ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

BLOODYWOOD 『Rakshak』

 

辺境の国のメタルバンド、というと僕は、B級の色を残したクサメタルだったり、やたらエクストリームだったり...というイメージを持っています。少なくともメインストリームを行く音楽性というのは、なかなか想像しにくいです。

 

国内盤が出るはずもないような、やたらマニアックな雰囲気をプンプン放つジャケットのCDが、これまたマニアックな趣味趣向を持った人しか入らなさそうなCD屋さんにしか置いてない、みたいな。

 

しかしインターネットが発達し、世界がどんどんボーダーレスになっている現代。音楽を作るコストも低くなっているのか、先進国以外の様々な国でも高品質なサウンドが生まれるようになってきているようです。チュニジアのMYRATHとかはまさにそれですよね。

 

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そして今回取り上げる、インド出身のBLOODYWOODも、あまりメタル関連の話題が上がることが少ない国出身ながら、ハイクオリティー&個性的なメタルをプレイするバンド。

 

2016年にインド音楽やポップミュージックをメタルアレンジするプロジェクトとしてスタートし、徐々にオリジナル曲を作り始めるようになっていった彼ら。本作『Rakshak』は、2018年から2021年にかけて作ってきた楽曲を収録したフルレンスアルバム。

 

メンバー曰く、元々インターネット上を活動基盤としていたバンドだけに、一曲ごとに配信するのが自然なスタイルだそうですが、メタルはアルバム単位で聴かれることが多いジャンルで、レコード会社からもアルバム制作を要請されたことから、リリースに踏み切ったのだそう。

 

さて、そんなインド・メタルが収められた本作ですが、収録されているサウンドは、辺境の国のB級メタルとは一線を画すスタイルとなっています。

 

それはズバリ、ニューメタル/ラップメタルLINKIN PARKRAGE AGAINST THE MACHINELimp Bizkitあたりから影響を受けたと思しき、モダンへヴィネスらしいリズムと重さを兼ねたリフ、マシンガンラップで畳み掛ける。

 

そしてその音像に、インドの民族音楽要素が大量に導入されているのが本作の、ひいてはこのバンドの大きな特徴。単に楽曲の一部に装飾として使いました、というようなレベルではなく、完全に楽曲のメインの聴きどころとして成立している。バッキングでは民謡要素を醸し出す笛の音が雄大に飛び回り、パーカッションが民族音楽としてのアイデンティティーをガッツリと主張。

 

ここまでインド音楽としての要素を押し出しておきながら、それがニューメタルサウンドとミスマッチになることがない。自然と調和して違和感なく聴かせることができている。

 

M2「Aaj」は、そんな彼らの個性が100%発揮された楽曲。メロディアスな要素の薄い一般的なニューメタルと異なり、しっかりとサビに当たる部分でキャッチーにしてくれるのが嬉しいですね。異国情緒に煽れつつ普遍的なメロディーの魅力が根付いている。

 

攻撃的な高速ラップの畳み掛けが圧巻なM5「Dana-Dan」は特に勢いに乗る楽曲ですが、こういった曲においてもインド民謡のアレンジは忘れない。そこから続く後半はよりメロウな成分が強くなり、M6「Jee Veerey」、M7「Endurant」、M8「Yaad」あたりは、ニューメタルとしてのヘヴィなアグレッション以上に、郷愁に満ちた憂いあるメロディーを奏で続ける哀愁曲。こういったメロディーにグッと来るのは、やはり同じアジア人としてメロディーに求める音楽性癖が似通っているからなのか。

 

ただ曲作りのパターンが全曲同一方向を向いており、かつインド音楽要素満載であるが故に、いち日本人の感覚としてはちょっとクドく感じられるというのはあるかも。これをずっと聴き続けるのは疲れちゃうかもでしょうね。

 

とはいえそれはインパクトの強さの表れでもあります。個性とクオリティーを両立し、普遍的なキャッチーさまで含んだ楽曲たちは、ヘヴィロックを好む層なら聴く価値ありです。

