ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

11/23 lynch. / THE FATAL HOUR HAS COME at 日本武道館

まずひとつ言わせてほしいのが、サボりたくてサボっていた訳ではない

 

3週間もブログの更新をほっぽり出してしまっていましたが、以前までのブログにも書いたように、ここ最近は仕事が立て込みまくっていましてですね。こないだの土曜日だって、朝9時から夜8時までずっとオフィスにいたし。

 

このライヴ感想だって本当はもっと早くに書き上げるはずだったんですよ。ただ、仕事でさんざんPCの前に座ってメンドクセーメールのやりとりをしてるのに、家帰ってから夜遅くにまたノートPCを開いて文字をカタカタ...というモチベーションがなかなか沸かず。睡眠時間をそこで削るわけにもいかず、結局ダラダラ時間だけが過ぎていって、いつのまにかこんな長い間ブログを放置してしまいました。

 

やはり往々にして、締切のない活動というのはダラけがちになってしまうのだなあ。

 

さて、気を取り直して...

1年のうちに2回も武道館に足を運ぶことになるとは。

 

しかもガンズの来日公演にも行ってるから、万単位のオーディエンスが入る大規模会場でのライヴを月に2回も経験することになる。

 

BRAHMAN中野サンプラザに、ぴあアリーナMMのBAND OF FOUR、Download JapanにROCK IN JAPANと、コロナ禍以降において今年は大会場ライヴラッシュの年になりましたね。ライヴが充実するのは良きことです。

 

今回参加したのは、名古屋発のエクストリーム・ヘヴィロックバンドlynch.

バンドにとっても、ファンにとっても一際思い入れの強い、特別なライヴであることは間違いありません。

 

というのも、本来であれば昨年2月に実施予定だったんですよね、lynch.日本武道館ライヴ。それがコロナの影響で直前で延期せざるを得なくなり、さらに年末にはバンドの活動を休止するという事態に。昨年、ファンがどれだけ落胆させられたのかは想像に難くありません(いや、僕も彼らのファンではありますが、毎日熱心に情報を追うほどの熱量ではなかったので)

 

今年の前半はメンバーが各々ソロ活動やら、別バンドやらに専念し、バンドとしての動きは見せなくなりました.....のですが、割と早い段階で活動再開のニュースが流れ、その記念すべき初ライヴが、今日この日、日本武道館公演ということに。

 

週半ばの祝日、明日からまた普通に仕事(しかも土曜も出勤予定)という現実から目を逸らし、雨の降りしきる中直行。九段下駅の階段を上がった直後に、持っていたトートバックの持ち手が一つブッ壊れるという災難に見舞われながら、2月のPassCode以来の武道館へ。

 

僕の場所は二階席の南ブロック、かなり後になってからチケットを買ったのでほぼ最後方。ステージとの距離は遠いものの、ほぼ正面で視界を遮るものもなく、かなり観やすい位置。

 

ザッと見た感じ客層としてはやはり女性客が多い感じでしたが、二階席の方になると結構男性ファンも見かける。僕は全くもってギャ男って感じの見た目ではない人間のため、悪目立ちしないように、一応全身真っ黒コーデにブーツ、マスクも黒という出立ちにしてました。が、普通の男性ファンも多くいたのだから、そこまで意識する必要はなかったかも。

 

開演時間を10分ほど過ぎた後にフっと暗転。過去の楽曲のMVやアー写を交えた映像が、ステージバックのスクリーンに映され、入場SEが流れて黒一色の衣装に身を包んだメンバーが登場。ギタリストの悠介さんが深々とオーディエンスに礼をし、葉月さんが手を上げて反応に応える。

 

白い照明に照らされながら、「LAST NITE」のイントロのピアノフレーズが流れ出す。オープニングとしては落ち着いた楽曲なので、個人的にはもっと勢いのある疾走曲で幕開けをしてほしい気も。あと照明がチカチカして目に優しくない。

 

そんな僕の気持ちを汲んでか、「ようこそ、処刑台へ!」の煽りとともに、名曲「GALLOWS」がスタート。葉月さんの低音グロウルはかなり好調のようで、Aメロの出だしから超強力。処刑台に響くにふさわしい凶悪なパフォーマンスで、それに合わせるように、バンギャらしいヘドバンの嵐がそこかしこで巻き上がる。

 

特に最前真ん中付近の人なんかは、遠目から見ても腰の入った実に気合の入ったヘドバンをしてる。一度逃した武道館という舞台ですからね。アリーナが濁流のように荒れ狂う様は圧巻でした。

 

その後はアグレッシヴなライヴの定番曲を中心とした流れで、名曲連打の超強烈な時間帯が続く。「EVOKE」に「CREATURE」、「XERO」とキメとなる曲が連続していて、前半からこんだけ飛ばして大丈夫か?と余計な心配をしてしまいたくなる。

 

そんな中、今回のライヴのタイトルとなる「THE FATAL HOUR HAS COME」が投下される。ライヴタイトルトラックながら、特にこれといった演出とかはなく、割とフツーなタイミングで出てきたな。

 

特に嬉しい選曲だったのが「JUDGEMENT」。怪しくキャッチーなメロディーの、狂気的アグレッションが同居した名曲で、ヒリヒリするような危険な緊張感がたまらない。

 

途中のギターソロでは、葉月さんが「悠介!」「玲央!」と呼びかけてメンバーへ注目させ、ベースソロの際には「明徳と俺!」と、ベースのネックを掴みながらステージ中央でアピール。ドラムの晁直さんのみ紹介がなかったのは、「MIRRORS」のイントロでできるからですかね。

 

流石に名曲連発でブーストが効きすぎたのか、その後は少しミドル曲が並んで、熱気をクールダウンさせる時間帯に突入。インディーズ期に制作した「melt」から始まるパートで、しばし聴き入る。

 

僕としてはlynch.は、アグレッシヴなキラーチューンと、そうでない曲の気に入り度に開きがあるバンドで、この時間帯はややダレを覚えなくもない。徹頭徹尾疾走じゃ起伏が生まれないとはいえ。

 

