ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

人間椅子 『苦楽』

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  • 人生における苦しみと、それを超えた先の幸福を表現
  • 重厚なリフとギターソロで魅了する鉄板ハードロック
  • どこか楽しげで真似したくなるコーラスもバッチリ

 

30年以上のキャリアを持つ大ベテランでありながら、今が人気の最盛期と言える稀有なハードロックバンド・人間椅子の最新作。ベテランになればなるほど新作リリースのペースが落ちるのを尻目に、前作『新青年』より2年のスパンと、相変わらずのコンスタントな制作ペースはさすがとしかいえません。

 

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本作は"苦と楽は表裏一体" "苦しみがあってこそ楽が輝き、幸せを感じる"という和嶋さんの言葉をコンセプトにした作品で、アルバムの最初と最後を飾るM1「杜子春」、M13「夜明け前」が、そのコンセプトの核となっているように感じます。

 

"生きるも地獄 死ぬるも地獄"と現代の人生における哀しみや苦しみを歌い、最後には"明けない闇夜はない 覚めない悪夢はない"と希望を抱かせるフレーズを駆使した楽曲で締める。混迷を極める現代において、こういった構成で聴かせる作品にはグッときますね。GALNERYUSの最新作も、こんな風に闇から光へ!って感じでしたね。

 

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ただアルバム自体は別に大仰なコンセプトアルバムなどではなく、従来通りの人間椅子らしいハードロックサウンドが展開されている。これまでの作品が気に入っている人であれば、何の心配も文句もない作品でしょう。

 

プログレッシヴロックからの影響を感じさせつつ、ハードロックらしさ極まる重厚なリフとソロ、日本的な不気味さ、不穏さ、おどろおどろしさを表現した曲展開とヴォーカルワーク、そんな中にもどこかユーモラスで楽しげなコーラスを織り交ぜたユニークなサウンドは全く不変。

 

"ヨーソロー!"とか、"用意ドーン!"とか、"ジンタッタ♪ジンタッタ♪"とか、真似してみたくなるようなフレーズがそこかしこで聴け、こういう親しみやすさをバンドコンセプトを崩さない範囲でバンバン入れられるのは、間違いないく彼らの強みだと思います。

 

70分を超える長大なアルバムであり、決して聴きやすいというジャンルの音楽ではないにもかかわらず、小難しさを感じさせずにしっかり聴き通させる造りは相変わらずで、これこそベテランが為せる職人技なのでしょうね。

 

前述のM1は、ハードかつキャッチーなギターリフが先導して進み、唐突に挟まれる異常にカッコいい疾走パートに荒れ狂うギターソロ、ラストには視界が開けたかのようなポップなマーチのリズムで締められる、曲展開の巧みさが活かされた7分半の大作。

 

やたらポップでノリの良いリズムとヴォーカルが聴けるにも関わらず、歌詞は完全にディストピアなM5「人間ロボット」、和嶋さんのバイク趣味が全開になった歌詞に、テーマに相応しいハード&ドライヴィンなサウンドが心地よいM7「疾れGT」、どこか昭和のアニメ、特撮のテーマを思わせる明朗なメロディーと、中盤のトリッキーなリフさばきにギターソロがメチャクチャ気持ちいいM9「悩みをつき抜けて歓喜に至れ」、ナカジマノブ兄貴の雄々しい歌唱に聴き惚れるM11「至上の唇」など、人間椅子らしい魅力あふれる個性的なナンバーが目白押し。

 

ラストのM13も、アルバムを締め括るにふさわしい名曲ですね。神秘的なクリーンギターのフレーズに、徐々にせり上がってくるようなけたたましいいドラム、堂々たる歌唱で苦しみを耐え抜いた先にある希望を歌い上げる。タイトル通り闇が晴れ、光が見えてくるような情景を見事に想起させてくれるんだな。

 

欲を言えば前作収録の超名曲「無情のスキャット」ほどのインパクトを持った楽曲が欲しかったというのがありますが(しいて挙げるならばM13)、まああのクラスの楽曲をポンポン量産できたらそれこそ異常ですし、さすがにそれは贅沢な物言いですかね。

 