 

 

個人的に本作は

"ヘヴィでタイトなニューメタル/ラップメタルに、違和感なく堂々とインド音楽要素をブチ込んだ超個性派ヘヴィサウンド"

という感じです。

 


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摩天楼オペラ 『真実を知っていく物語』

  • 新体制となって放つ過去最高傑作
  • 「美しい歌メロのメロディックメタル」という統一感
  • アルバム単位、曲単位双方において圧巻の完成度

 

ヴィジュアル系シンフォニック/メロディックスピードメタルバンド・摩天楼オペラの、前作『Human Dignity』以来3年ぶりとなるフルアルバム。フィジカル音源としてはミニアルバムの『Chronos』以来2年ぶり。

 

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2020年にギタリストのJaYさんが脱退し、その後のサポート期間を経てから、僕も足を運んだ15周年ライヴを境に新ギタリストとして優介さんが加入。再び5人体制となってから初の音源となります。

 

JaYさん脱退によりギタリストがサポートになった時期においても、大村孝佳さんを迎えた「儚く消える愛の讃歌」、そして優介さんがサポートの体で参加した「終わらぬ涙の海で」という、強烈なメロスピナンバーをリリースし活動を止めなかった彼ら。

 

そして上記した15周年ライヴで初披露された、本作のオープニングトラックである「真っ白な闇がすべてを塗り替えても」が、一度聴いただけですぐに素晴らしい名曲であることがわかっただけに、本作に対する期待値はかなり上がっていました。

 

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そして聴いてみて、その期待にしっかりと応えてくれた......どころか、大きく上回ってくれました。これは素晴らしい。まさに会心の出来と言っていい。

 

前回の『Chronos』の感想文の中で、「これが今の摩天楼オペラの作風なのだとしたらちょっと寂しい」みたいなこと書いたんですが、そんな僕の心境を知ってか知らずか(知るわけねー)本作で聴けるサウンドは、モダンな側面もありつつも、美しいメロディーセンスを柱とした流麗なメタルサウンド

 

透明感のあるキーボードと、かつての楽曲で多用されたクワイアによる装飾、演奏自体は非常にテクニカルにまとまりながら、主軸となるヴォーカルのメロディーはインスト以外の全ての曲で目立っている。この豪華絢爛さとメロディーの充実ぶりがまず嬉しい。

 

新加入となった優介さんによるギタープレイも、プログレメタルコアバンドで鍛えられた速弾きによる技巧はもちろん、メロディアスな泣きをも感じさせるリードの存在感もある。単純に音作りの面でも、かつてのAnziさんやJaYさんに比べて僕好みだということもあって、リフの聴きごたえも増している印象です。

 

新たな名曲となり得る前述のM1で華麗なスタートを切った後、そのテンションを落とさないよう、モダンなアグレッションを持つM2「零れ落ちていく未来」、M3「赤い糸は隠したまま」の二連チャンで前半の勢いを決定づける。こういった曲でも美しい歌メロが主軸になっているのがポイント。

 

そこからのM4「」が、これまた哀愁バリバリの歌メロが冴わたる、摩天楼オペラ流メロハーとも呼べるような曲。儚く狂おしいほど綺麗な歌が苑さんの声質にバッチリハマっているし、後半からエモーショナルなギターソロも素晴らしいです。

 

不穏で緊迫感あるイントロを持ったバラードM5「残された世界」、短いインストのM6「黒い海」という中盤二曲の存在で、しばし興奮を抑えてメロディーへ浸らせる。そこからシングル曲M7へシームレスに繋がって、弾けたように疾走する様もたまらない。

 

クワイアとブラストビートで幕を開け、徹底的に悲しみを演出した歌メロが光る、優介さん作曲のM8「悲しみは僕への罰」、そこから少し陽のムードを取り戻し、煌めくサウンドに心奪われるM9「流星の雨」、圧巻の完成度を誇る3拍子クサメロスピのM10と、クライマックスを彩っていく。