しばらくそんな時間が流れた後、MCにて「みなさんlynch.のライヴを観てどうなりたいんですか?うっとりしに来たんですか?それもまあ良いでしょう。でも、やっぱり暴れに来たんですよね!?」と声をかけてからの「I’m sick. b’cuz luv u.」の爆発力はすごかった!サビ終わりの低音グロウルの迫力がここまできても衰えない。

 

そして間髪入れずに晁直さんの疾走ドラムソロが始まる。この入り方はlynch.を代表するキラーチューン、「MIRRORS」の登場。

 

もちろん僕もこの曲は大好きなので、当然ながらここ一番のヘドバンで応える。ただ、葉月さんは一番盛り上がるサビの部分をオーディエンスに歌わせる主義のようで、せっかくの大サビもカラオケ状態になってしまうのが残念。こっちは声出しできないんだから、あなたの声をもっと聴かせてほしいのですが。

 

その後、ある意味本日一番のハイライトとも呼べる瞬間が来る。「みなさんlynch.のこと好きなんですよね?こんなにたくさん好きな人がいるなら...セックスするしかないじゃん!」と、武道館という神聖な場での爆弾発言から「pulse_」が登場。曲中に葉月さんがドラムの後ろに立ち、「どうですか晁直さん?武道館のセックスは!?」と晁直さんにマイクを突き立てると、

 

「気持ちいいぃぃぃ〜〜〜......」という、蚊の鳴くような声を発する。

 

どうやらリハなどでそんなやりとりは一切やっていない、ぶっつけ本番だったそうで、それに動揺してしまったのか、ドラムの打音が完全にストップしてしまう事態に。

 

玲央さんのギターが情けな〜く響き、呆れ返ったように笑った葉月さんが、ステージ上に大の字になって倒れる。「晁直さん、これWOWOWで放送されます!」「なんで武道館でぶっつけ本番でするのよ〜...」というやりとりを経て、「pulse_」の中折れ二回戦が開幕。完全なるミスなのですが、これが功を奏して、一回目よりも更なる盛り上がりを生んでいたように思います。

 

アンコール前のラストは「CULTIC MY EXECUTION」という、かなりダークでドロッとした楽曲で締める。せっかく武道館ライヴのために書き下ろされた「ALLIVE」という名曲があるのだから、それをラストに持ってった方が良かったような(演出的にもいかにもクライマックスでしたし)

 

アンコールでは、メンバー各人が一人ずつオーディエンスに向かって言葉をかける。特に印象強かったのはリーダーの玲央さんと、ベースの明徳さん。

 

「僕らがみんなをここへ連れて行こうと思っていたけど、みんなが僕らをここに連れてきてくれたんですね」と、涙ぐみながら玲央さんが語ると、僕の周りにも目頭を押さえる人が出てくる。

 

そして明徳さんは、かつて一度日本武道館ライヴが決まりそうになった中で、自分の不祥事によりライヴ予定が白紙になってしまったことに触れ、「武道館ライヴは実施する前に厳しい審査とかがあるから、自分がバンドに戻ればもう武道館でライヴをすることはできなくなるかもしれない。それがわかっていても、自分を戻すという判断をしてくれた」と、こちらも若干の涙声になりながら訴える姿が非常に印象的。

 

僕がlynch.を聴きだしたのは、彼が大麻騒動でバンドを抜ける少し前。つまりバンドの活動休止と、4人体制になってからのリスタートはリアルタイムで、バンドの動きを見ることができていただけに、このMCにはなかなかグッとくるものがありました。

 

各々の思いがこもったMCを機に、「THIRTEEN」からリスタート。アンコールにて特に演出面で際立っていたのが「EUREKA」で、星空を思い起こさせるような美麗なメロディーに同調するかのように、ミラーボールから反射した光が、武道館全域を煌めかせる。本当だったらこの瞬間にオーディエンス全員でコーラスができたはずなのですが、これはまあ仕方がない。

 

そしてダブルアンコールにおいて、lynch.というバンドを象徴する名曲「ADORE(この曲でダーイヴ!ダーイヴ!ダーイヴ!がしたかった!!)、艶やかな歌メロを聴かせる「A GLEAM IN EYE」でフィニッシュ。照明がバッと明るくなった状態での、初期の彼らの王道を行く楽曲による圧巻のラストスパートでした。

 

ライヴ開始前は「17時開演ってことは、1時間半〜2時間くらいで結構早く帰れそうだな〜」なんて思ってたのですが、何の何の、先日のGUNS N' ROSESのライヴをさらに超える、3時間半という特大ボリュームの濃密ライヴ。それでいて、途中クールダウンする場面もあったとはいえ、新旧彩る名曲がバンバン聴ける非常に充実したパフォーマンスだったと思います。まだまだ聴きたい曲はあるとはいえ、望みうる限りではほぼ完璧な選曲だったと言っていい。

 

なお、MCでもちょろっと触れていましたが、この日が活動休止後初のライヴだったんですよね。記念すべき武道館ライヴと、一旦足を止めた後の最初の第一歩となるライヴがいっぺんに味わえただけに、ファンの感慨はさぞ深いものだったでしょうね。

 

終演後すぐに、ZEPP会場を中心に回る全国ツアーに、来春ニューアルバムをリリースするという報せが流れ、活動再開と同時に早速勢力的な動きを見せてくれるのも実に頼もしい限りでした。

 

明徳さん離脱時もそうだったけど、一度バンドの歩みを止めざるを得ない状態になっても、さほどファンを待たせることなく動きだし、さらに音源のリリースやライヴ活動も活発に行うこのバンドの姿勢は、聴き手としては本当に嬉しいですよ。最近別プロジェクトを始めた、どこぞの大物バンドの中心人物も少しは見習ってもいいのよ(笑)

LORNA SHORE 『Pain Remains』

  • 最凶レベルの新ヴォーカルを携えたフルアルバム
  • 人外級の極悪さと、それにマッチした哀しく劇的なシンフォニー
  • エクストリームメタルの究極系となるトリロジー

 

このブログでも何度か書いていますが、僕はあまりにエクストリームすぎるサウンドを進んで聴くことは多くないです。

 