なんにせよ、本作が人間椅子らしさを完璧に体現した、怖くも楽しいハードロックの名作であることに間違いはないです。

 

あと本作は1曲を除いて和嶋さんが作詞を担当していますが、ベースの鈴木さんが作詞をしている曲はブックレットを全く見なくても、聴いたら一発でわかりました(笑)

 

 

個人的に本作は

"ハードでおどろおどろしくも、どこかユーモラスで聴きやすい、安心安定の人間椅子流ハードロック"

という感じです。

 


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Hawaiian6 『The Grails』

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  • RYOSUKEさんが参加した唯一の単独音源
  • 明るめの楽曲が多く哀愁度は薄れた
  • 悪くないけど激情が足りない...

 

こんなブログをわざわざ見に来てくれる方なら、もう知ってると思いますが、東京都内でも有数の大きさを誇る有名デカバコ、STUDIO COASTが、来年1月をもって営業終了となります。

 

natalie.mu

 

札幌在住の高校時代は、数々のバンドたちがツアーファイナルを行うための会場として活躍しているのを知り、いつかは行ってみたいと思わせてくれる場所でした。

 

そして大学進学のために関東へ越してからは、かなり頻繁に足を運びましたね。国内バンドのライヴが特に多く、dustboxのライヴでモッシュにまみれるも、高校の頃から著しく低下した体力に軽くショックを受けたり、DIR EN GREYのワンマンに行って、普段のライヴとはまるで違うオーディエンスのノリに困惑したり、CRYSTAL LAKEのステージダイヴに巻き込まれてしばらく口内炎ができたり、GALNERYUSの「ANGEL OF SALVATION」の合唱で大感動したり。

 

この規模の会場になると海外アーティストのライヴにはあまり恵まれませんでしたが、BULLET FOR MY VALENTINEが期待していた過去のキラーチューンを全然やってくれず、さらにマットが体調不良で離脱してしまった事があったかと思えば、HELLOWEENの超キラー「Before The War」を生で聴ける機会に恵まれるなど、かなり印象強いライヴが観られました。

 

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とにかく東京の大会場といえばゼップよりもコースト、というイメージが植え付けられるほど、僕にとって身近なライヴ会場。そんなハコがあと半年で終了するとは……寂しいものですなあ。

 

そんな思い出深い会場コースト、僕が初めてそこに足を踏み入れたのが、ここで取り上げるHawaiian6のミニアルバム『The Grails』のレコ発ツアーファイナルでした。2013年の4月という事で、僕が大学生になったばっかですよ。関東に来て初めて観たライヴです。正直8年も前のことなので詳しく内容は覚えてないんですが...

 

さて、本作はHawaiian6結成からベース、そして張り上げるような高音コーラスでバンドの個性を演出してきたTORUさんが脱退してから初の音源。新たにベーシストとしてFUCK YOU HEROESのベース、STEP UP RECORDSの社長でもあるRYOSUKEさんが加入して作成されました(現在は脱退済み)

 

Hawaiian6といえば、聴いたことある方は嫌というほどご存知でしょうが、何と言ってもそのメロディーこそが最大の魅力。強烈な哀しみに満ちた激泣きのメロを垂れ流し、荒々しい演奏と共に爆走するのがたまらないのです。

 

本作もその基本線は守っているのですが......正直に言うとちょっと物足りない出来。

 

全体的にやや明るめのフィーリングが強くなっており、泣きの哀愁ナンバーはM1「Rats On The Run」とM2「The Electric Wizards and the Lonely Humming Bird」の2曲のみとなっており、あとはややポップな色を濃くした楽曲で構成されている。

 

もちろんM4「No Lights」やM5「Today」は、明るめでも非常にエモ的な切なさを含んだ良質なメロディーを聴かせてくれる楽曲でその点はありがたいのですが、やっぱりHawaiian6といえば暗く哀しい美旋律を期待しちゃいますよねぇ?ねぇ!?

 

また、過去作と比べて音質がマイルドというか、硬質な印象が薄れて丸くなった印象があり、この点が個人的に残念なポイント。最大の武器はメロディーとはいえ、あの尖りまくりの歪みを効かせたギターでリフを掻き鳴らし、乱暴に突っ込んでいくガムシャラさも胸を締め付ける叙情性に貢献していたので、それがマイルドになってしまうのはマイナスポイントにしかならないかなぁ...

