が長くなかったであろう中でも、キャリアに裏付けされた極めて安定感のある濃密な良作を生み出してくれました。もう少しキャッチーさや、「Anthem (We Are The Fire)」みたいなオールドスクール寄りの曲があった方が僕の好みではありますが、10枚もアルバムを重ねて、なお研ぎ澄まされゆくサウンドには感嘆するばかりです。このバンドは外さないですね!

 

 

個人的に本作は

"エクストリームメタルとメロディックメタル双方を取り入れた安定のTRIVIUMメタル。前作と比べ各曲のカラー、わかりやすいキラーチューンは若干控えめに映るかも"

という感じです。

 


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V.A. 『BIRTH』

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  • 国産メタルコアの今を代表する3組が集結
  • 新曲・カバー曲ともにバンドのらしさが滲み出た良曲揃い
  • サブスクだけじゃ不完全だよ

 

CRYSTAL LAKEが所属するメタルコアレーベルのCUBE RECORDSが主催した、Sable Hills・Earthists.・Graupelの3バンドが集まり東名坂を回るBIRTH TOURに伴い発表されたスプリットEP。

 

先日も似たようなこと書きましたが、上記ツアーは僕としても非常に興味をそそられたものの、いかんせん仕事が一気に忙しくなる時期と丸かぶり、しかも月曜日という悪条件だったためスルーせざるを得なかったんですよね。

 

その無念を晴らすために、唯一ライヴを観たことがなかったGraupelを先日観にいき、無事その迫力にヤられてしまったのですが、やはりこの音源を手に入れないことには完全に満足するわけにはいかないのです。

 

本作は3バンドそれぞれ新曲が1曲ずつ、さらに互いに楽曲をカバーしあったトラックが3曲ついてくるという仕様。サブスクでは新曲しか聴けないだけに、これはCDを手にとってこそ。

 

関東圏では渋谷のタワーレコードでしか売っていないので、休みの日に意気揚々と出掛けていったのですが...やはり本作に注目していたのは僕以外にも多かったようで、到着した時にはもうすでにソールド...

 

 

後に再入荷されたっぽいですが、そんなに待ってられないので普段新譜の購入には使用しないタワーレコードオンラインで注文。

 

M1「Crisis」は正統的なメタルのリフワークに、アグレッシヴな疾走感、メタルコアらしいヘヴィネス、そしてサビになると顔を出すリードギターと、Sable Hillsの真骨頂とも言うべき楽曲。破壊力あるスネアドラムが心地よく、かつ時折ブラストめいたスピードを叩き出し、メロウな旋律とともに熱き野郎シンガロングで血潮をたぎらせる展開がカッコいいです。

 

M2「Overvision」は、本作中最もエクストリーム要素の薄い曲。ヘヴィリフとシャウトが絡むパートもありますが、クリーンヴォーカルで淡々と進み行くAメロに、ストリングス(打ち込み?)を多量に含んだバッキングの作用もあり、特にメロウな印象を抱かせてくれます。狂気的なパフォーマンスでモダンなヘヴィさを叩きつけるだけでなく、クリーンなサウンドにもこだわりを見せるEarthists.らしさが出ていますね。

 

M3「Apathy」は、宇多田ヒカルさんの「First Love」を大胆にオマージュしたサビで、MV発表時に話題を呼んだ楽曲。もちろんそのネタだけで終わらせるような曲ではなく、彼ららしい熱情とも言うべき感情表現が爆走し、ヘヴィリフを刻むスローパートでヘッドバンギングを誘発。クールなリードギターのメロディーで流れるように突進して、暴れながら泣けるGraupel流メタルコアを存分に味わわせてくれる。

 

M4「Sunblood」はSable HillsによるEarthists.のカバー。原曲のサビに当たる部分にリードギターを取り入れるアレンジで、雰囲気はだいぶ変わっている。アトモスフェリックな浮遊感と無機質なヘヴィさが持ち味の楽曲に、熱き正統派メロディックメタルコアの彼らは若干食い合わせが悪いように感じましたが、一回聴いただけで彼らだとわかるギターの泣きはさすが。

 

M5「Fade Away」はEarthists.によるGraupelのカバー。ガムシャラな突進力とヘヴィさを兼ね備えた出だしは共通ながら、サビはさらに音を高くして壮大なバッキングコーラスで仕上げています。バンドらしさと原曲の魅力をキープしつつ、原曲を超えんとする気概があふれる好アレンジです。

 