やはり音楽的に一番重要視しているのはメロディーの良さ、正統的なパワーメタルに通じるリフワークやバンドサウンドなどであり、それらをかなぐり捨てた熾烈な音は、インパクトこそすごいものの、積極的に好き好んで聴くことはありません。

 

ロディックメタルコアは大好きだけど、デスコアにまでなるとちょっと...。メロディックデスメタルは大好きだけど、普通のデスメタルになるとちょっと...。そんなことを言いたくなるようなリスナー。他のメタルファン人たちがTwitterにあげている感想とかを見ていると「すげえな、よくこんなマニアックなサウンドを見つけてくるな...」と感心しきり。

 

フックとなるメロディアスさ、勇壮さや劇的さといった要素がないと、正直僕の琴線には引っ掛からず、MVを見て「ヘヴィで迫力あるなぁ」という感想を持った後、特にその後は気に留めることはない......というのが常なのです。

 

しかし、そんな体たらくな僕ですが、ここ最近ある1枚のエクストリームメタル・アルバムに徹底的に打ちのめされ、心臓を鷲掴みにされ、脳と鼓膜に不可逆な衝撃を与えられるという現象が発生してます。

 

アメリカはニュージャージー州出身のデスコアバンド・LORNA SHORE。彼らが放つ4thフルアルバム『Pain Remains』

 

2020年に来日が決定していたそうなのですが、当時のヴォーカルが複数の女性に対して虐待をしているのが公になり、バンド側から解雇、来日もポシャってしまうという事件があったそう。その後発表された3rdフルアルバム『Immortal』は、解雇前にすでに録音済みであり、ヴォーカルトラックの差し替えなどは特に行われずに発表された...という難儀な経歴を持っています。

 

その後は新フロントマンであるウィル・ラモスを迎え入れ、EPのリリースを挟んだ後に、今回取り上げる新作を発表しました。

 

本作発表前に、デジタルシングルとしていくつか本作収録の楽曲が公開されており、それらの評判があんまりにも良いものだったので、僕も「ふ〜ん、どんなもんなんでしょ?」ってな感じで、ちょっくらMVをチェックしてみたんですよ。

 

そしたら、もう衝撃

 

サウンドはデスコア、それもブラッケンドデスコアと呼べばいいんでしょうか、ブラックメタルにも通じる超速ドラムに激烈なリフが奏でられる、極めてエクストリームなもの。

 

それなのにどうだ。このあまりにも哀しく、そして美しく響き渡るシンフォニックサウンドは。これが時にはバンドサウンド以上かっていうくらいに前面に出てくる。音自体の美しさももちろん、奏でられるメロディーラインが狂おしいほどの哀愁を持ち、メロディアスさを好む僕の琴線を強烈に掻きむしってくる。

 

こんなにも邪悪なのに、こんなにも激しいのに、至る所に僕の心を揺さぶるドラマチックな旋律があって、最後の最後まで意識を音から離すことができない。

 

テンポをガッツリと落としたブレイクダウン以上に、ミシンのごとき激速ドラムによる、フルブラスト的疾走パートの存在感が大きい。そのため、ヘヴィなリズム落ちでノるよりも、疾走する音に身を委ねる方が好きな僕の趣向に合っていたのも気に入った要因かも。

 

ジャンルは少し違えど、2年前に発表されたANAAL NATHRAKHの新作に近い感覚を覚えました。超エクストリームなのに、感動的という言葉すら似合いそうなほどメロディアスな点が通じてます。

 

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そして新ヴォーカリストとして加わったウィル・ラモスですが、まあ知ってる人はとっくに知ってると思うのですが、バケモノです。本当に人間が発声しているのか疑わしいほどの悪魔的叫び。高音の金切り声から、地を這うグロウルまで、バリエーション豊かながら、どこを切っても凶悪無比。声色の変化がメチャクチャスムーズで、どれだけ楽曲が高速展開しようとも、見事なまでの唱法を立て続けに披露してくれる。マジで人外級。MANOWARよりもLOUDER THAN HELLしてると思う。

 

気になる点としては、大体どの曲も方向性が一貫していて、基本的にファスト、時たまデスコアらしいリズム落ちを挟んで、サビにあたる箇所でシンフォニックアレンジが大仰にメロディーを奏でる。このスタイルを貫き通してるために、アルバム全体の起伏はやや少なめなところくらいか。それでも各曲のクオリティーが有無を言わせぬほど高いため、些細な問題でしょう。

 

全ての曲が極上の出来ですが、やはりなんと言ってもハイライトは、ラストを飾るM8「Pain Remains Ⅰ: Dancing Like Flames」〜M9「Pain Remains Ⅱ: After All I've Done, I'll Disappear」〜M10「Pain Remains Ⅲ: In A Sea Of Fire」という、タイトルトラックを冠したトリロジー

 

この3曲、合計20分超にわたる展開は、これまで聴いてきた楽曲に輪をかけてドラマチック極まりない。各楽曲で聴ける悲劇的なシンフォニックアレンジは、いつ何度聴いても胸が熱くなる。

 

全てが聴きどころと言っても過言ではありませんが、特に好きなのはM8とM9両方で用意された、終盤にかけて繰り広げられる強烈な泣きを帯びたギターソロ、そこからなだれ込むラストの大サビ!

 

そしてアルバムを締めくくるにふさわしいM10の6:30〜ごろから聴ける、あまりにも壮麗で壮絶なエンディング。恐ろしく完璧な幕引きであり、三部作最終章としても、単一のアルバムのラストとしても、これ以上ないほどの終わり方だ。

 

むしろここまで音楽的になってしまうと、ヘヴィパートでモッシュしたいデスコアキッズから反感を買われてしまうのではないかと心配したくなったりもしますが、この旋律は泣きを愛する感性を持つメタルヘッズであれば、必ずや受け入れられるものだと思います。

 

デスコアらしい破壊的な音圧による圧倒ももちろん素晴らしい。しかし、どれほど容赦ないブラストビートが支配的でも、エグいヘヴィリフ満載でも、類を見ないほどの極悪ヴォーカルで歌われていても、この作品は音楽的感動を呼び起こすことができる。世界広しといえども、このレベルに到達しているエクストリーム作品はそうそう見当たらないのでは。