 

本作を聴いた後に、一つ前のミニアルバムである『RINGS』を聴いてみたのですが、やはり「The Betrayer」「Shadows Of The Sun」のような曲からは、腹の底からグワっと熱くなる"激情"があり、「Star Falls On Our Hands Tonight」のようなポップナンバーにもこれぞという名曲感がありました。その点本作はちと弱いかな。

 

まあそれでも過去作との比較を気にしなければ、メロディーの質自体はしっかりと担保されているのは事実。前述したM1、M2のメロディーラインの哀愁感はさすがですし、リードトラックM5のサビは優しく切なく胸を打つ旋律が心地よい。

 

なお2013年には早々に脱退してしまったRYOSUKEさんは、Hawaiian6名義で出した音源では本作のみの参加で(dustboxlocofrankとのスプリットには参加)、まあベース、コーラスとしては可もなく不可もなしな印象。やはりTORUさんのインパクトは大きかったんだなと思わされます。

 

 

個人的に本作は

"メンバーチェンジ後もスタンスは変わらず。でも哀愁とガムシャラ感はやや弱め"

という感じです。

 


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At The Gates 『The Nightmare Of Being』

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  • 希望の見えない美醜の旋律
  • 疾走曲によるリフの慟哭は相変わらず最高峰
  • デスラッシュに収まらない要素をどう捉えるか

 

魂の慟哭リフを弾かせたら世界でもトップクラス、メロディックデスラッシュの代表的存在であるAt The Gatesの最新作。前作『To Drink From The Night Itself』より、約3年ぶりとなるフルアルバムです。

 

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再結成を果たしてから3作目ということで、ここ直近2作は「これこそ慟哭のデスラッシュ!」と声を大にして叫べる、悲壮感に満ちた名盤でした。ひたすらに鬱屈とした嘆きが支配的な泣きのアルバムです。

 

もちろん本作においてもその方向性は一貫してブレることはなく、トーマス・リンドバーグのしわがれたデスヴォイスは、相変わらず泣きの表現力がピカイチだし、ヒリヒリした緊張感とともに刻まれるリフはまさにイエテボリサウンド、At The Gates節と呼べるもの。

 

静かなイントロから悲壮美満載のド迫力のギターで幕を開け、従来と何も変わらぬ慟哭リフでの疾走、あまりに哀しく美しいギターソロで琴線を掻きむしるM1「Spectre Of Extinction」、ミドルテンポでも泣きの旋律を失わないリフ、バックで繊細さを醸し出すアコギが絡み、静と動のコントラストも鮮やかなM2「The Paradox」、ずっしり重たい展開で、低音が効いたベースと胡散臭いクリーンギターで鬱々した空気を見事に表現するM3「The Nightmare Of Being」という出だしで、今までと変わらないAt The Gatesならではの美醜が堪能できる。

 

しかしその後からは、At The Gatesらしさはキープしつつも、ちょっと様子が違ってきます。M4「Garden Of Cyrus」は直前のM3と同様にスローで気だるく進む楽曲ですが、そこに大胆にもホーンセクションを導入。最初聴いた時は「At The Gatesがホーン!?」とちょっと面食らいました(もちろんパッパラパー♪な能天気さは微塵もなく、悲壮感を際立たせるメロディーラインを吹いている)

 

さらにM6「The Fall Into Time」はギターと同じくらいにストリングスも目立っていると言ってもいい大作。ストリングスを取り入れた大作は、前作にも「The Mirror Black」という名曲がありましたが、途中のベースとドラムのリズム隊がリードする静かなパートは新鮮。

 

M9「Cosmic Pessimism」もベースが主役を張り、つぶやくようなヴォーカルとともに浮遊感あるサウンドで引っ張っていくもの。ラストのM10「Eternal Winter Of Reason」もミドルチューンで、切れ味鋭いリフ以上にリードギターによる旋律が耳を引きやすい。そんなこんなでデスラッシュとは趣を異にする瞬間が多い。

 