M6「The Chosen One」はGraupelによるSable Hilsのカバー。メロディアスなギターを武器としたアップテンポメタルを、見事にGraupelらしい疾走モダンメタルに調理。彼らのオリジナルだと言われても納得してしまうほどの仕上がりっぷり。中盤のブレイクダウンの迫力も文句なしですね。

 

メタルコアと一言で言っても、三者三様のスタイルがあり、それがわずか2曲ずつでもしっかりと伝わる良きスプリット作であると感じました。

 

唯一不満点(というほどでもないけど)を挙げるなら、Earthists.の「Fade Away」のクライマックス感が素晴らしいので、この曲をラストに配して聴き終えた余韻に浸らせてほしかったことくらいかな。

 

前述の通りサブスクでは新曲3曲のみしか聴けず、それでも充分に良いんですが、このスプリットの真髄を味わいたいならCD買って6曲ガッツリ聴き込むべきかと。

 

 

個人的に本作は

盟友同士の持ち味と強みが、オリジナル/カバー双方に作用した好スプリットEP。サブスクで満足せず、各バンドのカラーがよく出たカバーが聴けるCDを買いましょう

という感じです。

 


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Earthists.だけMVが見つかんない

 


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Graupel 『Fade Away』

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  • 表向きEP、内容はトリプルA面シングル仕様
  • ロディアスな叙情美も凶暴な破壊力もこれ一枚でOK
  • 僅かな時間にメタルコアの真髄あり!

 

先日行ったライヴで大きな衝撃を受けた国産若手メタルコアバンド・Graupelの最新EP。ライヴが終わった後すぐに物販へ行ってこのEPを買いました(CDショップに置いてないから)

 

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昨年8月にリリースされた本作は3曲入り・9分弱という非常に短いEP。一応M1「Fade Away」が表題曲という体になっていますが、作った当人としてはトリプルA面のつもりで作ったそう。聴いてみればその意識が本物であることがよくわかります。僅かなランニングタイムで、エグいほどの攻撃性とメタル・ハードコアとしての感情表現が目白押しの3曲。

 

前述のM1はライヴでも定番になっているらしいナンバーで、初っ端から絶叫とともに爆走し、けたたましくシャウトヴォーカルが暴れ回り、それに合わせてメロウなギターもバックで唸る。スローテンポのサビでは非常に叙情的なヴォーカルメロディーでクリーンとシャウトが交錯する、破壊力と切なさが同居された強力な一曲。語りによる静かなパートから"Go over, Over and over and over again"のシャウトと流れ、ラスサビへとつながる様は、メロディックメタルコアらしい激情が遺憾無く発揮されていて鳥肌モノ。

 

M2「Flashback」は、表題曲がメロディアスな方向性だからなのか、かなりアグレッシヴ方面に振り切ったナンバー。突進力を増したドラムにブルータルなぶっといギターリフ、気が狂ったように叫び散らすヴォーカルが一体となって爆走し、ツーステ誘発のリズムとブラストビートで、飛躍的に聴き手のテンションを上げまくる。ラストでそれまで性急なリズムで展開してきたとこから、急転直下にブレイクダウンに移行するのも良い!

 

M3「Relic」は、狂気的な暴れっぷりは先ほどのM2に比べると落ち着き(それでも充分以上アグレッシヴだが)ハードコア寄りの疾走感で突っ走りつつ、よりギターリフがリズミカルかつ緻密に刻まれ、ヘヴィなテンポダウンの瞬間も頻発するなど、メタルコアらしい曲展開へと派生。細かくヘヴィに刻むリフの応酬はモッシュ必至と言えるほどにアツいもので、キッズが狂喜乱舞しながらハードコアモッシュに興ずる光景が目に浮かびます。

 

全3曲怒涛の如く、あっという間に駆け抜けてしまうEPですが、どの曲も非常に完成度が高く、バンドの迸る熱量が短い中にガッツリと詰め込まれています。メタルコアとは胸を熱くしてくれる音楽だと改めて思い知りました。

 

残念ながら本作発表時のメンバーは一部脱退していて、現在はヴォーカルとギタリストの二名しか正規メンバーではないらしく、早いところ完全な編成へとなって、この音に封じ込められた勢いそのままに活躍してほしいところ。マジで日本のラウドシーンの先頭に立てるポテンシャルがあるバンドだと思えるだけに。

 

 

個人的に本作は

"ハードコア/メタルコアとしての激情と破壊力が短い中に詰め込まれた怒涛の10分弱。トリプルA面という表現も納得"

という感じです。

 


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10/31 Graupel Japan Tour 2021-2022 at 千葉LOOK