 

長々書き綴ってきましたが、正直本作を聴いた際の感情を表現する際に、「激情」とか「怒涛」とか、色々な言葉を持ち出しても足りないですね。実際に聴いてみた人でないと、このエモーションは伝わるまい。

 

 

個人的に本作は

"ヘヴィで凶悪無比なデスコア。そこに加わるあまりに劇的なシンフォニックサウンド。音圧と感動で圧倒させる超大作"

という感じです。

 


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TOBIAS SAMMET's AVANTASIA 『A Paranormal Evening With The Moonflower Society』

  • ゲストヴォーカルの個性に合わせたハイクオリティーメタルオペラ
  • 前半のメタリックな強力楽曲連打がハイライト
  • メロディー・アレンジの充実度は相変わらず抜かり無し

 

EDGUYのヴォーカルであるトビアス・サメットが指揮するメタルオペラプロジェクト、TOBIAS SAMMET's AVANTASIAの9thフルアルバム。

 

前作『Moonglow』と同様に、ジャケットはアレクサンダー・ヤンソンが手がけているようで、連作であることがわかります。ライナーによると、本作は前作とセットでAVANTASIAの第4期を構成する作品なんだとか。

 

そんな前作『Moonglow』は、どの楽曲も非常に完成度高く練り込まれ、どこまで行っても素晴らしく叙情的なメロディーが鳴り止まない、個人的ツボに特大ヒットをかましてくれた超名作でした。リリースされた当初から「これは2019年のベストアルバムになるな...!」と予感させてたほどで、実際ベストアルバムに選びましたからね。

 

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そんなわけで当然ながら本作にかける期待は非常に高く、素晴らしきメロディックメタル絵巻を提供してくれるだろうと確信していました。

 

そして出来はというと、超名作だった前作にはやや及ばないかな...という感じ。しかし期待にはしっかり応えてくれる力作であることはすぐに理解できる。

 

オープニングトラックであるM1「Welcome To The Shadows」は、不穏で仄暗いムードを醸し出す出だしで(サビはメロディックですが)、前作の神聖かつファンタジックな空気感のオープニングと比べると少し地味めに感じてしまったり。もちろんこういうシリアスな空気感も良いものではありますが。

 

そこから続く楽曲群が本作のハイライトたる部分であり、Primal Fearのラルフ・シーパースをゲストに迎えたM2「The Wicked Rule The Night」、Nightwishのフローア・ヤンセンが参加したM3「Kill The Pain Away」、そしてメロスピファンお馴染みのマイケル・キスクが本領を発揮するM4「The Inmost Light」。この流れが実に強力!

 

ヘヴィだがモダンではない強力なリフが叩きつけられるパワフルなM2は、Aメロだけ聴けばPrimal Fearの楽曲かと思わせるほどにゴリゴリな正統派。M3はどこか美しくも暗いゴシック的雰囲気を持ちつつ、麗しきクワイアも飛び出してくる。M4は本作唯一のメロスピチューンで、マイケル・キスクのよく通るハイトーンが非常に気持ちいい。

 

それぞれタイプの異なる楽曲に、異ジャンルメタルのスーパーエキスパートと言えるような実力派ヴォーカルを抜擢しており、トビアスは「適材適所」という言葉をよく理解してるんだなと思わせられますね。どの楽曲でもヴォーカルの魅力が浮き彫りになっているよう。

 

この名曲の連打で一気に高まった熱量を、M5「Misplaced Among The Angels」という美しいバラード調の曲を挟んで、一旦落ち着かせるアルバム構成も良い感じ。サビにおける解放感が実に染み渡りますな...

 

その後もトビアスの作曲センスが大いに活きた名曲・佳曲が連発されますが、後半はどちらかというと、メタルとしての興奮以上にメロディーの充実や、バッキングのアレンジ、ゴージャスな装飾などに凝った印象があり、前述したM2〜M4ほどテンションが上がる瞬間はなかった。

 

とはいえもちろん、このプロジェクトにおいて平々凡々なヌルい曲が生まれるはずはなく、どの曲にも心を捉えるフックが備わっている点は素晴らしいと思います。ここまで良質なメロディックメタルをポンポン生み出せるトビアスはやはり底が知れない。

 

後半においては、綺麗なピアノのアレンジに、切々したトビアスとロニー・アトキンスのヴォーカルが重なるM7「Paper Plane」、強烈な哀愁が効いたサビのメロディーと、トビアスの伸びやかなヴォーカルがマッチし、ドラマチックな展開をもつギターソロも聴きどころになったM10「Scars」が好き。

 

全体通して、さすがトビアス・サメット!と拍手喝采したくなる充実盤でした。前作が超すんばらし〜い出来だったために、その比較としては若干聴き劣るかな...という感覚は無きにしもあらずですが、本作が今年発表されたメロディックメタル作品でも、トップクラスの完成度を誇ることに違いはないです。

 

しかし、ゲストヴォーカルの魅力をそれぞれ十二分に引き出し、かつ曲単位でもアルバム単位でも、これだけクオリティーの高い作品を連発できるトビアスは、他に思いつかないレベルのソングライターですね。まだまだこの才能が枯渇する気配がありませんし、気が早いこと言いますが、次のアルバムも安泰だな。

 

 

個人的に本作は

"多彩なゲストヴォーカルを活かしきった、劇的極まるメタルオペラ。ファンタジックなアレンジとメロディーの充実ぶりはメタル界最高峰"

という感じです。

 


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11/6 GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2022 at さいたまスーパーアリーナ

ハードロックファンなら知らぬ者はいない超大物・GUNS N' ROSESの来日公演に行ってきました。人生初ガンズです。

 

正直言うと、このライヴに行くかどうかは直前まで迷ってたんです。理由は大きく分けて以下の2つ。

 

①2万近いチケ代を払うに充分な楽しみを得られるかわからないから

②翌日の仕事に支障をきたす恐れがあるから

 

①については、単純に好みの問題ですね。基本的に叙情的でパワーのあるメタルが好きな僕にとって、アメリカンな空気や、LAメタルっぽい"セックス・ドラッグ・ロックンロール"的アティチュードを持つバンド、楽曲はさほど響かないのです。