正直彼らにはテンポの速い遅いの違いはあれども、叙情性満載の悲痛なリフでガシガシ進む冷徹なデスラッシュを求めていたので、今回のややトリッキーな作風は少し期待を外された感があるかな〜...。過去2作と比べると、サウンドから得られる興奮、痛快さは及ばないと言わざるを得ない。

 

ライナーノーツでは本作の方向性をして「さらなる前進」と表現していますが、僕としては「思ってたのと違った」という印象の方が強くなってしまったかな。

 

しかし、たとえどんな要素を取り入れたとしても、At The Gatesらしさ、すなわち鬱屈とした希望の光の見えない泣き、これに関しては全く変化していないのはさすが。これまでの作品が気に入っている人であれば、なんだかんだ一定以上の満足感は得られるはずかと。

 

 

個人的に本作は

"やや毛色の異なる要素も貪欲に取り入れた、良くも悪くも意欲作。デスラッシュらしい突進力は控えめだけど、慟哭っぷりは変わらず冴えてる"

という感じです。

 


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POWERWOLF 『Call Of The Wild』

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  • 従来作と何も変わらぬ世界観
  • パワーメタル的な勢いはいつにも増して控えめ
  • タイトルトラックの爆発力は要注目!

 

宗教風のムードとクワイアによる豪華なサウンドコープスペイントを施し、見た目のインパクトも抜群な、ドイツのメロディックパワーメタルバンド・POWERWOLFの最新作。ベストアルバムのリリースも挟んでいますが、フルアルバムとしては前作『The Sacrament Of Sin』以来2年ぶり。

 

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前作は彼ら特有の濃厚で重厚、荘厳な雰囲気をまとった良質のパワーメタルとなっていましたが、本作もその方向性が一切ブレることなく、これまでのPOWERWOLF流メタルを踏襲する形になっています。

 

パワーメタルにありがちなハイトーンタイプではなく、低音主体のヴォーカルワークに、オルガンとクワイアにより宗教風というか、シアトリカルなムードをこれ以上なく強めた演奏、そこに織り交ぜられる耳に残りやすいキャッチーなメロディーと、過去作から何一つ変わらない安定の内容。

 

この神聖なムードというのは、宗教というものにどちらかというとネガティヴなイメージを持ちやすい日本人にとってはとっつきづらくなりそうですが、しっかりと聴ける良質なヘヴィメタルへと昇華されているのは、やはりわかりやすいキャッチーさがどの曲にも配されているからなのかも。全11曲、トータルで40分ほどという長さも、濃密な割に聴き疲れを起こさないように作用しています。

 

ただ本作はスロー〜ミドルテンポの楽曲がアルバム中盤に固まっている構成のため、パワーメタルに疾走感を求めている層(僕もそうです)にとっては、ちょっとインパクトに欠ける印象をもたらしてしまうかな。良くも悪くも勢いに頼らず聴かせるタイプの曲が集中している。

 

荘厳な雰囲気をキープしつつ、ヘッドバンギングを促すノリの良さを持ったM3「Dancing With The Dead」、哀愁に満ちたヴォーカルメロディーとギターソロを持つバラードM5「Alive Or Undead」、どこかトラッド/フォーク的なアレンジを特徴としたM6「Blood For Blood (Faoladh)」など、聴きどころをしっかりと持ったばかりの楽曲に仕上げているのはさすがで、テンションがダウンするようなことはありませんが。

 

しかし、そんなミドル中心の流れが続く後半、待ってましたと言わんばかりに本作随一のキラーチューンM8「Call Of The Wild」が出てくるところが、アルバム構成のうまいところ!イントロのキャッチーなギターの音色から早速リスナーの心を掴み、そのままアップテンポなAメロへと展開、堂々たるヴォーカルと一層の盛り上がりを見せるバッキングで、爆発力を演出するサビが最高にカッコいい。メロディー重視のギターソロも、その後のシンガロングパートもたまらん!文句なしに本作のハイライトとなる名曲!