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Earthists.・Sable HillsとのスプリットEPのリリース、及びそれに伴う3マンツアーでメタルコアシーンの話題を呼んだ、若手メタルコア屈指の実力派バンド・Graupelのツアー初日に馳せ参じました。

 

件の3マンライヴ、どのバンドも個人的に非常に興味深くて是非とも観たかったのですが、東京公演は月曜日のド平日。しかもちょうどその週は自分が関わっている仕事がちょっとした山場を迎える週で、定時退社は絶望的なまでに忙殺されることがあらかじめ予想できていたため、ハナっから行くことは諦めてたんですよね。

 

Earthists.とSable Hillsは先日の下北沢LIVEHOLICで観ているので、Graupelもいずれ観てみたいと思っており、直近で観られるこの日に行くことに決めました。3マンツアーの刺激で脂が乗り、かつツアーの初日ということで、良いステージングが期待されます。

 

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会場となる千葉LOOKはかなり規模の小さい会場ながら、「千葉のライヴハウスといえばここ!」ってくらいに有名なハコ。壁一面にステッカーが乱雑に貼られ、狭小なスペースと合わせて、いかにもライヴハウスって見た目が素敵。

 

7年くらい前に一回来たっきりのハコで、千葉駅周辺もあまり来る機会がないため行き方なんて覚えておらず、ちょいと迷いながら会場へ到着。一人でソープランドばっかりの風俗街に迷い込んだ時には、得体の知れないプレッシャーに襲われました。

 

Prompts

日韓混合のメタルコアバンドという前知識のみで、音源は聴いたことがなかったバンドです。次に出てくるC-GATEもそうですが、CRYSTAL LAKE主催で開催予定だった(ヴォーカルのRyoさんの体調不良により中止に)TRUE NORTH FESTIVALの出演権をかけたライヴにエントリーしていましたね。

 

モダンかつかなり鈍重なリフを響かせるメタルコアで、ヴォーカルのシャウトも低音グロウルを主軸にかなり気合いが入っている。

 

ステージ中央に設置されたお立ち台に立って、仕切りに手を上げながら煽り、妙にクネクネした動きと猛獣ポーズを繰り出すヴォーカルのインパクトが一番大きく、このパフォーマンスの強さがライヴ映えという点でプラスに働いている感じです。その分ドラムはもうちょっとパワフルに叩いてほしかったかな...?(笑)

 

どこかアンビエントっぽい浮遊感と不穏な同期音源を用いて、スロー〜ミドルテンポによるリズム落ちが大半なので、ライヴでヘッドバンギングをする分には非常に向いている音楽性といえますが、個人的にはもう少し疾走感のある楽曲の方が好みかも。

 

あと韓流スターみたいな見た目のベーシストがたまにクリーンでサビを歌う箇所も散見されましたが、クリーンを使うならもう少しメロディーがキャッチーだとありがたいな。僕好みの哀愁、メロウさみたいなものはほとんど無く、ヘヴィなパートに比べるとやや魅力減なパートになってしまうのが惜しい。

 

ただルックスの良さ、ビジュアルのインパクトはなかなか大きく、ヘヴィな音で思いっきり頭を振り狂いたい人の欲求にはバッチリ応えてくれるアクトでした。

 

 

C-GATE

続いて出てきたのはC-GATE。Promptsと同じくライヴを観るのは初めてのバンドで、こちらもさしたる予習はしてこないままでした。同じくヘヴィなサウンドを武器とするバンドだとは知ってましたが。

 

先ほどのPromptsと比べると、メンバーのルックスも音楽性もハードコアの要素が強くなっており、疾走パートの多さもあってPromptsより好みのサウンドを鳴らしていました。帽子にフードを被って、ギラギラの目つきで中指を立てるヴォーカルのなりが、いかにもイキリ散らしたハードコアキッズって感じで見てて気持ちいいですね。

 

特に良い印象だったのがドラムで、上半身をフルに使って叩きつつ、結構な頻度でバスドラをツタツタ連打して疾走感を生み出すプレイがカッコいい。非常に狭いスペースながらブンブン腕と頭を振り乱して暴れるベーシストのインパクトも良し。

 

高音の女性ヴォーカル(こちらも同期音源)を使用したクリーンパートもありましたが、やはりこちらもメロディーのキャッチーさ、フックは物足りなく、これならデスヴォイスによるヘヴィなパートのみで押し切っても良かったかな...。やはりこの手のモダンなメタルコア/ポストハードコアにとって、クリーンパートはなかなか難しいですね。下手にキャッチーにしすぎるとダサくなっちゃうし。

 