 

そしてラストに控えるM11「真実を知っていく物語」、これがまたアルバムを締めくくるに相応しい劇的なシンフォニックメタル。

 

従来のアルバムにはモダンなJ-ROCK風味を押し出したり、ノーマルなヴィジュアルロックっぽい曲もふんだんに取り入れたりと、必ずしもメタル然とはしていない楽曲も多かった印象でした。強いていうなら、PANTHEONシリーズは割とメロスピ的疾走感でまとめられていた感じでしょうか。

 

翻って本作においては、新体制になって気合いが入ったのか、「美しい歌メロを主軸としたメロディックメタル」という路線で統一感があります。それをどう評価するかは人それぞれでしょうが、僕としては好きな路線で焦点を絞ってくれているという感じで大変好印象です。

 

各楽曲はどれもこれも完成度が高く、さらに緩急をうまくつけたアルバムの構成もうまく、さらにさらに最初と最後にアルバムを代表するキラーチューンが収められていることで、聴き始めと聴き終わりの印象がグンと良くなると、全方位隙がない。

 

断言します。15年のバンド活動において本作は彼らの最高傑作です。いや、過去作全て聴いてきた訳ではないので、そんなおこがましいことは言えないんですが、それでもこう言いたくなってしまうんです。それほどの傑作です。

 

ちなみに本作は2枚組であり、2枚目のディスクは全曲のインストバージョン。各楽器の音がしっかり聴き取れる音源として良いのですが、あまりインストに興味を惹かれない者としては、1枚にして3000円台にしてほしかったというのが本音ではあるかも(笑)

 

 

個人的に本作は

"過去最高峰のまとまりの良さと、各曲のクオリティーの高さを実現してみせたバンド史上屈指の名盤"

という感じです。

 


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Sable Hills 『DUALITY』

 

新進気鋭の若手バンドが躍動している、国産メタルコアシーン。その中でも筆頭とも言えるほどに存在感を放つ頼もしきバンド・Sable Hillsの、前作『EMBERS』より3年ぶりとなる新作です。

 

まあ僕は前作をしっかりと聴いたのが割と最近なので、久しぶり感は全然無いのですが、以前より彼らに期待を寄せていた方々からすると、かなり期待値を高くしていたのではないでしょうか。

 

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バンドのスローガン(って言っていいのかな?)である"若者にはメタルを、年長者にはメタルコアを証明するサウンド"、そして以前THOUSAND EYESとのツーマンでのMCで言っていた"メロディックデスメタルから強い影響を受けたメタルコア"という言葉は、まさに彼らの音楽性をズバリ指し示すものだよなあ〜と思っていました。そして本作においても、その基本的な方向性にブレはありません。

 

メロデスライクなリードギターが唸るパートが多く、メタルコアとしてのアグレッションたっぷりのリフワーク、シャウト主体でありながら正統的なメタルの要素も強く感じさせる音。前作で提示してみせたスタイルを、正統進化させた潔いメタルアルバムに仕上がっています。

 

ついでに音とは関係ないところでいうと、正規メンバーはみんなメタルバンドらしいロン毛にこだわっている点も含めて、日本の若手バンドとしては珍しいくらいに、スタイルとしてのメタルらしさにこだわっていることが伺えます。頼もしい。

 

サビによるクリーンヴォーカルの質感、メロディーについては若干今風なキャッチーさがあるところが若手バンドらしいところかも。歌メロのフックはすごく強いって訳ではないのですが、シャウトオンリーではなく、メロディアスな部分が多く含まれることによって一本調子感が減退し、一曲の中でも良い塩梅で起伏が設けられていますね。

 

オープニングのM1「THE ENVY」や、Graupel・Earthists.とのスプリットEPにも収録されているM4「CRISIS」、先行シングルとなったM8「MESSIAH」といった曲は、メロウなリードギターと、メタリックなリフを武器とし、サビではメロディックに決める、Sable Hillsの王道とも言えるナンバー。こういった曲の完成度はやはり高い。