 

彼らのデビューアルバムであり、ロック史に残る名盤とされる『Appetite For Destruction』は、ロックの基礎教養みたいな感じで自分も聴きましたが、やはりツボにハマったとは言い難い(もちろんカッコいいと思えるパートも随所にある)

 

一夜にして2万円が消し飛ぶというのは、薄給の社会人にはキツい。それに見合ったリターンが、僕の音楽感性で得られるのか?という疑念があったのが一点。

 

ただ、理由が①だけであれば、さほど迷うことなく行ってたんですよ。以前KISSの東京ドーム公演だって行きましたし。音楽的な好みから外れていても、ベテランのロックンロール・ショーはエンタメとして完成されてますから、行けば何かしら感銘を受けるものがあると思ってます。大事なのはもう一点、②の理由。

 

彼らのライヴに行ったことがなく、音源も満足に聴けてない僕でさえ知ってる、アクセル・ローズの遅刻癖。これが大きい。

 

以前にもこのブログで書きましたが、現在仕事の立て込みが厳しく(そのせいでこのブログの更新ペースが落ち気味...)、あまり夜遅くまで起きていたくはない。

 

ライヴ当日は日曜日。当然その翌日は月曜日で、そこから一気に五連勤が開始される。週の始まりを寝不足でスタートさせるのはキツいものです。

 

そんな日にライヴの開始時間が1時間でも2時間でも遅れてみなさいよ。さいたま新都心から自宅最寄りまで1時間半は確実にかかるのだから、遅刻されようものならたまったものではありません。

 

しかし、しかしです。彼らももう60歳ほどになってきており、年齢的な限界というのが近づいてきているはず。もうあと何回来日できるかどうかわかりません。

 

仮にもHR/HMファンを自称するのであれば、やはりこういったレジェンドのライヴは観られる時に観ておいた方が良いのではないか?そういう思いが募っていたのも事実。今ここでしっかり観ておかないと、「次また来た時にでも...」はもう無いかもしれない。

 

そんな思いが翌日の仕事のリスクを超え、結局直前になってチケット購入に踏み切り、当日さいたまスーパーアリーナにまで足を運ぶことになりました。秋のさいアリ...LOUD PARKを思い出しますね。

 

開演時間の30分ほど前に到着し席に座る。最後方ではあるものの、ステージ真っ正面に近い場所。直前で買ったにしてはまあ悪くないでしょう。ゆったり座りながらステージ全体を鑑賞できる。最近買ったオモコロライター雨穴さんの著書「変な絵」を読みながら、スタートまでのんびりと待機。

 

 

 

GRANRODEO

オープニングアクトBAND-MAIDGRANRODEOと聞いていましたが、なぜか本日BAND-MAIDのライヴは無く彼らのみでした。

 

彼らのことはアニメソングを主に担当している音楽ユニットとして名前は知ってましたが(CDショップでバイトしてた時にアニメコーナーでよく見ました)、ヴォーカルの方は本職が声優らしい。

 

ガンズほどビッグなアーティストになると、ファン層は「そのアーティストのみが好き」というタイプの人が多くなり、オープニングアクトにはあまり注目されないのが世の常。やはり立ち上がって腕を振り上げたり、ペンライトを振ったりする人はごく少数といった感じ。

 

ただパフォーマンスとしては、普通にハードロックとして通用するのではと思えるくらいにタイトで、ギターはメタルに通じる速弾きに、タッピングを交えたソロも披露。リズム隊の演奏もパワフルだし、声優という声を使った職業に携わるだけにヴォーカルもうまい。ハイトーンの叫びも本格的でした。

 

アニソンが本職というだけあり、ヴォーカルメロディーがかなりポップなのは好みが分かれやすいところではありましたが、最後に披露された「modern strange cowboy」は、疾走感あふれるドラムにキャッチーなメロが乗り、普通に聴いてて爽快。僕個人の好みで言えば、ぶっちゃけガンズよりもこっちの方が好き......なんて言ったら会場中のファンから袋叩きにされそうだ(笑)

 

 

GUNS N' ROSES

18時開演ということで、そこからどれだけ待たされるか不安でしたが、なんと10分ほどの押しで暗転。「おお!思ったより早かった!」とポジティヴな驚き。

 

バックのスクリーンに映像が映し出され、多くの人がスマホのカメラで様子を撮影。やはり真っ暗な会場内で、画面の明かりが至る所でチラチラしてる光景はあんまり好かんな〜...

 

そしてバンドメンバーがステージに現れ演奏開始。オープニングは「It's So Easy」。ノリノリのな曲調がいかにも80年代HRの雰囲気をプンプン放つ。そして遠目から見ても、ギタリストであるスラッシュの存在感は大きい。

 

黒のハットにグラサンという、一目でわかる風貌と、代名詞でもあるレスポールを弾き倒す姿はインパクトがありますね。若干お腹が出ているように見受けられるのは、まあある程度は仕方ないか。

 

見た感じ一番カッコいいと感じたのは明らかにベースのダフ・マッケイガン。スラっとしながらもロッカーらしいワイルドさを感じさせ、ピッキング時の堂々たる立ち振る舞いは、明らかに他メンバーとは一線を画していました。僕の左隣に座っていたお兄さん二人組も「ダフカッコいい!維持できてる!」と言ってました(笑)

 

後衛にはドラムとキーボーディスト二人が構えていたのですが、やはりオリジナルメンバーではない人たちにはなかなかスポットが当たらない。キーボードソロにでもならない限り、ステージ両脇にある大型スクリーンにアップで映されないし、やはりファンのニーズはアクセス、スラッシュ、ダフの3人に大きく割かれてるんでしょうね。

 

しかし、アクセル・ローズのヴォーカル。このクオリティーがなかなか厳しいものでした。まず音が低い!そして聴き取りにくい!

 

まあライヴが進むにつれて喉があったまってきたのか、少しずつ声量もアップしていって、安定もするようになってはいたのですが、序盤の歌唱は声が埋もれ気味というか、音源で聴けたような高音、溌剌としたエナジーを感じ取るのが難しい状態でした。

 

まあ還暦近い年齢になった人に、30年以上前の作品と同程度の歌のクオリティーを求めるというのが、そもそも酷な話なのかもしれないですが...