 

それに続くM9「Sermon Of Sword」も、タイトルトラックに負けず劣らずの勢いを持ち、それでいて耳に残るキャッチーさを残した名曲ですね。分厚いクワイアと共に歌い上げるサビの力強さがイイ!美しく逞しいギターソロの存在もあり、神聖さを保ったまま見事にパワフルなメタルチューンに仕上がっています。

 

その後に続くM10「Undress To Confess」、M11「Reverent Of Rats」の2曲が、クライマックスを彩るにしてはやや普通な印象を抱かせる曲なのは、ちょっとマイナスポイントかな。もちろんつまらない捨て曲などでは決してありませんが、その前のM8〜M9の流れが強烈なだけに。

 

前作と比べると、相対的にややパワフルな印象は控えめに映ってしまいましたが、さすがはパワーメタル大国ドイツのチャートでNo.1を取ったバンドなだけに、楽曲はどれもハイクオリティー。楽曲の方向性は何ら変わっていないので、過去作が気に入っていた人なら同様に楽しめるはず。

 

 

個人的に本作は

"従来作通りのPOWERWOLF流メタルサウンドに変化なし。勢いの減退とクライマックスのトーンダウンだけやや惜しい"

という感じです。

 


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Northern19 『GOODBYE CRUEL WORLD』

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  • 前作に比べて哀愁寄り
  • ノーザンらしい疾走感と切ないヴォーカルが気持ちいい
  • 哀愁バリバリの熱き疾走キラー有り

 

メンバーチェンジ後初の音源となった前作シングル『YES』発表から、1年を挟んでリリースされた最新作。

 

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まだまだミュージシャンにとって厳しい日々が続く中、こうやってコンスタントに新作を作ってくれる彼らには頭が下がりますね。インディーズの4曲入りシングルが1400円超と、CDの値段が高騰していることを実感させられますが(泣)、積極的に活動してくれるバンドにちゃんとお金が入るよう購入させてもらいました。

 

本作もまた4曲入りで10分ちょいというコンパクトな音源。軽快な疾走感とハードな演奏の相乗効果もあり、聴きやすさは最高。ちょっと時間が空いたときとかにサッと聴くのに重宝します。

 

前作が弾ける躍動感、ホープフルな魅力を持った作風であったのに対し、本作はどことなく陰りのある感じ。ポップではあるんですが全体的にしっとりした哀愁寄り。

 

哀愁を効かせた疾走メロコアは大好きなのですが、前作にあった「NOTHING BUT MY HEART」のような"陽"のイメージを描きつつ、メロディアスに疾走するスタンダードなメロコアチューンがないのは少し寂しい。

 

とはいえ楽曲のクオリティーはもちろん申し分なし。クリーンギターによるイントロからブラストビートへと繋がり、エモコア的な落ち着きのヴォーカルで疾走するM1「MOVE ON」は、大人なノーザンの王道ソング。ブラストと共にギターもギャンギャンかき鳴らされるのですが、刺々しいムードはまったくなく、非常になめらかにメロディーが伝わる。

 

そしてM2「STILL ALIVE」、これは文句なしのキラーチューンですね!Hawaiian6を彷彿させるマイナーキーの歌メロに、土臭く、熱く、哀愁をまといながら力強く疾走するサビが痺れるほどカッコいい。泣きながら全力疾走してるかのような激情が味わえる!

 

M3「RECALL」は少しポップさを押し出したミドルナンバーで、彼ららしい青臭さの中に光る歌メロが魅力的。本作中最もおとなしい部類の楽曲ではありますが、ギターソロは一番気合が入っており、短い中にピロピロした速弾きとツインリードをブチ込んでいて大きな聴きどころになっていますね。

 

M4「NEVER FORGET, SUMMER '20」は、疾走しつつもバックのアコギや張り上げないヴォーカルから、メロコアらしい勢いはそこまで感じず、どちらかといえばメロウさ重視の曲。タイトルどおり夏の終わりをイメージさせるような歌メロと、後半のクリーンなコーラスが非常に切なくて気持ちいい。

 

前作に引き続き、彼らのメロコアバンドとしての確かな地力を感じさせる良作でした。特に「STILL ALIVE」は今年の国産メロコアのアンセムになり得るかも。メッチャ良いです。

 

 

個人的に本作は

"ノーザンらしい哀愁路線を強調した楽曲集。哀しく力強いキラーチューンがメチャ熱い"