 

本作中特にヘヴィな質感の強いリフが冴わたるM6「SNAKE IN THE GRASS」に、ヘヴィ寄りの楽曲かと思ったら、一転してメロメロなリードギターが唸りを上げるM7「GLOOM(モダンな曲を作ろうとしたら、間違えてサビが激クサになっちゃったらしい)といった曲も存在感ありますね。

 

ラストを飾るM10「THE ETERNAL」のリードギターが、本作中一番わかりやすいキャッチーさに満ちていていいですね。漢のメタルコア路線はしっかりキープしながら、"爽やか"なんて形容すら当てはまってしまいそうな、爽快感あるメロウさが良い!

 

前作収録の「EMBERS」のような、頭ひとつ抜きん出たキラーチューンこそないけれど、全曲非常に安定したクオリティーを保った、良質なメロディックメタルコアがギッシリ詰まった快作。

 

しかし、前回記事で書いたEarthists.もそうですが、新世代のメタルコアバンドが良作を出してきて、対バンによるライヴシーンの盛り上がりもどんどん可視化されてきている現在。バンドマンには厳しいはずの昨今にも関わらず、国産メタルコアには「希望」なんて言葉すら似合いそうで、ラウドミュージックファンとしては楽しみが続きますね。

 

 

個人的に本作は

"前作で提示したメロディックメタルコア路線から正統進化。サビのクリーンの比重を増やしつつ、ヘヴィ&メロディックなギターの強みは健在"

という感じです。

 


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Earthists. 『Have a Good Cult』

  • 4年ぶり、4人体制初のフルアルバム
  • 過去作から類を見ないほど歌メロが充実
  • シャウトとヘヴィサウンドの攻撃性は健在

 

実にフィジカルリリースは4年ぶり。国産プログレッシヴ・メタルコアバンドEarthists.の3rdフルアルバム。

 

このバンドについては以前ブログでも書いた通り、個人的にちょっとしたつながりがある方が組んだバンドということで、アルバムデビュー前から動向を見ていたものです。

 

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しかし、残念ながらこのバンドを知るきっかけとなったYUTAさんは、2019年にバンドを脱退。それ以降は4人体制となってバンドを存続させ、デジタルによるシングルリリースとライヴ活動を主軸に展開していきました。

 

YUTAさんきっかけで応援してたバンドではあるものの、その人が抜けたからバイバイというのはなんだか薄情な気がしていたので、4人になってからもライヴを観に行く機会があったりと、何だかんだチェックはしており、ここにきてようやくのフルアルバムリリース。4年って、他のバンドもそのくらいリリース間隔が開くことはあると思うのですが、このバンドの場合は何だか長く感じたものです。

 

さて、そんな新作ですが、リリース前に先行シングルとして収録曲がちょくちょく小出しにされており、それらを聴いていた時点で、結構大きな期待感を寄せていました。

 

というのも、今回の楽曲は過去二作『DREAMSCAPE』『LIFEBINDER』と比べて、かなりメロディーが充実していると感じたんですね。先行配信された楽曲から、それが滲み出ていました。

 

ピアノやアンビエントっぽい浮遊感あるサウンドでメロウさを演出するのは過去作でもやっていたのですが、本作においては明らかに歌メロへの比重が大きくなっている。どこがサビに当たるのかハッキリとわかるような、盛り上がりのポイントがしっかりとヴォーカルによって演出されています。

 

あからさまなDjentっぽさ、モダンプログレメタルとしての複雑さは大きく減退していますね。よりオーソドックスなモダン・メタルコア/ポストハードコアへと接近した印象。

 

この方向性は、前作までの無機質寄り、ヘヴィさ重視プログレメタルコア路線を気に入っていた人にとっては、どう映るんでしょうかね?クリーンヴォーカルで歌われるパートも劇的に増えているので、「メロい路線に進みやがって!」なんて思っていたりするんでしょうか?