 

しかし、ライヴのパフォーマンス自体は良かったんです。広いステージを右から左に動き回って、オーディエンスに積極的に手を振ってアピールしたり、声を張り上げて盛り上げたり、この辺はやはりロックスターたる所以。

 

代表曲である「Welcome To The Jungle」はやはり格別の盛り上がりで、アリーナフロアをほぼ一瞥できる位置にいた僕は、無数の手が曲に合わせて上がっていることが確認できて、アリーナライヴの壮観っぷりを肌で感じました。

 

スラッシュの長めのギターソロタイムが設けられたり(メンバー紹介で彼だけもったいぶられてただけに、やはり彼の存在は特別なんだろうな)、弦楽器隊が椅子に座ってアコースティックテイストなバラードをプレイしたり、アクセルがステージど真ん中に鎮座したピアノを演奏したりと、ちょくちょく趣向を凝らした演出がされるも、基本的には王道を貫くハードロックパフォーマンス。

 

正直サブスクで代表的な楽曲をサラッと聴いた程度の予習で臨んでいたので、「あれ?この曲なんだっけ?」となる瞬間が多かったのですが、ギラギラの照明と大観衆に囲まれながらプレイされるアリーナロックをほぼ俯瞰に近い形で観られる、というのはなかなかない経験でした。

 

レジェンドと呼ばれるバンドのライヴをフルセットで観られる良き1日でした......と締めたいところなんですけどね、正直に言いますとですね、後半はだいぶ辛かったんですよ。

 

というのも、長い。アンコール含めて、ライヴが終了したのが21時。3時間にも及ぶ超長尺のセットリストだったのです。

 

先に述べた通り、僕は彼らの音楽が好みであるとは言い難く、このライヴに足を運んだのも、曲を楽しむというよりは「一度は生で観てみるべきだよな」という気持ちに従って来たのです。

 

そのため、「うおおお!この曲をやってくれるとは!」という喜び、興奮が他のファンの方と比べると低くてですね。ライヴ後半になってくると、GRANRODEOから3時間以上座りっぱなしで、取れないここ最近の仕事の疲れ、頭痛持ちである体質も相まって、体が異様にダルくなってくる。正直、ラスト1時間はだいぶグロッキー状態でした。

 

「ふう...これで終わりか......え!?まだあるの!?」という心のやりとりを何度か繰り返しながら、ようやくくるクライマックス。この時点でまだ「Knockin' On Heaven's Door」のサビをシンガロングし、立ち上がって腕を振り上げ盛り上がっている人がたくさんおり、「俺よりだいぶ年上だろうに、皆さんなんてタフなんだ...」と慄いていました(笑)

 

こうしてロック界のリヴィングレジェンドのライヴ、お腹いっぱいを通り越してゲップが出るまで味わい尽くしたわけですが、さすがに「ガンズのライヴはこれで充分だろう」と思わせられたな...。

 

どんどん細分化していき「誰もが知ってる超大物」という存在が生まれづらくなっているHR/HMシーン、彼らのような存在は今後現れないかもしれず、そういう意味では貴重な体験になったのではないかと思ってます。密かに期待してた「兄貴の位牌......ヤクザ!」も聴けたしね。

MACHINE HEAD 『Øf Kingdøm And Crøwn』

  • 全曲で徹底してヘヴィでアグレッシヴ
  • クリーンヴォーカルとツインギターによるメロディアスさも充実
  • 攻撃性と叙情性のバランスに優れた一作

 

アメリカのグルーヴ/エクストリームメタルバンド・MACHINE HEADの、前作『Catharsis』以来、4年ぶりとなるフルアルバム。

 

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MACHINE HEADらしいモダンなヘヴィさを際立たせた激烈リフと、時にポップとも言えるようなメロウさを併せ持った前作は、やや収録曲の多さが聴き疲れを覚えたものの、充分にカッコいいと思える力作でした。

 

ただ、川嶋未来さんのライナーノーツでは、「前作は賛否分かれる作風であり、アメリカの音楽雑誌に酷評レビューが載って、ロブ・フリンがSNSで猛抗議した」なんてエピソードが語られていました。そうだったんだ。僕としては全然悪くないアルバムだと思ったんだけど。

 

そして本作、リリース前から告知されていたので皆さんご存知かとは思いますが、本作はコンセプトアルバムになっており、何と日本の漫画・アニメ『進撃の巨人』のストーリーからインスパイアを受けたのだそう(ロックダウン中にロブが子供とアニメを見ていたらしい)

 

あくまでアルバムストーリーの制作に影響をもたらした、というだけで、漫画の内容そのままのコンセプトであったり、キャラクターの名前を出したり、といったことはないようです。Linked Horizonのカバーが収録されていることもない。

 

日本の漫画をモチーフにしたということで、リリース前は殊更にその事実がセールスポイントとして打ち出されていた感がありますが、いざ音源を耳にしてみると、ぶっちゃけ言われたとしても気づかんレベル。従来のMACHINE HEADらしい「野蛮」とすら形容できるようなヘヴィ&アグレッシヴな作風です。

 

通常のヘヴィメタルにおける"ヘヴィ"の要素を2倍濃縮に煮詰めた、ハンマーで目の前のものを叩き潰すような激重リフ。それもただ重たいのみならず、テンポの速いパートならば、触れたもの皆切り裂かんとばかりな鋭利な攻撃性もある。

 

このリフを鼓膜を通して脳みそに流し込んでいく快楽はかなりのもので、リフの刻みに合わせてヘドバンしたくなること必至です。グルーヴィ&スラッシーで、猛り狂うロブ・フリンのヴォーカルと合わせて、聴き手の熱を天井知らずに上げていく。

 

そして、単純にヘヴィな攻撃性のみで突き進むのみならず、意外にもクリーンヴォーカルで(声質的にクリアな感じではないが)ロディックに歌い上げるパートも多く、曲によってはドラマチックなツインギターの絡みも登場するなど、メロディアスなメタルとしての魅力も兼ね備えているのが嬉しいところ。アグレッションに不足はないのに、どこかキャッチーにも響く。

 

特にM2「Chøke Øn The Ashes Øf Yøur Hate」〜M3「Becøme The Firestørm」の流れは、アグレッシヴ&キャッチーという本作の美点が全面に出たキラーチューン。特にM3なんか、サビのメロディーは共に歌えるほどキャッチーなのに、バックでは速弾きギターとブラストビートが重なり合い、猛烈な爆走感を生み出している。これでテンションが上がらないはずもない。後半の狂った疾走ギターソロ、機関銃のようなバスドラ連打もたまらん!