最後になると、先ほどのPromptsのヴォーカルが乱入してきて、凶悪な二重のシャウトを披露。耳をつんざくばかりの凶悪なシャウトの交錯はなかなか刺激的で、良いクライマックスを迎えていたと思います。

 

 

Graupel

最後はメインアクトであるGraupel。荘厳なSEに導かれて颯爽と現れてからのオープニングナンバーは「Departure」。彼らの楽曲においても、特にギターのメロディアスさに比重が置かれた楽曲。

 

音源が非常に良かったから、きっとライヴも良いだろうと期待していましたが...いや、これは良いなんてもんじゃない。とんでもなくカッコいい

 

曲が始まった瞬間に、一気にボルテージが上がりましたね。ヘヴィさという点では彼らが本日(あくまで相対的に)一番軽かったとすら思えるサウンドなのですが、この胸かきむしる叙情性が爆発力を持った演奏とともに疾走した瞬間、たちどころにサウンドの虜になってしまう。気づけば腕を振り乱してヘッドバンギングに興じてしまいました。

 

やはり僕はメタルはメロディーありきで聴きたいリスナーなんだなと、彼らのライヴを観て再認識できたような気がします。体感的なヘヴィさでは上回っているC-GATEやPromptsもライヴバンドとして普通にカッコいいパフォーマンスを見せてくれましたが、やはりこのキャッチーさあふれるメロディーと、迫力を決して損なわない凶悪なサウンドの調和には胸躍る。

 

前二組と比べると、ライヴパフォーマンス自体はそこまで特徴的というほどではなく、モダンメタルコアとしては極めてオーソドックス。しかし演奏力の高さ、ヴォーカルのシャウトの安定感と華のある存在感、これらが一体となってオーディエンスを圧倒していく。動きがキビキビしてて、それでいて荒々しさもあるフロントマンっぷりが素晴らしいの一言。

 

サビで思いっきり宇多田ヒカルさんの楽曲をオマージュしたことで話題を呼んだ「Apathy」もプレイされましたが、肝心のサビ部分はシャウトオンリー(弦楽器隊がクリーンコーラスしてたかもですが、埋もれて聴こえてこなかった)だったので、予想より宇多田度は低かったな。

 

より叙情性を強めた名曲「Towpath」に、スローテンポで激情を演出するサビを持つ「Fade Away」をクライマックスに置いたセットリストも隙なしで、強靭な演奏とエネルギッシュなパフォーマンスと合わせて、怒涛のアクトでしたね。いや〜〜これは文句無しでしょ。間違いなく今の日本のメタルコア界のホープです彼らは。

 

MCではしきりに「全国各地を回って"日本のメタルコアは死んでない"っていうことを証明していく」と正面切って語っており、その姿勢も含めて頼もしいバンドでした。あれだけ叫び倒していたのに、MCになると途端に"THE 好青年"な印象になるのも良かったですね(笑)

 

アンコールはフルアルバムのタイトルトラック「Bereavement」で圧巻の締め。ド頭のキレた爆走っぷりに、中盤のキモであるブレイクダウンで一斉にヘッドバンギング大会開催。ただでさえ高まった熱量を押し上げる形でのフィニッシュを見せてくれました。

 

 

全3組どれもこれもヘヴィさ満載のステージングで、大量の重低音を浴びに浴びた一日になりました。どのバンドもタイト極まりない演奏を聴かせてくれましたが、Graupelの予想以上のライヴ力には感嘆させられました。

 

これだけのパフォーマンスができるバンドなら、もっと多くのオーディエンスの目に触れるべきですねマジで。小さいライヴハウスで少人数の前でしか演らないのはもったいなさすぎる(狭小なハコだからこその良さももちろんありますが)

 

ヘヴィミュージックを愛する日本のリスナーであれば、このバンドのライヴを観ない選択肢は無いと断言できます。これからツアーで色々なところ回るので、未見の人は観た方がいいです絶対に。

CARCASS 『Torn Arteries』

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リヴァプールの残虐王の異名を持ち、グラインドコアメロディックデスメタルという二つのジャンルの源流とされる重鎮・CARCASSが放つ最新作。

 

本来はもっと早くのリリースになった予定ですが、新型コロナウイルスの流行により発売延期を余儀なくされ、間にEP『Despicable』を挟んでようやく日の目を見ることになりました。

 

野菜で心臓を形作られたアートワークは、Ghostの最新作などを手がけたズビグニエフ・ビエラクによるもので、ブックレットにはページを捲るごとに徐々にその心臓が腐敗していく様が描かれています。

 

この方式は、野菜の寄せ集めで肖像画を生み出すジュゼッペ・アルチンボルドの作風、そして死体が時間経過と共に朽ち果てていく様子を9つの絵で描いた日本の仏教絵画「九相図」から着想を得たそう。メンバーがベジタリアンであり、かつ「腐敗」「死体」「臓物」みたいなワードがこの上ないほど似合うCARCASSにはピッタリですね。まあブックレットに載った野菜心臓の写真は10枚あるんですが(笑)

 

CARCASSは一応日本では「グラインドコアからメロディックデスメタルへと変貌を遂げたバンド」と認識されており、現在ではメロディックデスメタルバンドであるとされているように思います(ですよね?)