 

それと合わせて、ビル・エヴァンス上原ひろみさんのピアノから影響を受けたというYUTAさんが脱退した影響なのか、「Winterfell」や「FLUX」あたりにあった独自の空気感は無く、従来の個性はやや減退したような印象は確かにあります。

 

しかし抜群に聴きやすく、わかりやすくなった歌の存在感(クリーンもシャウトも説得力を増したヴォーカルの影響も大きい)は、これまでのアルバムになかった強み。それに狂気的なシャウトとヘヴィな演奏にはブレが無いため、「軟弱になった」「ヒヨッた」などという印象は全くない。普遍的なメロディックメタルコアとしての魅力をも付加した今のEarthists.の音楽性は、少なくとも僕は全力をもって肯定したい所存です。

 

オープニングトラックであるM1「Yours」を聴いた段階で、これまでの作品とは一味違うことがすぐわかりました。跳ね回るようなリズム感に、Earthists.らしいモダンさと透明感のバランス、圧倒的に歌心を増したヴォーカルパフォーマンスが映える1曲。本作の路線をわかりやすく象徴しています。

 

それに続くやたらポップで耳に馴染みやすいピアノの旋律、シャウトを用いながらもどキャッチーなメロに、勢い付いたバスドラ連打が特徴的なM2「Lost Grace」、よりエモコア的な爽やかさのあるメロディーがフックになったM3「Cure(この曲が一番好きかも)と来た段階で、本作の充実ぶりを確信しました。

 

Graupel、Sable Hills、Promptsという、現代の国産メタルコアシーンの若手代表格バンドから、フロントマンが一堂に介したM4「Skywalker」や、Djent直系のモダンなサウンドで攻め立てるナンバーとは一線を画する、完全にヴォーカル指向性を強めたモダン・エモコアM6「In Remnant (You just tell me now)」なども印象的な楽曲ですね。ちなみにM6はヴォーカルのYuiさんイチオシの曲らしい。

 

 

こんな感じで、とにかく本作は過去作とは別レベルで、メロディアスな方面への進化が素晴らしい1枚。メロディー重視のリスナーとしては、エモ的な激情をしっかり溶け込ませた本作は、3枚のフルアルバムの中で一番印象が良いです。購入してからガンガンリピートしてます。

 

あえてこの路線で気になる点を挙げるとするなら、Aメロにあたる部分ではヘヴィさを排したサウンドで、ヴォーカルもクリーンで淡々とし、そこからヘヴィなバンドサウンドを導入、そしてメロウなヴォーカルラインを持ったサビへ...というように、やや展開が似通った楽曲が多く感じられるところかな?

 

ただそれは、言ってしまえばスタイルの確立みたいなもので、実際このパターンでフックに満ちた楽曲を多数生み出せているのも事実。雑多になればいいってもんでもないし、マイナスにはならないはず。これが現在のEarthists.の黄金パターンなのかも。

 

 

個人的に本作は

"圧倒的にメロディーの要素を増強させたモダン・エモメタルコア。歌による叙情性は間違いなく過去イチ"

という感じです。

 


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CRISIX 『Full HD』

 

三作続けてスラッシュメタルの新作について取り上げます。

 

2019年のJAPANESE ASSAULT FESTでのライヴが素晴らしかった、スペイン産スラッシャー・CRISIXの5thフルアルバム。

 

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前回のDESTRUCTIONと似たようなこと書きますが、「これぞスラッシュメタルだ!」と言いたくなるほどピュアなもの。デスヴォイスばりに歪ませたヒステリックなシャウトに、切れ味抜群の研ぎ澄まされたリフに次ぐリフ。大半が疾走チューンで占められた潔いアルバム構成は、スラッシュメタルの王道をひた走るもの。

 

ただ本作は(本作に限らず彼らのスタイル全般に言えることかもしれませんが)、DESTRUCTIONで感じられたメタルらしい邪悪さ、ダーティーなムードは薄めで、ANTHRAXやGAMA BOMBあたりに通じる、溌剌としたイキの良さ、ハイエナジーっぷりが際立つ。