 

本作の中ではバラード(というにはイカつすぎるけど)的役割を果たすM5「My Hands Are Empty」に、非常にメロウなサビメロとエモーショナルなツインギターソロが特徴的なM8「Kill Thy Enemies」など、メロディックな方面に舵を切ってる楽曲の存在感も大きいですね。音質こそヘヴィながら、じっくり味わい深く聴ける瞬間もある。

 

後半に差し掛かるM9「Nø Gøds, Nø Masters」〜M10「Bløødshøt」の流れは、前述のM2〜M3と並ぶ本作のハイライトですね。エモーショナルなシンガロングを誘発させる哀愁の効いた前者に、曲タイトル連呼のフレーズがキャッチーかつ熱い後者と、キメとなるキラーチューンをここにも用意してくるのが頼もしいです。

 

全編通してMACHINE HEADらしい野蛮なヘヴィさが濃厚に詰まっているのですが、決してエクストリームになりすぎず、メロディックでダイナミックなヘヴィメタルとしての魅力を捨てないという、彼らの楽曲作りのバランス感覚が遺憾無く発揮されたアルバムかと。

 

あえて一つネガティヴなことを言うなら、ボーナストラック含めて全15曲・70分と、さすがに長くて聴き疲れしやすいことかな〜...。本作の中ではかなり落ち着いた曲調であるM13「Arrøws In Wørds Frøm The Sky」でさえ、どんだけ弦ダルンダルンにしてんの?って言いたくなるくらいヘヴィなパートあるし。

 

とはいえ、あまりにモダンなヘヴィさを強調された作風は苦手...という方でも、本作くらいのバランスなら充分に聴けるのではないかと思いますよ。このリフの気持ちよさ、快感はメタルヘッズ共通の感覚だと思うので。

 

 

個人的に本作は

"荒れ狂うアグレッションとヘヴィさを貫きながら、メロディアスなヴォーカル、ギターワークも加えた作風。エクストリームに寄りすぎないバランスが絶妙"

という感じです。

 


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THE BACK HORN 『アントロギア』

  • バンドの軸がブレない範囲で曲の幅は豊か
  • アッパーなロックチューンの聴き応えがポイント
  • なんだかんだバンドの王道的楽曲が一番ヨシ!

 

「KYO-MEI」をスローガンに掲げ、男らしい熱さと悲哀、歌謡的なメロディーにロックらしい荒々しい衝動を加えた楽曲で、国内の音楽シーンを突き進むTHE BACK HORNの、前作『カルペ・ディエム』以来3年ぶりとなる最新作。

 

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前作発表後のバンドの活動はとても平坦なものではなく、ヴォーカル山田さんの喉のポリープ発症により慣行中のツアーは中断。その後の振替公演は、皆さんご存知コロナ禍により中止。

 

しかし、そんな中でも楽曲制作を止めずにシングルや配信限定曲を発表しつつ、今年新作が届けられることに。本作に収録された楽曲もわずかながら聴けたROCK IN JAPANでは、かなりヴォーカルの調子が心配されたものでした...。また喉痛めてなきゃいいけど。

 

このバンドの音楽というのは、暗い曲はエグいほどにドロドロしていたり、明るい曲はかなりポップな光に満ちていたりと幅はあるものの、基本線は全くブレたことがないと思っていて。縦横無尽に動きまくるテクニカルなベースに、粗めの歪み方で曲に勢いを与えるギター、そこに疾走するドラムと熱量重視のヴォーカルが載る。そんなスタイル。

 

本作においてもこの基本的なスタンスは貫かれており、従来作を好んできた人であれば裏切られることはないでしょう。このバンドももう結構なキャリアを誇りますが、未だに曲作りの芯がブレず、シーンの第一線に立ち続けている。それだけで評価に値するはず。

 

彼ららしい、怪しくもキャッチーさを滲ませるメロディーを主軸としたサウンドが展開されますが、曲調の幅は結構広めで色々な要素を感じさせる。オープニングのM1「ユートピア」は、ダンスナンバーかのようなノリの良さこそあるも、メロディーは薄暗く不気味。どこか呪術的ムードも感じさせるような。

 

M3「深海魚」は暗めの昭和歌謡かと思うような濃ゆいメロディーが支配的で、M4「戯言」はディナーショーとかでかかっていそうな、艶やかでジャジーなムードを演じつつ、サビではシンプルに疾走する。カチャカチャいうギターリフに、気だるげなヴォーカルと爆発力あるサビの落差が面白いM8「疾風怒濤」なども特徴的ですね。

 

色々な音楽的要素を絡ませようという創意工夫は感じられますが、根底にあるのはバクホンらしい、土臭い男の哀愁を感じさせる暗めのキャッチーさ。アッパーに展開されるロックチューンは聴き応え充分です。

 

ミディアムバラードの分量もそこそこ多めで、中盤から後半にかけてはテンポが落ちる瞬間も多い。本作のバラードの出来は、過去作収録の楽曲に比べるとややメロディーの質は落ちる印象か。せめて前作収録の「I believe」「果てなき冒険者」くらいには綺麗な歌メロが欲しかった。

 

個人的に何気に好きなのがM6「ネバーエンディングストーリー」。まるでカントリーかというくらいに牧歌的な雰囲気で、ギターもクリーントーンオンリー。激しさ皆無の楽曲ですが、この軽やかなポップさがなかなか沁みるんですよ。以前のブログ記事で、激しいサウンドに疲れた時には、落ち着いたポップな楽曲をよく聴くと書きましたが、僕は結構こういう曲もアリなんです。

 

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ただまあ一番好きな曲となると、やっぱり王道のバクホン節が効いたM2「ヒガンバナ」でしょうか。静のAメロから一気に動のサビへと爆発する様が気持ち良く、熱い歌メロもバンドの旨味が濃縮されていて実にクール。やっぱりこのバンドはこうでなきゃって感じ。

 

同じようにM10「希望を鳴らせ」もシンガロングが実に彼ららしい。Aメロの淡々としつつ滲み出る熱さ、胸焦がす哀愁を奏でるギターフレーズも良い!