 

ただ実際彼らの音を聴いてみると、いわゆる普通のメロデスとされるバンドの音と比べるとだいぶ感触が異なり、メロデスバンドと十把一絡げにまとめてしまうのも戸惑われます。そして「メロディアスなデスメタルではあるんだけど、安易にメロデスとは呼びにくい」という方向性は本作でさらに推し進められているのです。

 

日本はおろか世界でも最高峰の(?)CARCASSファンである掟ポルシェさんは、ヘドバンVol.31の新譜レビューにおいて、"もしあなたが今作に「メロディック・デス・メタルのCARCASS」を期待しているなら残念ながらここにはない"と断言してしまっています。

 

本作で聴ける音は、ブルータルなんだけどモダンなヘヴィさは皆無の、70〜80年代的オーソドックスHR/HM的リフが満載であり、わかりやすい慟哭は無くとも生々しい情感満ち、流麗に奏でられるリードギターソロ、綺麗な音質であるにも関わらずグチャグチャしたアングラ感をしっかりと演出できるデスヴォイス、それらが渾然一体となったエクストリームメタル。

 

中心人物であるビル・スティアーも、「クラシック・ハードロックの影響がたくさん反映されている」「ダッド・ロックの影響はいつも入っているような気がする」と語っていて、これこそがCARCASSというバンドの音楽的方向性なんでしょう。とは言っても彼らはアルバムごとに作風を変えているようなので、次作がどうなるかはわかりませんけど。

 

近代的なエクストリームメタルのようなド派手なサウンドではなく、ストリングスもシンセもクワイアも無し。リードギターもわかりやすいメロディアスさが出ているわけではないと、本来であれば僕の趣向にはあまりマッチするとは言い難いアルバムです。

 

しかしなんでしょうね、この病みつきになる感と言いますか、聴けば聴くほどにクセになって来ると言いますか...。ほぼバンドサウンドのみで奏でられる不純物一切なしの正統的なHR/HMサウンドが、たまらなく心地いいんですよ。全体的にリフのザクザク加減が絶妙で、グシャグシャに切り刻まれていく危険な快感と中毒性を呼び起こしてくれるのです。

 

最初聴いた時は「ちょっと地味かな...」と感じていたのに、スピーカーから流れ出る音に身を任せ続けていると、シャープになりすぎないギターリフの連続に意識を取り込まれてしまうのがよくわかります。

 

オープニングの段階でリスナーの動脈を切り裂きにかかるリフが大盤振る舞いのM1「Torn Arteries」から始まり、流麗なソロとそのバックでズンズン刻まれるリフが快感度抜群のM3「Eleanor Rigor Mortis」、もの悲しいアコギとスローなギターソロパートが挿入され、残虐ながら心地よいグルーヴにも魅せられる9分以上の大作M6「Flesh Ripping Sonic Torment Limited」、これぞCARCASSと言いたくなるような唸るリードギター、濁流のように押し寄せるリフが味わえる爆走チューンM7「Kelly's Meat Emporium」と、ひたすら止めどなく流れ出るブルータルなサウンドに「もっと切り裂いてくれ!」と懇願したくなります。

 

ここに収められている音は確かにメロデスではないです。HR/HMを愛する者を快楽を与えたままザクザクズタズタにしてしまう鋭利な悦楽サウンドです。この危険な中毒性はかなりのものですよ。

 

なお国内盤ボーナストラックのM11「NWOBHEAD」は、これだけカバー曲なのか?と思ってしまうほどにテイストの違う曲ですが、ヴォーカル以外はメロディアスな正統派HR/HMそのものと言い切っていいくらいの楽曲で、正統派好きのリスナーは本編差し置いて一番気に入るかもしれない。

 

 

個人的に本作は

"正統派HR/HMでありながらエクストリームメタル。既存のメロデスのフォーマットには収まらない中毒性満載の生々しいバンドサウンド"

という感じです。

 


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