 

スラッシュメタルが含む成分のうち、パンク・ハードコアの割合が高くなっているのも特徴で、パンク的なシンガロングがふんだんに用いられ、ハードコアらしいアグレッション重視の作風が一貫している。ベースがバキバキとヘヴィに歪んでいる点も、その印象を強めている感じですね。

 

これらのことから、メタルらしいヘッドバンギングよりも、パンクらしいモッシュ、サークル、クラウドサーフといったノリの方が似合うような気がします。とにかく全編にわたってヤンチャなアグレッションがすごい。聴いてて力入ります。

 

そういった印象はバンド側も自覚的なのか、何せ収録されている曲名にも"Wolrd Needs Mosh"なんてワードがあしらわれているし、タイトルトラックM3「Full HD」の歌詞なんかは、完全にパンク的で痛快。

 

さらにM9「W.N.M. United」の歌詞なんか凄いですよ。

 

法律を制定する連中

テレビに出てる脳たりんども

店にいる貴婦人たち

ヤツらは今 この世界に何が必要かを知る

 

それはモッシュ

それはモッシュ

すごいモッシュ

 

今 この世界に必要なものはモッシュ

 

最っっっっっっっっ高

 

なかなか難しいご時世ではありますが、いずれは是非とも血の気の多いスラッシャーの皆さんと、この曲を爆音でかけてモッシュの波を作りたいもんです。

 

さらにさらに、M9「Shōnen Fist」は、彼らが愛してやまない日本のアニメ・マンガをモチーフにしたワードや、日本語によるシンガロングがわんさか詰め込まれた曲で、日本人としては反応しないわけにはいかない。

 

"か〜め〜は〜め〜波ーーーーっ!!"のインパクトはもちろんながら、"やれやれだぜ" "霊丸" "ペガサス流星拳"など、所々にクスリとできるフレーズが盛り込まれ(普通に聴いていたらなかなか気づきにくいかも)、"イイカゲンニシロ! フザケンジャネエヨ!キサマ!"は共に叫びたくなること請け合い。"獅子咆哮弾"なんて超久々に聞いたよ(笑)

 

そんなすんばらしい歌詞を持つ楽曲を収録した本作、楽曲面においては上記した通り溌剌したエナジー大爆発のスラッシュメタルで、スラッシャーならば有無を言わさずに満足させられる楽曲の宝庫。これぞというキラーチューンは不在ながら、一本芯の通った、ピュアスラッシュを最初から最後まで堪能できます。

 

個人的には「Johnny B. Goode」をオマージュしたと思しきフレーズが登場するM7「John Was Born For Metal」から、前述のM8、M9と続く流れが一番のハイライトかな。

 

しかし今年はKREATORとDESTRUCTIONに、TYMOなんて若手有望株も日本デビュー、さらにはこの後MEGADETHの新作も出るわけですよね?2022年はスラッシュメタルファン歓喜の年になるのかも?

 

 

個人的に本作は

"ダークな要素を削ぎ、ハードコア的な爆発力を重視したイキの良さ満載のスラッシュ。アツい歌詞と合わせてモッシュ誘発"

という感じです。

 


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DESTRUCTION 『Diabolical』

 

KREATORの新作について書いたのだから、やはり同年に発表された、同じくジャーマンスラッシュの代表格についても書かなくちゃ、と思い立って本作の感想を書きます。

 

KREATOR・SODOMと共に、ジャーマンスラッシュトリオの一角として、40年近く活動してきている大ベテラン、DESTRUCTIONの新作です。

 

実を言うと僕はこのバンドの過去音源についてはほとんど聴いてきておらず、過去作の比較がどうとか、あまり偉そうなことは言えないのです。

 