という感じです。

 


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リードトラックももちろん良いですが、哀愁メロコア好きはぜひ「STILL ALIVE」を聴いてくれい。

EDU FALASCHI 『Vera Cruz』

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  • ANGRAらしさ満載の豪華絢爛パワーメタル・アルバム
  • 疾走チューンの完成度の高さ、高揚感は絶大
  • バラードやお得意のラテン/トライバル風味もバッチリ

 

エドゥ・ファラスキといえば、ヘヴィメタルファンならご存知の通り、アンドレ・マトスという実力派ヴォーカルを失ったブラジル出身のメロディックパワーメタルバンド・ ANGRAに新ヴォーカルとして加入したことで、バンドの再生の立役者となった人物です。

 

そんな新生ANGRAが発表した『Rebirth』『Temple Of Shadows』、メロディックパワーメタルの名盤としてもちろん僕も聴いています。加入後初のアルバムとなった『Rebirth』については以前ブログで取り上げました。

 

ただ僕は彼が在籍していた頃のANGRAは生で観たことがないのですが、どうやら難易度の高いANGRAの曲をライヴで歌い続けてきたためか、相当に喉のコンディションを悪くしていたようで、ライヴでのヴォーカルパフォーマンスはもっぱら微妙な評価の嵐。結局その悪評を覆すことはできぬまま、ANGRAを脱退する形となりました。

 

その後は2016年まで同じくブラジルのパワーメタルバンドであるALMAHで活動し、バンド解散後はソロキャリアをスタート、ANGRAのかつての名曲を歌う企画ライヴなどを行っていたようです(Evoken de Valhall Productionの招聘で来日したこともあるっぽい)

 

そんな音楽活動を続けていき、ANGRAのカバー集やEPの発表を挟んで、いよいよ満を辞して(って言うほどでもないか)ソロプロジェクトとしてのフルアルバムが今年リリースされました。

 

バンドメンバーはドラムのアキレス・プリースターや、ギターのディオゴ・マフラ、ベースのラファエル・ダグラスなど、ANGRAやALMAHで活動を共にしたメンバーが中心の様子。他メンバーもANGRAとALMAHのライヴで演奏してきた人たちで構成されているらしく、結構身内感が強い編成。

 

そして音楽性に関してなんですが、これが元ANGRAという経歴に期待されるドラマチックメロパワそのものでちょっとビックリ。喉の調子がアレとのことで、さほど期待をかけていたというわけではなかったのですが、これはいい意味で期待を裏切ってくれました。

 

かつてのANGRAの名盤である『Temple Of Shadows』に匹敵する...というとちょっと言い過ぎかもですが、格式高い印象を抱かせるプログレッシヴなサウンドに、民族音楽のような神秘的な音色感、スピーディーでドラマチックなメロパワチューンの存在は、まさにANGRAの系譜に位置するもの。

 

懸念されていたエドゥのヴォーカルですが、ハイトーンはあまり多用せず(ないわけではない)、明朗に堂々と歌い上げるスタイルを徹底しているのが功を奏したのか、評判で言われているようなヴォーカル面での不足は無し。劇的パワーメタルから雄大なバラードまで、説得力ある歌い回しを披露してくれています。

 

非常にテクニカルな速弾きを随所に披露しスリリングさを高め、時にクリアで牧歌的な調べを奏でるギターが楽曲をリードし、ゴージャスなクワイアがANGRAのような神秘性を存分に演出する。曲によってはトライバルな民謡の響きも加わり、普通のメロパワとは一線を画す仕上がりです。

 

イントロから続くM2「The Ancestry」から早速本質剥き出しのキラーチューン。豪快な速弾きと共に疾走し、大きなスケールを持ったサビで頂点を迎える。ところどころで聴ける掛け声、テクニカルなギターソロがこれまたANGRA感マシマシで昂らせてくれます。

 

そんな疾走キラーから、哀愁のメロに秀でたプログレッシヴなアップテンポナンバーM3「Sea Of Uncertainties」へと続く。この辺の流れからもやはり『Temple Of Shadows』を彷彿とさせますね。

 