 

やや曲の幅が広めにとられており、曲によって色々な表情を見せてくれる作風ですが、根底にあるのは程よく歌謡的で熱いメロディーを武器とした、荒々しいロックサウンド。歌重視のミドル曲の面白みはもう少し欲しかったけれど、バンドらしさは存分に堪能できる、手堅い一作。

 

 

個人的に本作は

"バクホンらしいキラーチューンから、怪しさと個性が強めの曲まで、バリエーションに富んだ楽曲群。根底にあるバンドのキャッチーなセンスはブレない"

という感じです。

 


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VICTORIUS 『Dinosaur Warfare Pt. 2 The Great Ninja War』

  • 前2作と世界観を共有するパワーメタル宇宙戦士の物語
  • モダンなサウンドと古き良きジャーマンメタルスタイル
  • スピードナンバーはキラー揃い、勇壮なキャッチーさも抜群

 

この地球上に強大な王国を築いていた恐竜たちが絶滅して、幾億もの年月が流れた。

 

ダイナフォースを武器に、世界を守る戦いに身を投じた戦士たちは、今はその凄惨な戦いの傷を癒すかの如く、安らかな眠りについている。

 

しかし!そんな平和な大地に、宇宙から謎の侵略者が現れる。

 

彼らは"忍者"。

 

核エネルギーにより強大なパワーを手に入れた彼らは、青く美しい惑星・地球へと向かう。人類を弾圧・支配し、全てを征服するために。

 

そんな忍びの影を察知し、永き眠りから戦士達が目覚める。再びダイナフォースを宿し、忍者達に立ち向かう!

 

鋼の牙と戦士の誇りを持ちし野獣 マイティ・マジック・マンモス

空と海と大地を守るフライングメタルマシーン ジュラシック・ジェットファイター

聖なる力と王国の栄光により蘇りし守護神 ティラノサウルス・スティー

 

太陽の王国・カタナキングダムに集いし戦士達よ!人類の自由と平和を守るため、ダイナフォースとパワーメタルを武器に戦うのだ!

 

地球上の命運を賭けた聖戦が、今幕を開ける!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんのこっちゃ

 

歌詞を読んだ感じで、こんなお話なのかな〜と書いたんですけど、頭がクラクラしますね。何の話?誰か教えてくれ。どこだここは。どこに向かうんだこのブログは。

 

ドイツ出身のパワーメタル宇宙戦士(僕が勝手に言ってるわけではないです。本当にそう書いてあるんです帯に。平然と)VICTORIUSの、6作目となるフルアルバム。

 

タイトルから分かる通り、本作は2018年に発表されたEP『Dinosaur Warfare - Legend Of The Power Saurus』の続編となる作品。そこに前作『Space Ninjas From Hell』の世界観がクロスオーバーしてるらしい。

 

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コンセプトがここまで統一化されてるのですから、音楽性もそれに合わせて不変。これまで提示してきたジャーマンメタルの骨格に、モダンなシンセの音色をふんだんに使うことで、古臭さやイモ臭さを抑えながらも、古き良きパワーメタルの旨味も乗っかったサウンドとなっています。

 

いやしかし、本作もまた楽曲の充実度が素晴らしいですね。メロディックスピードメタルという音楽に惹かれる感性をお持ちの方なら、まず外されることはないはず。

 

スピード感ある楽曲はどれも名曲級のオーラを放っている。怒涛のバスドラ連打による突進力を備えつつ、やや軽めながらよく通るヴォーカルにより、非常にキャッチーなメロディーが息づく。パワーメタルに必要な「勇壮さ」という要素も、シンセにより大仰に盛り立てられるサウンドで担保され、メロスピとして隙のない楽曲に仕上げてくれています。

 

イントロのSEから続くM2「Victorius Dinogods」から、早速彼らの強みであるスピーディー&マイティーメロスピが投下。"ダーイナソーラーイズ!"のサビが、リスナーの気持ちと拳をともにブチ上げてくれる。パワーメタルならではの高揚感がここにある!

 

近未来的シンセのイントロから勇ましいメロディーを紡ぎ、そのまま爆速で駆け抜け、さらにはシンガロングも熱すぎるM5「Dinos And Dragons」、強烈なキャッチーさを秘めたリードギターの唸りが爽快感抜群なM9「Triceps Ceratops」、キレの良いギターリフと、機関銃のごとく連打されるバスドラの疾走がえも言われぬ興奮を生み出すM11「Shadow Of The Shinobi」と、要所にキラーチューンが配されている構成が嬉しいところです。

 

ミドルチューンについても、先行トラックとなったM3「Mighty Magic Mammoth」を筆頭に、どっしりとした力強さを表現した楽曲ばかりであり、決して疾走曲以外に魅力が足らないなんてことに陥っていない(まあ疾走曲の方が魅力的ではあるのだけど)

 

バンドコンセプト、歌詞、メンバーのルックスなどはネタ臭いにもほどがありますけど、楽曲の質は本当に高く安定していますね。メロスピ/メロパワと呼ばれる音楽性をピュアに貫き、ここまでクオリティーの高い楽曲を量産できるバンド、果たして現代のメタルシーンにいくついるでしょうか?

 

パワーメタルというジャンル、ここ近年はだいぶ下火になってしまった感は否めませんが、まだまだこういう実力派はいるんですね。パワーメタル宇宙戦士達の躍進は、まだまだ止まらない。

 

 

個人的に本作は

"モダンかつ保守本流、名曲揃いのピュア・メロディックスピードメタル。勇壮な楽曲のクオリティーの高さも、コンセプトのバカバカしさも過去作踏襲"

という感じです。

 


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