そのため、本作はバンド創設時からギタリストをずっと続けてきたマイク・ジフリンガーが脱退し、新たにマーティン・フュリアなるギタリストを加入させて、心機一転を図った作品なのですが、僕にとってはアルバムをガッツリ聴き込むのは本作がほぼ初めて。どこがどのように変化したのか感じることはできず...。まあ折を見て過去の代表作も色々掘り下げてみるとします。

 

さて、そんな大きなメンバーチェンジを経て生まれた本作ですが、内容として潔いまでにダーティーでアグレッシヴなスラッシュメタル。スピードナンバーを多めに配し、切れ味鋭いリフが支配的。噛み付くように叫び、時折ひっくり返りそうになるハイトーンを披露するヴォーカルも相まって、「これぞスラッシュメタル!」と言い切りたくなる快作。

 

川嶋未来さんのライナーによると、本作は過去作に比べて正統的なヘヴィメタル色が強くなり、シンプルでストレートな作りになっているとのこと。プログレッシヴな音を好むマイクが脱退したことで、ヴォーカルであるシュミーアの意向が反映されやすくなった結果らしい。

 

このブログでも何度か書いてますが、基本的に僕はプログレッシヴメタルは苦手で、わかりやすくストレートな音作りを好むリスナー。もしライナー通りの結果により本作が生まれたとするなら、前任のマイクがいる体制を好むオールドファンには申し訳ない言い方になるものの、より僕好みのスタンスになってくれてありがたい。

 

スラッシュメタルの命であるリフがどこを切っても強靭であり、ツインギターの強みを活かし、二つの旋律(というにはかなりアグレッシヴですが)が絡み合うギターソロも導入されていて、聴いていて自然と頭を振りたくなってしまう音。

 

ロディアスだったりドラマチックだったりといった要素は薄いため(一部のギターソロなどに少し含まれる程度)、個人的にはちょっと単調な印象が無きにしも非ず。ただ、それは言い換えればピュアスラッシュを徹底していると言うことで、KREATORがメロディックすぎると感じる、根っからのスラッシャーの方は本作の方が気に入るかもしれません。

 

ほとんどが疾走チューンで構成されている痛快な出来ですが、その中に混じるM4「Repent Your Sins」や、M8「Tormented Soul」のような、グルーヴィーと形容できそうなヘヴィリフで押し進む、ミドルチューンの出来も良い。やっぱりリフがザクザクして聴きごたえがあるからなんでしょうね。疾走曲以外はイマイチという結果に陥っていないのは高ポイント。M10「The Lonely Wolf」のゴリゴリなリフの気持ち良さも素晴らしいです。

 

疾走チューンにハズレはなく、どの曲もゾクゾクとした高揚感に満ちていますが、特にM3「No Faith In Humanity」と、M9「Servant Of The Beast」はキラーと言っていいですね!前者はスラッシーなリフさばきは言わずもがなですが、中盤のツインギターの見事なギターソロに酔わされます。後者はイントロの高速ノコギリのようなリフから期待値が高まり、サビ(と言っていいのかな?)直前のブリッジにおける、ドラムとリフの交錯がメチャクチャにカッコいい。

 

ラストのM13「City Baby Attacked By Rats」は、ハードコアパンクバンド・G.B.H.の同名曲のカバー。元々スラッシュメタルがハードコアの系譜に位置する音楽だから当然っちゃ当然ですが、何ら違和感の無いアレンジで良き。まあ曲が曲だけに、メタルというよりかはハードコア的なアグレッションが目立ちますが。

 

 

個人的に本作は

"スピード感あふれるリフと、微メロディアスなツインギターソロを武器とし、徹底的にスラッシュメタルを貫き通した痛快作"

という感じです。

 


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KREATOR 『Hate Über Alles』

  • 衝撃的メンバーチェンジから初のフルアルバム
  • 従来作よりテンポを落としメロウさに磨きをかけた
  • 疾走曲のクオリティーは言うことなし!最強!