ANGRAファンが快哉を叫ぶ大仰な疾走ナンバーM6「Crosses」、ややポジティヴ寄りのクサメロが雄大なスケールを醸し出すM9「Mirror Of Delusion」、SOULFLYのマックス・カヴァレラによるグロウルと強靭なリフで、本作中最もアグレッシヴな印象をもたらすM11「Face Of The Storm」など、エピカルな疾走曲の高揚感は素晴らしいの一言。

 

その一方で、美しく荘厳なバラードであるM4「Skies In Your Eyes」や、ブラジル出身ならではの土着性、パーカッションが強く押し出されたM7「Land Ahoy」のような趣を異にする楽曲のインパクトも強い。

 

ANGRA時代から優れた楽曲を作ってきたらしいエドゥの才覚が、2021年になっても枯れずに花開いていることを力強く証明してくれる名作です。バックの演奏の密度に、パワーメタルの範疇に納まらない多岐に富んだアレンジの妙、そうして非常に高度に練られた楽曲が続けざまに流れる本作、本家ANGRAにも決して引けを取らない充実ぶりに驚かされました。

 

あと本作はコンセプトアルバムとなっており、ストーリーがブックレットに記載されているのですが、冒頭の部分はなんとなくドラゴンクエストⅪのプロローグを思い出しました(笑) 今ちょうどSwitch版やってんですよ。

 

 

個人的に本作は

" 元ANGRAの名に期待される要素を高レベルで実現した、ドラマチックなプログレッシヴ/メロディックパワーメタルの名盤"

という感じです。

 


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GAUZE 『言いたかねえけど目糞鼻糞』

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  • 14年ぶり、何も変わらないハードコア
  • 歌詞を読みながら轟音を浴びるのみ
  • もちろん従来通りメロディアスさは皆無

 

2021年、まさかGASTUNKGAUZEの新作をリアルタイムで聴ける年になるとは思いませんでした。

 

81年結成、今年で40周年を迎える大ベテランジャパコアバンド・GAUZEの前作『貧乏ゆすりのリズムに乗って』以来、14年ぶりのフルアルバム。

 

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フルアルバムと言っても、純正ジャパニーズハードコアである彼らの音源ですから、当然ながら収録時間は超短い。前作とほぼ同じ程度の長さで、10曲13分強。疾風怒濤の轟音が駆け抜ける。

 

正直本作は文字でどうこう表現するようなものではないですよ。マジで全く芯も音楽性もブレてませんから。GAUZEのファンなら必聴、ハードコア好きなら必聴、メロディアスさもドラマチックさもハナから無し。硬派一徹のノイジーGAUZEハードコアパンク。以上!潔いほど何も変わっていない!!

 

ブンブン唸るようなベースに、シャリシャリした歪みで荒っぽくかき鳴らされるギター、猪突猛進に真っ直ぐ進み行くドラム、歌ではなく魂の叫びを聴かせる渾身のヴォーカル。そしてGAUZE最大の特徴である、人間としての生き様を強く訴えてくる歌詞。

 

この歌詞を読んで背筋を正され、ひたすらにスピーカーからあふれる轟音に身を委ねる。ただそれだけでいいんじゃないですかね。特にM3「エソラゴトーユー」、M6「3時のあなた」はぬるま湯に浸かって楽している情けない自分に容赦なくブッ刺さるし、M4「そんな事」、M5「首から看板ぶら下げて」、M7「雑巾絞り」は、荒っぽくも背中を力強く叩いて鼓舞してくれるようなパワーがある。

 

とにかくハードコアなパンクスは、この歌詞をじっくりと読み、心に刻み、来るべきモッシュピットに備えて本作をひたすらループするのがいいでしょう。

 

もちろんパンクスじゃなくてもこの歌詞には何かしら刺さるものがあるのではないかと思うので、(売れるジャンルではないとはいえ)ぜひ一人でも多くの人に、この魂の歌詞を読んでもらいたい。前述の通り音楽自体は極めてシンプルで直情的なので、劇的な音楽を求める層にはあまりにシンプルすぎるかもしれんけど...

 

 

個人的に本作は

"厳しく力強くまっすぐな歌詞に奮い立たされる、何も変わらぬ轟音ハードコア"

という感じです。