 

ついに出ました、ドイツが誇るスラッシュメタルの帝王・KREATORの5年ぶりの最新作。

 

スラッシュメタルの帝王はSLAYERじゃないか、と言われるかもしれませんが、個人的にはKREATORはそんなSLAYERとも並び称される帝王のポジションにいると思っています。

 

凄まじい快作であった前作『Gods Of Violence』から、ベーシストのクリスチャン・ギースラーが脱退し、後任としてDragonForceのフレデリク・ルクレークが加入、それもDragonForceの新作が発表される直前という、衝撃的な交代劇も記憶に新しいところ。

 

日本でメロディックメタルのファンをやっていたら、どうしても「フレデリク = DragonForceのベース」というイメージが強くて、彼がKREATORのMVに映っているのはどうも違和感が拭えないな〜...。

 

そんなメンバー交代を挟んでの本作ですが、方向性としては前作以前とほとんど変化はなし。KREATORらしい凶悪ながらメロディアス、ドラマチック・スラッシュメタルには寸分の狂いもありません。

 

ただ本作中、爆速スピードで突っ走る疾走チューンはさほど多くなく(前作も疾走しっぱなしのアルバムではなかったけど)、中盤から後半にかけてはややテンポを落として、メロディアスなアプローチを強めた曲がメインを張る。

 

基本的に僕は「スラッシュメタルは速くてナンボ」なクチなので(だいたいみんなそうでしょ?)、もう少しチョッパヤな曲を置いても良かったかな。とはいえ、スラッシュの生命線であるスピードを殺したところで、まったく邪悪なオーラが衰えないミレ・ペトロッツァのヴォーカル、サミ・ウリ=シルニヨの叙情性満載のリードギターにより、決して腑抜けた捨て曲なんか生み出さない手腕はさすが。

 

邪悪な疾走ビートと、堂々たるメロディックなミドルテンポを交錯させたM7「Conquer And Destroy」、細かく刻まれるリフの切れ味に、どこか神秘的な歌メロが魅力のM8「Midnight Sun」は、女性ヴォーカルが歌い上げる瞬間もあり、彼らのメロディアスな側面において新たな魅力を生み出しています。特に前者のサビなんかはハイライトたりえる場面です。

 

リフとリードのコンビネーションが絶妙で、ザクザクのリフに溺れながらメロディーを堪能できるM5「Strongest Of The Strong」、ズンズンと力強く叩きつけるドラムに、緊迫感を増して唸りを上げるギターが気持ちよく、後半で聴けるドラマチックな哀愁のリードギターが感動的なM10「Pride Comes Before The Fall」など、ミドル曲はどれこもこれも粒ぞろいで飽きさせない。

 

不満をしいて挙げるとするなら、クライマックスの楽曲であるM11「Dying Planet」が、前作の「Death Becomes My Light」ほどの美しさを演出する曲ではなかったので、聴き終えたあとの印象の良さは前作に分があるかな?というところか。

 

そして疾走曲については、もはや何も言うまい。あまりの高揚感に打ち震えるばかりですよ。M2「Hate Über Alles」は、現在のKREATORというバンドに求めるものすべてが詰め込まれた、本作を代表するキラーチューン。そこからノンストップで続くM3「Killer Of Jesus」も負けず劣らずのドラマチック・スラッシュで最高。リフのカッコよさがエゲツないレベルまで磨かれています。

 

もはやスラッシュメタルというフィールドにおいて、彼らほどの境地に達しているバンドは(少なくとも2022年現在では)他にいないんじゃないでしょうか。邪悪さも攻撃性も保ったまま、ここまでメロディアスな音楽として聴かせるバランス感覚、もはやシーン随一でしょう。

 

5年の期間が空いて、メンバーが交代したとしても、KREATORという存在がブレることはない。そんなことを確信させてくれる1枚。名盤です。

 

 

個人的に本作は

"全体的な疾走感はやや減退するも、スラッシュらしい邪悪な攻撃性を落とさず、極限までメロディーに磨きをかけたドラマチック・スラッシュメタル"

という感じです。

 


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